東海大学ヨット部先輩のM越さんのホームページからの転載です。
葉山でレースがある際には、ぜひ、一読されたほうがよさそうです。
■葉山のコース取り(その1)
ここ1年半くらい、隔週くらいで葉山でクルーザーに乗ってます。学生のときから葉山でレースしていると色々な経験から、葉山特有の風の吹き方が、だいぶ判ってきます。葉山での特殊なコース引きについて、改めて確認したことを書いていきます。
初めに、北から南に変わるときのコースです。
このパターンは、春から夏に掛けてよく見られます。南風は、関東平野が暖められることによる海風ですので、海の水温と陸の気温上昇の関係によって、南風に代わるか、また南風になってもそれがどのくらい強くなるかが決まってきます。海水が比較的低い春先に、太陽が照りつけ思いっきり気温が上がると結構強い南風となるのです。
さて、北から南に変わるときは、必ず北のブローが、下マークから見て左海面に残ります。葉山沖から見ると、鎌倉方面からのブローです。このブローは、南に変わる直前まで残ります。南では、既に南風が入っているときでも、鎌倉からのブローが入ってきて、数百メートル離れたところで、全く逆の風を受けることもあります。
南に変わりそうな北風の中スタートなら、ほぼ迷うことなく、左海面のブローを捕まえることです。南に変わるときは、右回りで南になることが多いのですが、シフトして南に変わると言うイメージよりも、全く違う南風が入ってくる感じで、右海面でシフトを捕まえようとしても、ほとんど利益になりません。フレッシュウィンドを受けることを最優先に下スタートし、左海面のブローを拾えば必ず前にいけます。上マークまでに南に変わっても、南から入ってくる風を見てからの対処で対応できます。そうすれば、右海面の船に先を越されることは、ほとんど無いはずです。
よって、「南に変わりそうなときは、左のブローを狙え。しかし、南風が見えたら早く捕まえろ。」となります。間違いない!!
■葉山のコース取り(その1修正版)
前の記事で、葉山での南風は、関東平野が温められたときと書いてしまいましたが、当然傾度風(気圧の差によって生まれる風)もあります。典型的なのは春一番。
前の記事で書いた、パターンはこういった時には当てはまりません。あくまで、朝は来た風で、日中太陽で温められて、海風が吹いてくるときの南風に代わるパターンです。
次は、南風の時のコース引きかな?
■葉山のコース取り(その2)
だいぶ間が開いてしまったが、葉山のコース引きです。
今回は、南西風のときのクローズのコース引きです。
南西風のときは、左に突っ込んでください。以上!!!!
ではありません。
基本的には、左が良いはずです。海から吹く風は、陸地に近づくと海岸線と直角になる性質があるからです。このため、葉山では南西風のときは、左に行くと左にふれていきます。右からのブローが入ってこない場合は、必ず左。しかも思いっきり左です。
しかし、ブローはほぼ間違いなく右から入ってきます。特に南に変わった直後、風速が増しているときは、右へ振れながらのブローなので、右へ行ってブローを捕まえて、ブローに乗って左へ行く様にします。
要するに、右にブローが見えたら、右へ行ってブローを捕まえろ。ということです。それ以外は左。
xx度より左なら、左。右なら右と言う人も居ますが、一概には言えません。たしかに、吹いても真南に近いときは左のほうが良いときが多いです。
時々違うと言う人が居ますが、それは潮のせいかな??
■葉山のコース取り(その3)
昨日書いた、南西風のコース引きの最後で、「潮のせい?」と書いたので、今日は葉山沖の潮の流れについて触れたいと思います。
その前に、潮の流れの基本的な性質について抑えておかねばなりません。
1.潮の流れは、大きく分けて潮の干満と黒潮などの海流があります。
2.潮の干満は、月の動きによって起こります。
3.満月と新月には大潮となり、潮の干満は大きくなります。
4.半月のときは小潮となり、潮の干満は小さくなります。
5.干満によって起こる潮の流れは、満潮と干潮の間に起こります。
6.潮の流れは、狭いところでは、速くなります。これは、岬や海峡などでよく見られます。
7.潮の流れは、浅いところや海岸に近いところでは、陸地の抵抗で遅くなります。
8.海面の表面は、風によって動かされます。
さて、葉山付近の潮の流れの特徴は、
ア)潮が引くときは、江ノ島、鎌倉方面から長者ヶ崎、佐島方面への流れ。
イ)潮が満ちるときは、逆。
ウ)干満によって逗子の新宿湾と鎌倉へ流れ込む、または出てくる潮の流れにも注意。
エ)相模湾は基本的に反時計回りの潮の流れ。(黒潮の影響?)
と一般的なことがいえます。
相模湾の潮の流れについては、相模湾における海洋短波レーダ
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/hfradar2/hfradar2.htmが非常に参考になります。これを見ると判るのですが、必ずしも、上で述べた状態とは一致しないと言うことです。これは、レーダで海の動きを見ている性質上、表面の動きしか想定でできません。従って、風向風速が大きく影響していると考えられます。また、黒潮の蛇行によっても代わってきていると考えられます。
潮を測定するのに一番良いのは、ティッシュやバン屑などをマークや蛸壺の近くで流してやることです。
測定した上で、上の事を頭に入れておくと、潮の流れを大まかにつかむことが出来るはずです。
今回は、一般的な潮の影響によるコースの引き方については、触れません。しかし、潮によるコース引きの考え方として、大きく二つあると思います。
一つはマークが無いと考えて、どうコースを引くかです。
例えばレース海面全体に渡って、同一方向に同一速度で流れる潮があったとします。この場合、マークへのレイライン、スタートラインなど、動かないマークとの関係では考慮すべき部分がありますが、ヨット対ヨットの関係では右海面も左海面もどちらが有利ということは起こりませんし、ましてやスターボ、ポートタックの違いによって有利不利になる事はありません。これは、同じ潮に乗っているだけでは、大きな板の上にみんなが乗っているのと同じだからです。
従って、マークが無いとして単に同じ方向へ向かう速さを競うなら、海面あるいは時間によって潮の流れがどのように違うかに最も重点を置いて考える必要があります。
もう一つ考えておかねばならないのは、マークへのアプローチ、スタートラインなど動かないものとの関係と、それによって起こる他のヨットとの関係です。簡単なのは、レイラインが変化するのでオーバーセイル気味でマークアプローチするなどのコース引きがあるわけです。
以上で葉山の潮はおしまいです。
まだまだわからないことが多いので、潮、地形、風、黒潮などの関係について知ってることをお教え下さい。情報お待ちしてます。
以下のURLが参考になります。
海上保安庁海洋情報部(ここに相模湾海洋短波レーダもあります。)
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/
神奈川水産技術センター(三崎沖のブイデータもあります)
http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/top.asp