① 諏訪神社 ー3 太田健次郎様著
第二話 善蔵の栓作り
善蔵まだ修行中の頃、棟梁につき、ある所で建築の工事にあたっている祭、棟梁より「善蔵、山に行って栓を300程作って来い」と申し渡された。
いいつかってから5日過ぎても姿を見せず、8日過ぎても何の便りもない。10日過ぎても音沙汰がないので、どうしたものかと棟梁は、善蔵が仕事をいている山に行って見た。善蔵は仕事をしているものの、棟梁の言い渡した建築用の栓は一本も無く、あるのは普通の杉の4寸か5寸の角材3本だけだった。
棟梁は「どうしたんだ、角材は別の職人にさせてある、お前には栓を作れと頼んだ筈なのに」と問い詰めても、善蔵は棟梁の話しには答えようともせず、作った角材をみているだけ。棟梁は腹を立て、目の前に揃えてある角材を蹴飛ばしてしまった。ところがあら不思議、その角材はバラバラになり、棟梁が善蔵に10日前に仕事を言いつけた建築用の栓に早変わりしたので棟梁もその技術に只々驚きいったという。
(注)栓とは、木工建築を強固にする為に使う頭一寸角、先細りの、5寸~6寸程の長さの木片の事。