経済的アプローチ
定義上、ギャンブルはお金か他の価値のある物に関するものです。
お金が携わらないなら、カードやサイコロゲームのような活動は遊びか娯楽と見なされます。
Lionel Robbinsのしばしば引用される定義に従うと、経済学とは「目的と代替可能な使用目的を持っている希少な手段との間の関係として人間行動を研究する科学」です。(p.16)
主流派経済学における基本的仮定は、個人の選択は、どう有限資産を割り当てるかに関して、合理的であり、利己心からなるということです。
初期の経済学者
経済学の初期の学者にとって、ギャンブルは不可解な行動でした。
1728年に、ギャンブルを分析するという問題のいくつかを強調するために、数学者のニコラス・ベルヌーイはサンクトペテルブルグのパラドックスを定式化しました。
表がでるまで繰り返しコインをなげるという、コイン投げゲームにお金を賭けることを想定してください。
表が1回目に来るなら、1ドル(または、他の単位のお金)を受け取り、2回目も表なら報酬が2ドルであり、3回目も同様なら報酬は4ドルとなる、以下同様:
つまり、表が来るうちは、得られる額は、それぞれの追加した回数の倍になります。
数学的に、これは非常に魅力的なゲームと思わるかもしれません。
投げる回数は表が出続けるうちは、理論上無限であるので、ゲームに勝って得る事の出来る総額の平均も無限大です(無限大を一つの値に含むなら、平均も無限大です)。
その結果、理論上、合理的な人は、ゲームを行う機会を持つことは、非常に巨大な額に値すると予測します。
しかしながら、現実的には、パラドックスを構成するサンクトペテルブルグゲームは賭けるに値しません。
20ドル以上を賭けても構わないと思う人は少数でしょう[137]。
サンクトペテルブルグゲームの100万回のコンピュータシミュレーションは、賭けの平均した金銭価値が9.82ドルにすぎないことを示しました [138]。【注:つまり、9.82ドル以上の賭け金なら参加する価値がないという事】
サンクトペテルブルグのパラドックスの解決策は2人の学者によって独自に示されました:
1728年のガブリエル・クレーマーと1738年のダニエル・ベルヌーイ(ニコラス・ベルヌーイの従兄弟)です [139]。
彼らは、対数関数に応じて財産の効用の期待値が減少することを提案しました。
そのような関数がサンクトペテルブルグのパラドックスに適用されるなら、解決されるように思われます:
つまり、得ることができる財の無限大の額には、限られた期待値しかありません。
彼らの解決策が依っている仮定は、古典派経済学の支柱の1つである期待効用理論になりました。
その理論によると、人々は、期待値の最大化を図ろうとするのではなく、期待される効用(期待効用)、およびお金の期待効用の最大化を図ろうとし、そして、既に所有されていた総額が増大するのに応じて、他の資産は減少します。
すなわち、500ドルには、100万ドル持っている人の1000ドル以上に、1000ドルしか持っていない人にとっては、より大きい期待効用があります。
前者にとって、500ドルは財産のかなりの増加であるが、後者にとっては、それは大海の一滴です。
これは図1の実線によって例証されます:
ベルヌーイ対数関数(また、フォン=ノイマン・モルゲンシュテルン効用関数とも呼ばれます)。
w1とw2は個人の財産への貨幣(または他の)価値の均等な額の追加ですが、w2は効用の点ではw1(a)より少ない増加(b)を引き起こします。
ベルヌーイによって述べられるように、このことは、サンクトペテルブルグのパラドックスの不自然な賭け以上にギャンブルに関する意味あいをもっています。
1万ドルの財を持っている人が、賭け金が倍になるか0になるギャンブルに1000ドル賭ける機会を提供されたと想定しましょう。
ベルヌーイの理論によると、彼が勝ち取るかもしれない1000ドルは、彼が失うかもしれない1000ドルより期待効用価値が少ないことになります。
したがって、「数学的に公正な確率的ゲームにおいて、たとえ僅かでも財を賭けるものは皆、非合理的に行動していることになる」 [139p.29]。【注:期待効用の点から言えば、賭けない方がましといえる】
もちろん、オッズがギャンブラーに不利であるなら、お金を賭けることは、さらに不合理です。
したがって、ガブリエル・クレーマーとダニエル・ベルヌーイは、どうやらサンクトペテルブルグのパラドックスを解決しましたが、合理的で効用の最大化を図る「経済的人間」の概念に固執する経済学者にとって、ギャンブル行動における謎は残ったままでした。
ギャンブル依存研究への関連性
ギャンブルでの初期のエコノミストの理論はほとんど今日のギャンブル研究に関連性を持っていません。
理論は、経済学の理論で後の進化に背景を提供するためにここに記述されました。
【サンクトペテルブルグのパラドックスの詳細はwikiを参照】
古典的な期待効用理論
理性ある人々がギャンブルを選ぶかの理由に関する疑問は、200年間以上、経済学で未解決のままで残っていました。
様々な解決策は、試みられましたが、不十分であると立証されました。
しばしば人々がギャンブルすることと保険に入るという事実を説明するのは、極めて困難で、前者は危険を求める活動であるし、後者は危険回避を意味します。
1948年に初めて、広く受け入れられる解決策がミルトン・フリードマンとレオナルドサヴェージによって示されました[140]:
財の限界効用は、一様に減少しません。図1の点線を見てください(「FriedmanSavage関数」)。
図1
フリードマン-サヴェージの期待効用関数カーブは、波うっており、財のレベルで決定されるリスクと利得に関する個々人の意識によって形成されます。
その財のレベルが上昇するのに従って、限界効用は、最初は減少して、次に増大に向かい、最終的に再度減少します。
したがって、財の軸(横軸)の零点からかなり離れた所(w2)での財の増加は、零点により近い所(w1)での同額の増加より、より高い期待効用がある事を導くでしょう:c≧a
カーブの中ほどの部分にある凸状部は、社会集団に属する上部階層がどう稀少資源を割り当てるかの選択を表します。(財の増加は、彼らをより高い社会集団に動かすでしょう)。
そのような社会的な欲求は、財の限界効用を減少させるよりむしろ増大させます。【注:少しの効用の増大に、より大きな財を投じる】
すなわち、労働者階級の男性か女性が例えば、5万ドルの財の増加が中産階級になる社会的な欲求を実現させることができるなら、彼らは、100パーセント未満の平均期待収益見込みであっても5万ドル支払うという冒険に投資する危険を冒す傾向があります。
宝くじや他の形式のギャンブルでお金を失うことは、かなりの金額の勝つ可能性が質的な社会的な上昇の機会を提供するかぎり、彼らが社会集団の上層階層に属すか、損失額が極端でなければ、彼らの社会的身分を質的に低下させることはありません。
したがって、ギャンブルはそのような社会的経済的環境において合理的といえます。
このようにして、フリードマン-サヴェージ仮説は、定式化され、ギャンブルの多くの研究は、それに対し経験的に支持を見出だした主張されました[6pp. 91-95,105, 60, 141.145]。
フリードマンとサヴェージ仮説は効用関数における様々なひねりや揺れ動く線と、関数の形に影響する不確実性下における選択に関する要因の導入による理論上の変更を受けました。
仮説はギャンブルにより広く適用され、社会的経済的状態の質的変化よりむしろ生活様式の進歩に焦点がありました。
所得分配におけるどんなレベルからも、そのような改善の可能性を提供するなら、ギャンブルは合理的であり、特に人々が、例えば、一生懸命働いてましな賃金の仕事をみつける現実的な可能性がわずかしかないと知覚するならなおさらです。
仮説のこの「弱い」バージョンは1970年代のフリードマン自身によって取り入れられたと言われています(F.Pryor, personal communication)。
フリードマン-サヴェージ理論の代替案が提案されてきたが、それらは、全く異なった効用関数を仮定するが、理性的な動作主と個人のギャンブルに対する動機が貨幣の獲得であるという仮定は維持します。
これらのアプローチで最も有力であるのは、プロスペクト理論[34]です。
それは、効用関数が主として絶対的な財産レベルに関連して形成されるのではなく、財の相対的な変化によって形成されると主張します [147]。
プロスペクト理論は、危険負担の決定において、個人は最初に、様々な経験則に従って、可能な結果を順序付けして、次に、2番目の段階で、絶対的な財よりむしろ相対的な利得と損失で結果の確率を評価すると主張します。
この計算に基づいて、彼らは、最も高い効用で選択肢を選ぶことによって、合理的な選択をします。
プロスペクト理論は、個人は、莫大な大当たりだが小さい可能性である宝くじなどのように、わずかな確率のためのギャンブルに参加しても構わないと思っていると予測します。
しかしながら、合理的行動を仮定し、ギャンブラーの動機はお金を得る可能性に関係があるだけであると想定する他の経済アプローチと同様に、プロスペクト理論は一般に、人々が異なった還元体系、確率、最高額を伴うさまざまなゲームに参加する事を説明する事ができません。
これを説明するためには、ギャンブルの過程効用を紹介しなければなりません(以下参照)。
ギャンブル依存研究への関連性
期待効用のフリードマン-サヴェージ理論は、プロスペクト理論と同様に、ある人々が少ない賭け金で莫大な賞金の可能性があるロトや他の形式のギャンブルに参加する動機を説明します。
その動機は、一般的に、社会的な上昇やライフスタイルの改善を可能にするお金を獲得する希望です。
明らかに、その理論は、社会的経済的グループにわたって、このタイプのギャンブル【宝くじなど】における、異なったレベルの関与をある程度予測できます。
ギャンブルの他の形式に関して、その理論は、ほとんど関連性がありません。
スロットマシン、スポーツ、競馬、カジノを含む多様な製品を持つゲーミング市場において、宝くじは、ほとんどと言っていいくらい過度のギャンブルには関連づけられません、そのため、古典的な期待効用理論はあまりギャンブル依存研究の役に立ちません。