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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(「元衆議院議員の子息が関係する会社に対し、経済的利益を与える目的で不適切な取引」)(日本空港ビルデング)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(PDFファイル)

調査報告書概要(PDFファイル)

日本空港ビルデング(東証プライム)のプレスリリース(2025年5月9日)。

読売などが報じていた日本空港ビルデング(東証プライム、監査人は新日本)による元自民党幹事長長男の会社へのあやしい支出(→当サイトの関連記事)について、「特別調査委員会」の調査報告書(50ページ超)が開示されました。全7ページの概要版もあります。

「調査報告書によりますと、マッサージチェア事業において、元衆議院議員の子息が関係する会社に対し、経済的利益を与える目的で不適切な取引がなされておりました。また、当該会社との空港内の広告に関する代理店業務及び、経営に対するコンサルティング業務においても、同様に不適切な取引が確認されました。さらには、当該会社を取引先とするよう、トップダウンで指示を出し、役職員が、その合理性に疑問を抱きつつも、その指示に従わざるを得ない状況にあったことも指摘されました。」(プレスリリース部分より)

会長と社長がクビになっています。

「本調査結果を踏まえ、当社は鷹城勲・代表取締役会長兼 CEO 及び横田信秋・代表取締役社長執行役員兼 COO の辞任の申し出を受理いたしました。」(同上)

調査報告書概要によれば、2016年の時点で税務当局から指摘を受けていたにもかかわらず、商流を変えたり、別の名目を使ったりして、利益許与を続けていたようです。悪質すぎる。

羽田空港ビル利益供与疑惑、「社長が主導」との内部調査結果を公表へ…社長と会長は辞任の見通し(読売)(報告書公表直前の記事)

「空港ビル社の子会社は2016年までの5年間、古賀誠・元自民党幹事長(84)の長男(52)が経営するコンサル会社「アネスト」にMCの業務委託費として約1億円を支払った。16年に東京国税局から、アネストには業務実態がなく経費と認められないとして所得隠しを指摘された後も別会社経由で支払いを続け、利益供与の総額は20年までの約10年間で2億円近くに上る疑いがある。」

「関係者によると、調査委は、所得隠しを指摘された後も、横田氏が長男側への支払いが維持されるよう取り計らっていたことなどから、利益供与は横田氏主導だったと判断。「経営者が内部のチェックをすり抜けて長男に利益を提供し続けており、極めて不適切」と認定するという。」

日本空港ビル社長「関係切るのはばかられ」 古賀氏長男側へ利益供与(毎日)

「調査結果によると、日本空港ビルの100%子会社「ビッグウイング」は06年9月、空港内のコイン式マッサージチェアの事業を古賀氏の長男が代表を務めるコンサル会社「アネスト」(東京)に業務委託する契約を結んだ。鷹城、横田両氏のトップダウンの形で進み、実際の業務は健康機器販売会社(埼玉)に「丸投げ」状態だった。

東京国税局は16年、「コンサル会社に業務実態はない」として、16年までの5年間の委託費約1億円は所得隠しに当たると指摘。ビッグ社はその後、販売会社との直接契約に切り替えたが、販売会社からアネストへ売り上げの一部が流れる状態が20年まで続いた。」

「販売会社との契約が終了した21年ごろ、ビッグ社は別の企業と契約を結んだ。長男は24年まで断続的に横田氏らに売り上げの一部を流すよう要求したが、別の企業が拒否したため実現しなかった。」

2016年の税務当局指摘により、監査法人がこのあやしい支出に気づいていた可能性もありそうです(会社から指摘内容をヒアリングしていたはず)。財務諸表に大きな影響を与えるほどの金額ではなかったとしても、監査役との協議などが必要な場面だったかもしれません。もっとも、「知らぬが仏」という言葉のとおり、役員が関与しているような重大問題だとは気づかなかった可能性も当然あります。

羽田空港ビル会社 内部調査 “元衆院議員息子の会社に利益”(NHK)(動画あり)

「この問題について日本空港ビルデングは特別調査委員会による内部調査の結果を公表し、午後5時から会見を開きました。

それによりますと、ビルデングの横田信秋社長は、鷹城勲会長の紹介で元衆議院議員の息子と面談し、ビッグウイングに指示して2006年にアネストとマッサージチェア事業の契約を結んだということです。

ビッグウイングからアネストに支払う機器設置利用料は売り上げの70%に設定されていましたが、実際の業務は下請けの埼玉県の健康機器販売会社に丸投げされていたとしています。」

「その後、東京国税局からアネストには業務実態がないと指摘があり、健康機器販売会社との直接契約に変更したものの引き続き、健康機器販売会社を介してアネストに対する資金の支払いが続いたということです。

ビッグウイングからアネストに支払われた業務委託費は、2016年までのおよそ10年で4億円余りに上りましたが、健康機器販売会社を介して支払われた金額は不明だとしています。

これについて、横田社長がアネストに経済的利益を与える目的で契約相手の選定や変更を主導し、鷹城会長も容認・助長したとしています。

マッサージチェア事業のほかには空港内の広告に関する代理店業務や、経営コンサルティング業務でも同じような不適切な取り引きが確認されたとしています。」

確認されただけで4億円が流出し、そのほか、間接的に支払われた不明分があるということになります。

「なぜ大物政治家の長男に利益供与を続けたのか」…国交省も調査は会社任せ(読売)

「空港ビル社は1953年設立。国から空港法の定める「空港機能施設事業者」に指定され、年40億~50億円を支払って国有地の使用許可を受けている。指定や許可は数年ごとに更新されるが、国有地に立つ自社所有のビルには本社も置かれ、空港と「一体」の関係にある。ほかの企業が参入する余地はない

国の「お墨付き」による強固な経営基盤と、民間企業ならではの迅速な意思決定を両輪に発展してきた空港ビル社。2005年に鷹城勲(81)が社長に就任してからは、トップダウンの姿勢が鮮明となった。」

大物政治家の息子に金を払う余裕があるのなら、国有地の使用料を大幅に引き上げるべきでしょう。

「調査委によると、社内では、長男側に対する利益供与を知る職員は少なくなかったが、取締役会に報告されず、内部通報制度も生かされなかった。ある社員は調査委に対し、「通報したら不利益を被る。鷹城会長の不興を買うと一発で飛ばされる」と打ち明けた。

16年には長男が経営するコンサルティング会社「アネスト」(東京)との取引を国税当局から問題視されたが、監査担当には共有されなかった。調査委は、「監査機能が十分と言えるかは、内部でも疑問があった」とした。」

内部監査のこと?

空港ビル社利益供与疑惑、田中社長「再発防止に努める」…国交省が行政指導「コンプライアンス意識が欠如」(読売)

「国交省は文書の中で、アネストとの一連の不適切な取引について、「公共性の高いインフラ(社会基盤)の一翼を担う空港ビル社が、空港ターミナル内で長年にわたり不適切な行為を続けてきたことは、コンプライアンス意識の欠如とともにコーポレートガバナンスが機能不全をきたしており、空港利用者の信頼を損なうもので誠に遺憾だ」と指摘した。」

コメント一覧

ストライベック
最近はChatGPT(LLM)や生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術とは違った日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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