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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

英郵便の冤罪事件、富士通批判が再燃 ドラマ化で注目(日経より)

英郵便の冤罪事件、富士通批判が再燃 ドラマ化で注目

当サイトでも以前から関心があり何回か取り上げた英国最悪の冤罪事件ともいわれる問題ですが(→当サイトの関連記事)、テレビドラマがきっかけとなり、再燃しているそうです。

「事件の発端は1999年だった。各地の郵便局に富士通の会計システム「ホライゾン」が導入された後、窓口の現金が会計システム上の残高よりも少なくなる問題が頻発するようになった。

郵便局を束ねる英国有のポストオフィスは、横領や不正経理をしたとみて、郵便局長らに補塡を要求。局長らは借金などで差額を埋めることを余儀なくされた。この結果、破産や自殺に追い込まれるケースもあったという。2015年までに700人以上の局長らが罪に問われた。」

実際は、富士通の英国子会社が作ったシステムの欠陥が原因であり、これらは冤罪でした。

「その後、富士通の会計システムの欠陥が原因だと判明した。システムを納入した英国子会社の富士通サービシーズは、1990年に富士通が買収した英ICLを母体とする。」

ドラマをきっかけに矛先が富士通に向かっているそうです。

「議会では富士通側の責任を求める声が高まっている。下院ビジネス貿易委員会は、富士通幹部らに16日の議会で証言するよう要請した。

英首相官邸によると、政府が賠償に必要な資金を出している。このため、議員の間では富士通にも賠償を求める声が上がっている。」

「郵便局長ら」とありますが、問題となった英国の郵便局は日本とは全く異なるもののようです。

英民放ドラマが郵便局の冤罪事件をドラマ化 新たに50人の被害者 英警視庁は捜査続行へ(Yahoo)

「日本の郵便局と英国の郵便局では、趣がだいぶ違う。英国では新聞・雑誌や文房具、お菓子などが販売されている小売店の奥に郵便局の窓口があるので、「ここが郵便局」と言われて、筆者自身も、当初は「?」と思ったものだ。」

「現在は郵便物を配達する「ロイヤル・メール」、小包を配達する「パーセル・フォース」、全国にある約1万1000の郵便局を管理・運営する「ポスト・オフィス・リミテッド」として構成されている。

前者2つは民間企業ロイヤル・メール・グループが運営し、ポスト・オフィスはビジネス・エネルギー・産業戦略省を通じて国が所有する形をとる。

99パーセントの郵便局はフランチャイズ契約を結んだ企業あるいは独立事業主である「サブ・ポストマスター」(副郵便局長)が、ポスト・オフィスから事業委託を受けて運営している。「サブ」というのは、大きな郵便局以外の郵便局を「サブ・ポスト・オフィス」と呼ぶことから来ている。

英国民が利用する、小売店を兼ねたそれぞれの郵便局の責任者がサブ・ポストマスターである。」

コンビニチェーンとそのフランチャイジーである零細企業・個人事業主の関係みたいなものでしょうか。日本のコンビニチェーンなら本部と店舗が結ばれている会計システムはほぼ完璧なのでしょうが、英国のポスト・オフィスのシステムはひどいものだったようです。

富士通に補償求める声、被害者らから噴出 英郵便局スキャンダル(BBC)

「富士通は、イギリスで郵政の窓口業務を担当する会社「ポスト・オフィス」にソフトウェア「ホライズン」を納入した。その欠陥が大規模な冤罪(えんざい)事件につながった。だが同社では誰も責任を問われておらず、被害者への補償金も一切支払っていない

その一方で、富士通は英政府のITサービス関連の高額契約を獲得し続けている

事件をめぐっては公聴会が重ねられているが、鍵を握る富士通の元チーフITアーキテクト、ギャレス・ジェンキンスさんはまだ証言していない。

ジェンキンスさんの裁判所での証言は、多くの郵便局長らの有罪判決を導く重要な要素となった。ポスト・オフィスの弁護士らは裁判で、富士通のITシステムが正しく機能していたと主張するため、ジェンキンスさんの証言を繰り返し持ち出した。」

「冒頭のストリンガーさんは、数百人の郵便局長らと共に、経営する郵便局の精算機から金を抜き取ったとして告発された。ホライズンが現金の不足を示したためだった。ストリンガーさんはは5万ポンド(約930万円)を自分で埋め合わせた

BBCのテレビ番組に出演したストリンガーさんは、「補償のいくらかに関しては(富士通が)責任を負うべきだ。(中略)ホライズンは欠陥品だ」と、ケヴィン・ホーリンレイク郵便担当相に訴えた。」

「ドラマは、15年間にわたって700人以上の郵便局長が、欠陥ソフトウエアのせいで虚偽会計、窃盗、詐欺の罪で有罪判決を受けた経緯を伝えた。」

大手会計事務所のルーツがある国ですが、こういう事件を見ると、英国の会計実務やITは、実は、あまりレベルが高くないのかもしれません。司法も、零細商店主みたいな弱者には冷たいのでしょう。外からの印象ほどには公平ではないようです。

「違法な取り立て」に心折れ、自殺者も...富士通のシステムが招いた巨大「冤罪」事件に英国民の怒りが沸騰(Newsweek)

「全国民間郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は08年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から民間郵便局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンドの現金不足が見つかったとポストオフィスの抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。

ホリンレイク氏は8日、下院で富士通について「このスキャンダルに責任があると証明された者は被害者救済のためのすべての支払いについて義務を負うべきだ」と答弁した。最初から完全無欠なIT(情報技術)システムなど存在しない。バグや欠陥を見つけて、そのたび更新するのが当たり前だが、ポストオフィスは「ホライズンに欠陥はない」と起訴を続けた。」

ポストオフィスと富士通は負担すべき開発コストを馬鹿正直な民間郵便局長に押し付けた最初から局長を犯罪者扱いし、ポストオフィスの捜査権と公訴権を乱用して不法な取り立てが行われた。弁護士費用がべらぼうに高い英国では社会的弱者は泣き寝入りするしかない。主犯はホライズンを運用したポストオフィスだが、富士通はどこまで責任を負うべきなのか。」

「富士通英国ソフトウェア・サポート・センターに01~04年にかけ勤務したリチャード・ロール氏の証言では一晩で50万件もの修正が行われることが度々あった。ロール氏は「ホライズンがクソだということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があったが、そのようなことは起きなかった。そのための資金もリソースもなかったからだ」という。

ポストオフィス最高顧問弁護士の依頼でホライズンの調査を担当した法廷監査事務所セカンドサイト社長だったロン・ワーミントン氏は筆者に「富士通はICLを買収した時に問題(ホライズン)を受け継いだ。それはひどいものだった。修復されたバグやエラーに関する情報を抱え込んだ責任がいったい誰にあるのか私には分からない」と打ち明けた。」

日経記事によると、富士通がこの英国子会社を買収したのは、1990年ですから、1999年から発生した問題について、富士通は当然責任があるでしょう。富士通がひどいというよりは、ひどい製品を持つ会社を買収してしまったということなのかもしれませんが、言い訳にはなりません。

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