会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

<独自>日大理事長を聴取 東京地検 資金流出、関与を否定(産経より)

<独自>日大理事長を聴取 東京地検 資金流出、関与を否定

日本大学背任疑惑で、東京地検特捜部が理事長を任意で事情聴取したという記事。

「関係者によると、特捜部は田中氏をこれまでに複数回、参考人として任意聴取。田中氏は、特捜部の調べに対し「流出は知らないし、(流出したとされる)金も受け取っていない」などと、資金流出への関与を否定しているという。」

「関係者によると、日大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)は老朽化のため、日大創立130周年事業として建て替え工事が持ち上がり、昨年、20億円超で都内の設計会社が設計業務を請け負った。

この際、日大の関連会社「日本大学事業部」(世田谷区)の取締役を務める日大理事が主導し、設計会社を通じて、大阪市の医療法人グループの関係先に2億円超の資金を移動させた疑いが持たれている。

田中氏は長年、この日大理事を学内で重用してきたことで知られる。」

学校法人監査でも、経営者(理事者)とのディスカッションを行うはずで、日大の監査人は、当然、この疑惑についても問いただす必要がありますが、並の会計士では、一発で押し出しでしょう。

それはともかく、日本大学の会計監査人はどういう手続をすればよいのか...。

まず、手続(実証手続)の前提として、学校法人の内部統制を検証する必要がありますが、もし、日本大学のこの疑惑を無視し、徹底的な調査を自主的に行わないのであれば、経営者層における内部統制が全くないということになるので、他の手続をするまでもなく、意見不表明でしょう。ただし、現時点で、内部統制の重大不備が確定したわけではないので、他の手続も平行して行うことになるでしょう。

大学が調査する場合には、その調査結果が正しいのか、監査人自ら検証することになります。報道されている不正内容からすると、建設予定の病院に関する支出を巡るものですから、建設仮勘定の過大計上などが疑われます。支出に関する内部統制も問題です。不正の舞台は子会社のようですから、子会社への往査も必須です。もちろん、検察が調べた事案だけでなく、他に同様の不正がないかどうかも調べなければなりません。不正に関わったり、不正を見逃していた経営者が排除されるかどうかも、監査意見を出せるかどうかのポイントでしょう。

会計士を監督する金融庁や会計士協会のサポートも必要でしょう。金融庁・協会は、検査・レビューの一環として、監査事務所を呼んでヒアリングする権限があるのですから、日大の監査人を呼んで、日大の前期の監査はどのように行われたのか、当期の監査はどのような方針で行うのかをヒアリングして、足りないところがある場合には、改善するよう指導すれば、対大学において監査人をバックアップすることになるでしょう。これだけ注目されている事件なのですから、懇談会なんかを開いて、抽象的な話をするだけでなく、個別具体的に指導して、日本大学のような社会的に影響の大きな組織のガバナンス改善に、会計監査が役立つようにすべきでしょう(もちろん、最終的な監査意見は監査人の判断ということになりますが)。

その他関連記事。

<独自>日大理事側に1億円還流か 2億円移動の医療法人から(産経)

「日大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の建て替え工事をめぐっては、設計業務を東京都内の設計会社が複数社による競争の上、昨年、20億円超で受注した。関係者によると、日大理事は、日大側が設計会社に送金した資金のうち2億円超を、大阪市の医療法人グループの関係先に移動するよう持ち掛けた疑いがあるという。

また、このうちの約1億円が、医療法人グループ側から日大理事側に還流した疑いがあることが新たに判明。残る約1億円については、医療法人グループ側が受け取った可能性があるという。日大理事は自分に資金を還流させるために、日大から資金を外部に流出させた疑いがある。」

日大背任事件の2億円不正流出先は? ドン宅に続き「アベ友」の医療法人に特捜ガサ入れ(日刊ゲンダイ)

「田中氏が参考人として最初に任意聴取を受けたのは今月9日。自宅や日大本部などが捜索を受けた翌日だ。6時間に及んだ聴取にも知らぬ存ぜぬ、われ関せずの姿勢を崩さなかったという。

「翌10日、13時からの定例理事会に田中理事長も何食わぬ顔で出席。家宅捜索の説明は一切なかった。13日には学内の危機管理委員会が開催されたが、理事を兼ねる委員長は『説明することはない』と発言。さすがに他の委員が『あるだろう!』と声を上げてもウヤムヤにして、お開き。田中理事長はアメフト部の悪質タックル問題を機に不正・不祥事への危機管理体制の整備を決めたのに、いい加減なままです」(日大関係者)

12日に田中氏は検察側に診断書を提出し、入院。特捜部が複数回、聴取を重ねても一貫して事件への関与を否定しているという。」

自浄作用は全くなさそうです。

ちなみに、15日に開催された「会計監査の在り方に関する懇談会」の資料によると、学校法人監査の監査人は個人事務所がほとんどのようです。



日本大学は、誰が監査しているのでしょう。

コメント一覧

kaikeinews
その大学の報道は何回か取り上げましたが、少し複雑な背景があるようですね。
https://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/12400.html
いずれにしても、学校法人監査は、(報酬が少ない割に?)社会的責任は重いので、中立的にしっかりやってほしいものですね。
匿名
こちらも別の大学ですが理事長の不正経理による解任がニュースになりました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31211940R30C18A5000000/
日本大学の会計監査人は、以前は東陽監査法人でした。今では東陽監査法人から独立した個人会計事務所、その次に監査法人化した秋葉原監査法人の監査を受けております。

下記のニュースになっている大学も奇遇でしょうか。
以前は東陽監査法人でしたが、今では東陽監査法人から独立した個人会計事務所、その次に監査法人化した秋葉原監査法人の監査を受けております。

東陽監査法人は契約を解除したにも関わらず、そこから独立した個人会計事務所が監査契約を引き続き継続して受けていたと言う流れになるかと、思われます。

https://ameblo.jp/mizutanoriko/entry-11377390319.html

おっしゃられます通り、学校法人に対する会計監査人の役割・信頼性が大きく揺らぎます。
kaikeinews
情報ありがとうございます。場所的にも、日本大学から比較的近いですね。
学校法人監査には内部統制監査は含まれていないとはいえ、通常の会計監査でも、統制環境をみないといけないわけですから、本当に逮捕された理事長や元理事の影響力が払拭されたかどうかを確かめないと、監査できないはずですね。

また、具体的な科目の監査でも、大学が被害届を出すようですから、水増しされた建設仮勘定(病院の設計費)やリース資産(医療機器)の会計処理の訂正を行わないと、被害があった(=水増しされた支出があった)という大学の認識と会計処理が矛盾することになるので、きちんと検討しないといけないでしょうね。そのほかにも、余罪はあるでしょうから、支出に関する内部統制・会計処理の総点検が必要でしょう。不正の直接の舞台となっている子会社も、徹底的にしらべるべきでしょう。連結決算ではないからといって、本体の決算に影響を与えている以上、省略はできないはずです。

会計士協会や金融庁(審査会)も、レビューや検査に入るべきですね。何もしないと、学校法人監査不要論が浮上するでしょう。
匿名
日本大学は、以前は東陽監査法人の監査を受けていました。その監査法人から独立した個人会計士に、監査を引き継いだようです。その個人会計士が秋葉原監査法人と監査法人化をした流れです。
匿名
>>日本大学は、誰が監査しているのでしょう。
https://akbkansa.com/staff
日本大学の会計監査人は、小林良三会計事務所です。80歳くらいの方です。

その個人事務所が平成29年に監査法人化し、秋葉原監査法人と監査法人化しました。
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