「貯蓄から投資」の時代なのに…監視委の告発低調 今こそ求められる「市場の番人」の奮起
証券取引等監視委員会が検察に行う刑事告発の件数が低調だという記事。
もっとも、記事のグラフを見ても、近年は年間10件にも届かず、少なかったようですが...
「法務省の検察統計年報などによると、株投資を巡り検察が監視委から金融商品取引法(旧証券取引法)違反の告発を受けた件数は(平成)22年度に8件だったが、方針転換後の23年度は15件に急増。ただ24年度は7件と減り、以後も一ケタ台で推移。令和6年度は12月に入っても3件にとどまった。」
監視委と検察の関係は...
「監視委と検察との関係は深い。
4年12月に監視委のトップである委員長に就任した中原亮一氏は、平成24年7月から翌年7月まで東京地検特捜部長を務めた経済事件のエキスパート。19年7月に就任した前々任の佐渡賢一氏、28年12月に就任した前任の長谷川充弘氏も、ともに東京地検特捜部の副部長を経験している。」
日産ゴーン事件についてふれています。
「東京地検特捜部が金融商品取引法違反や特別背任の罪で逮捕・起訴した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告=海外逃亡中=が報酬を有価証券報告書に過少記載したとされる金商法事件も、監視委の告発後に特捜部が起訴している。
ただ、ゴーン被告の共犯に問われた同社元取締役のグレゴリー・ケリー被告=控訴審で公判中=の1審判決では検察が過少記載とした8年分のうち大半の7年分が無罪とされるなど、金商法事件は密室犯罪である汚職や法解釈が複雑な脱税と並び、捜査が難しい事件だ。」
会計士の関心が強い虚偽記載事件では、日産ゴーン事件などを除き、課徴金処分ですませることが多いようです。あの悪質な東芝巨額粉飾事件でも、監視委からの刑事告発はありませんでした(したがって、東芝役員はだれも刑事処分を受けていない)。
逆に、日産ゴーン事件については、本当に虚偽記載だったのかも怪しく、監視委が主導して告発したとも思えません。
2024年末の2つの事件にもふれています。
「インサイダー取引事件に関与したとして監視委は昨年12月23日、金商法違反の罪で金融庁に出向中の元裁判官や東京証券取引所の職員らを特捜部に告発。特捜部が同25日に在宅起訴したのだ。
裁判官の出向は法律家として広い視野を養うことが目的で、いったん検察官に転官した上で、各省庁で働くのが通例だ。
法務・検察幹部は「証券犯罪の汚染が裁判官にまで広がっていた事実に、ショックを受けた法曹関係者は少なくない」と指摘。「監視委や検察にとっても身内の不祥事といえ、一気に幕引きを図る必要があった」と打ち明けた。」
細かいインサイダー取引事件の摘発も必要でしょうが、ほかにも、やることがあるでしょう。
例えば、あやしい投資詐欺を、被害が数十億円~数百億円になる前に取り締まるなどです。
とはいえ、実績を焦って、こういう冤罪事件を起こすのはやめてほしいものです。
NHKスペシャル“冤(えん)罪”の深層~警視庁公安部・内部音声の衝撃~(NHK)(1月11日まで配信)
この事件に関して、検察・警察は検証・謝罪などはしていないようです。組織にどこか腐ったところがあるのでしょう。
もとになった英語が、法令上、「消毒」(薬品で菌をなくしてしまうイメージ)ではなく「殺菌」と翻訳されたことも、えん罪発生に影響したようです。