グレイステクノロジー(東証1部)の不正会計疑惑に関する比較的詳しい記事。
「架空売り上げは当初の開示より1年早く、16年3月期からスタートし、初年度は129万円(単体ベースの暫定値、以下同)だったが、2年目の17年3月期は833万円、3年目の18年3月期は3億4787万円と跳ね上がり、4年目の19年3月期は5億557万円、5年目の20年3月期は4億8987万円、直近期である21年3月期は9億9428万円と、全体の売上高の実に55%が架空、つまりウソの売り上げという状況だったという。
グレイステクノロジーの東証マザーズへの新規株式公開(IPO)は16年12月。粉飾2年目となるこの期(17年3月期)の架空売り上げは前述の通り883万円だったが、次年度には架空売り上げの金額が3億4787万円へと、一気に桁違いとなる。
その甲斐あって18年8月には早くも東証1部に昇格した。
なお、創業者の松村幸治代表取締役会長は、21年3月期決算が締まった直後の同年4月13日に66歳の若さで急死した。これはなんとも意味深だ。」
不正の手口は、架空売上を計上し、その売掛金を役職員の自己資金で仮想入金していたというものです。
その役職員が誰かまでは開示されていませんが...
「関東財務局に提出されている「大量保有報告書」(変更報告書)によれば、松村氏夫妻と個人会社の計3人の共同保有者はグレイステクノロジー株式を頻繁に売却、または担保提供して資金を捻出していることがうかがえる。松村氏の妻もグレイステクノロジーに勤務していた。
目立つ取引をピックアップすると、18年7月にみずほ銀行に176万株余り(当時の時価で44億円)を担保提供、19年5月には130万株をゴールドマン・サックス証券へ売却(単価2401円)して31億円余りを捻出(翌月みずほへの担保提供は解消)、19年11月に68万株を市場外取引で売却(単価2725円)して18億円余りを捻出、最後は20年8月に260万株をゴールドマン・サックス証券へ売却(単価4369円)して113億円余りを捻出、という具合である。
これほどのキャッシュがあれば、年間9億円程度の仮装入金はたいした負担ではないだろう。」
監査についてもふれています。
「ところで、よく考えると我が国でも相次ぐ不正会計の発覚を受けて、21年3月期から上場企業の監査報告書には「KAM」(キー・オーディット・マター、監査上の主要な検討事項)の記載が求められている。グレイステクノロジーの会計監査人は大手のEY新日本監査法人である。監査報告書には何が書かれていたのか。
筆者が確認したところ、KAMは「負ののれんの金額の妥当性」と記載されていた。グレイステクノロジーは20年11月、大阪のマニュアル制作会社、HOTARUとその中国・上海市の子会社を合計14億円で買収したが、帳簿価格より割安だったため、差額の2億円を21年3月期に「負ののれん発生益」として特別利益に計上している。新日本監査法人はその妥当性について検討したという。
結果として妥当だということで監査報告書では「無限定適正意見」を得ていた。当たり前だが、9億円もの架空売り上げ計上の可能性を疑った形跡はない。せっかく鳴り物入りでスタートしたKAMも、そもそも的を外していれば不正の歯止めにはならないということだ。」
KAMは、監査上の大きなリスクがある箇所を示して、それに対してどういう監査手続をやったのかを監査報告書に書くものですから、KAMに書くぐらいのリスク認識があれば、それに対応する監査手続も行われ、不正を発見できた確率は高いでしょう。もちろん、KAMに書かなくても、必要な監査手続はやっていたはずですが...
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