昨年東証マザーズに上場したばかりのアップバンクが過年度決算を訂正するという記事。
「昨年10月に東証マザーズに上場したIT企業アップバンク(東京)は17日、過去の決算を訂正すると発表した。元役員が1・4億円超を横領していたことがわかったためで、純資産は昨年10月時点で7・7%目減りした。」
「...上場と同時に業務データの流出が発覚したと発表。昨年12月には経理責任者だった元役員の横領疑惑が浮上し、外部に不正送金されていたことがその後の調査で判明した。」
過年度に係る決算短信等(一部訂正)の公表について(PDFファイル)
「過年度の有価証券届出書の訂正届出書等に関しましては、現在、訂正範囲の網羅性を確保しつつ、記載内容の訂正作業を進めていることから、平成28年3月29日に関東財務局へ提出を予定しております。訂正後の連結財務諸表等につきましては、訂正内容の確定ができ次第、有限責任監査法人トーマツによる監査及びレビューを受け、改めて監査報告書等を添付する予定です。」
訂正の会計処理は...
「売上原価として外注費に計上していた金額を長期未収入金に振替計上を行い、合わせて当該債権全額に対して貸倒引当金繰入額を営業外費用にて計上しております。
当該貸倒引当金繰入額に伴う税金費用については各連結会計期間にて追加計上しております。」
横領された金額は売上原価になっていたのでしょう。それを(横領犯人に対する)長期未収入金に振り替えるとともに、全額貸倒引当金に繰入しています。したがって、税引前では差引影響なしとなるはずですが、有税の引当金ということで税金費用を追加計上するということのようです。
2014年12月期でみると、純資産への影響額は△51,050千円(約12%)、純利益への影響額は△43,373千円(約13%)です。2013年12月期は純利益がわずかな黒字から赤字に変わっています。
比較的詳しい記事。
↓
AppBank、元取締役の横領問題に言及--「告訴の手続き進めている」(CNET)
「資金使途について、社内調査報告書には、木村氏の上申書に不正送金額のうち約3000万~3500万円が「恐喝」によると記述されているが、その「事実確認が行えなかった」(同書)として具体的な内容を示していない。これに関して、今回の横領問題が反社会的勢力と関係している疑いがあると指摘する記事が「Yahoo!ニュース 個人」に掲載されたが、AppBankはその内容を否定する文書を発表している。」
(補足)
訂正の会計処理について、より詳しい説明がなされています。
↓
アップバンク、見えない「横領疑惑」の真相
意気消沈の宮下社長、饒舌だった廣瀬CFO(東洋経済)
「――不正送金の金額1.4億円についてはどのような修正をしたのか。
廣瀬:本日開示した「過年度に係る決算短信等(一部訂正)の公表について」を見てほしい。複雑な処理はない。不正送金された金額を、送金日ベースで長期の未収入金を計上、同時に貸倒引当金を積んでいる状況だ。
IR担当者:少し補足する。もともと不正送金は外注費で行われていた。外注費は発生ベースで計上し、2カ月後に送金していた。今回は架空外注費ということが判明した。監査法人と相談の上で、外注費は取り消すが、2カ月後の送金日の時点で長期貸付金を計上することにした。」
外注費をそのまま長期未収入金に振り替えるのではなく、いったん外注費を取り消し、その後の現金支出時点で、買掛金支払ではなく、長期未収入金(貸付金)に計上するという訂正だったようです。
このほか、反社会的勢力との関係の有無などについても、記者会見で追及されたようです。
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