会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

年金債務、全額計上を 企業会計基準委案、11年度から

年金債務、全額計上を 企業会計基準委案、11年度から

企業会計基準委員会、、退職給付会計基準改正の公開草案をまとめたという記事。

「2011年度から企業年金の積み立て不足額を企業本体の資産・負債の状態を表す「貸借対照表」に毎期、全額計上するよう求める」とのことです。

「(資本不足に陥る企業の)典型的な例が会社更生手続き中の日本航空だ。09年3月期連結決算の「簿外」の積み立て不足額は3千億円超だったが、純資産は2千億円に満たなかった。新基準案を単純に当てはめると「債務超過」になる。大和総研によると、09年3月期で上場企業約300社の中で「債務超過」になるケースは日航以外にはないものの、不足額が純資産の5割程度に及ぶ会社は電機業界で3社ほどあるという。

 また、株主に対する配当との関係も課題だ。「簿外」にあった年金債務が負債として計上されると、株主に配当として回せるお金が減る可能性も出てくる。法務省は「最終案がまとまったら、計算方法を整理したい」という。」

JALのような企業があるからこそ、必要な改正なのでしょう。配当可能利益との関係は、どこかで決めるのでしょうか。(従来引当計上していない)積み立て不足部分は当然配当原資にはならないと思いますが・・・。

実務的な影響については、損益は従来どおりなので影響はありません。ただし、数理計算上の差異は従来翌期から償却だったので(注:当期から償却する方法もある)、その期の数理計算上の差異を確定させなくても、P/L、B/Sの数値は確定できたわけですが、今後はそうはいきません。

そのようなタイミングの問題を除けば、従来から積み立て状況は注記していたわけですから、大きな影響はないのでしょう。(正確な解説については、いろいろな雑誌や監査法人ウェブサイトなどで取り上られると思いますので、そちらを参照してください。)

ところで、記事によれば、「貸借対照表上の不足額の扱いでは日米とIFRSは同じ方向だが、単年度のもうけを表す損益計算書における不足額の扱いを巡っては、IFRSと日米で意見が割れている」そうです。たしか、IFRSでは、損益計算書でも遅延認識しない方向で検討中だったと思います。さらには、退職給付債務自体の算定方法も検討しているようですから、退職給付会計に関してはまだまだ動きがありそうです。

第197回企業会計基準委員会の概要 Webcast(この回に公表議決がなされています。)

年金積み立て不足は全額を負債計上 企業会計委が草案
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