サンテック(東証スタンダード)が意見不表明の監査報告書を受領したという記事。
「同日(5月27日)、RSM清和監査法人から24年3月期の連結財務諸表など決算書類について、監査意見を表明しないとの報告を受け取ったことも発表した。過去に国内で受注したトンネルの照明工事について「見積もり工事原価の増加額の根拠資料の一部やその網羅性に関する十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった」としている。」
会社のプレスリリース。(このほかに同日付で「2024年3月期四半期報告書に係る四半期レビュー報告書の結論の不表明に関するお知らせ」も出ています。)
2024 年3月期計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類に対する監査意見不表明に関するお知らせ(2024年5月27日)(サンテック)(PDFファイル)
意見不表明は、会社法監査の監査報告書です。
以下、プレスリリースより、引用されている監査報告書の「意見不表明の根拠」(個別と連結がありますが連結の方です)。
「意見不表明の根拠
会社は当連結会計年度において、前々連結会計年度に受注した特定の特殊工事に係る見積り工事原価を 596,276 千円増額した。このうち、204,262 千円は工事損失引当金繰入額として当連結会計年度の連結損益計算書において完成工事原価に計上するとともに、増額後の工事原価総額をもとに算定した工事進捗度により完成工事高 534,913 千円を計上した。当監査法人は、見積り工事原価の増加額の根拠証憑の一部やその網羅性に関する十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。また、会社が全ての利用可能な情報に基づく合理的な仮定を使用して適時かつ適切な見積りを行っていたか判断できないため、前々連結会計年度、前連結会計年度、当連結会計年度のいずれの連結会計年度に見積り工事原価総額を増額し工事損失引当金を計上すべきか否かに関して、その判断の根拠を入手することができず、完成工事原価の期間帰属に関する十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。
また、会社が見積り工事原価の増加額 596,276 千円を前々連結会計年度、前連結会計年度、当連結会計年度のいずれの連結会計年度の見積り工事原価総額に反映し工事進捗度を算定した上で完成工事高の測定を行うべきかについて、その判断の根拠を入手することができなかったため、完成工事高の期間帰属に関する十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。
加えて、会社は見積り工事原価の増加額をいずれの連結会計年度に反映すべきであったか及び当該特定の特殊工事に類似する案件で見積り工事原価総額に誤謬が発生していないかの調査を継続して実施しているものの、本報告書日現在、当該調査は終了していないが、会社は 2024 年 6 月 25 日開催予定の定時株主総会において、連結計算書類を報告事項とすることにつき意思決定を行った。当監査法人は調査結果を入手することができなかったため、最終的な調査結果を評価できていない。
さらに、会社は当連結会計年度において、株式会社サンテックにおける全社的な共用資産 703,980 千円に減損の兆候が認められると判断し、減損判定のための割引前将来キャッシュ・フロー見積り資料を作成している。当監査法人は、会社が作成した割引前将来キャッシュ・フロー見積り資料の合理性を検証する過程において、会社からその仮定の適切性に関する合理的な説明が受けられなかったため、減損損失を認識するかどうかを判定するための十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。
以上から、当監査法人は、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが連結計算書類に及ぼす可能性のある影響が重要かつ広範であると判断した。
その結果、当監査法人は、会社の連結計算書類を構成する数値に重要な修正が必要となるか否かについて判断することができなかった。」
これを読む限りでは、さらに調査と監査を継続すれば、問題を解消できる可能性がありそうにも思えます(1件の工事、1つの共用資産の問題だとすれば)。見切り発車で、とりあえず会社法決算を確定させたということなのでしょうか。もしかすると、金商法監査で、無限定あるいは限定付にまでもっていくことを狙っているのかもしれません。そうでないと、上場廃止の可能性が出てきます。
同じ日に決算発表を行っています。
2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(サンテック)(PDFファイル)
(補足)
ネットの情報によれば、サンテックは、監査人が交代したばかりだったようです。
当サイトでも取り上げていました(→当サイトの関連記事(2023年5月))。
昨年5月10日に、40年以上継続していた東邦監査法人 から清和への交代を開示しています。