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「倒産してしまう」茨城の老舗納豆業者が餌食に 中小企業M&Aの裏で…姿消した悪質業者を直撃【調査報道】(TBSより)

「倒産してしまう」茨城の老舗納豆業者が餌食に 中小企業M&Aの裏で…姿消した悪質業者を直撃【調査報道】

ルシアンという会社による詐欺的M&A問題(→当サイトの関連記事)を取り上げた記事。

老舗の納豆業者が狙われたそうです。

「全国で300万社を超える中小企業。その3分の1が今、高齢化と後継者不足に直面しているといいます。

金砂郷食品の永田社長も後継者を見つけられず、決断したのがM&A(買収と合併による事業承継)。ほかの企業に会社を売り、経営を引き継いでもらうことにしたのです。」

大手仲介会社が勧めてきたのが「ルシアンホールディングス」という投資会社。「約30社を傘下に持つ、多角的な経営をしている会社だ」と説明があったといいます。」

「ルシアン社は納豆製造の経営にはほとんど関心を持たず、まず指示したのが、金砂郷食品の預金約3500万円をルシアン側に送金させることでした。

さらに、毎月の金砂郷食品の売上の一部もルシアン社に送金していたとみられ、そして…

金砂郷食品 永田由紀夫 社長(61)
「社員への給与の遅配とか、社会保険・税金の未納も顕著になった」

“納豆一筋30年”の工場長・木村さんは当時、何が起きていたのか理解できなかったといいます。」

「ついに、ルシアン社の代表や取締役と連絡が取れなくなり、行方すらわからなくなりました。

結果として、契約時に永田社長に支払われることになっていた3600万円は支払われることはないまま。会社の借入金の連帯保証も、永田社長からルシアン社側に移されるはずでしたが、永田社長につけられたままでした。

結局、永田社長は株式を買い戻し、社長に復帰。地元の銀行や取引先の協力を得て、何とか再建に漕ぎ着けました。」

ルシアン社の幹部にも話を聞いていますが、「自分は利用されていた」と言い訳しているそうです。

「ルシアン社 現役幹部
「(代表は)新しく買う会社を探してくるばかりの人。『これ買収したから。これ買収したから』と会うたびに言っていた。実際には私腹を肥やすためだけの会社だった」

この幹部は代表らにだまされ、約3億円の債務を背負っているということです。」

専門家にもインタビューしています。

「中小企業の経営に詳しい専門家は、今回の問題は「氷山の一角」と指摘します。

神戸国際大 経済学部 中村智彦 教授
「会社を今まで長年経営されてきた方でも、M&Aに関しては素人で信じてしまう。(買収する企業は)最初からその会社を助けるつもりなんか全くない。(今回の問題は)要するに吸血鬼のような、『吸血型のM&A』だ。本来だったら残るはずだった企業が、残るどころか吸われたカスみたいになってポイッとされる」」

大手仲介会社の役割にもふれています。上場している仲介業者のようです。

「一方、取材を進めると気になったのが、ルシアン社側から企業の紹介依頼を受け、ルシアンに対して金砂郷食品を紹介した、間に入っている大手仲介会社の責任です。

金砂郷食品の永田社長は今回、上場している大手仲介会社にルシアンを紹介されて売却を決めたと証言しています。仲介会社はルシアンの実態を知らなかったのか、また調べなかったのか、疑問が残ります。

この仲介会社に取材をしたところ「個別の案件には答えられない」と回答しています。しかしルシアンの被害に遭った企業の多くは、仲介会社の責任を問いたいと悲痛な声を上げています。」

小説家のコメント。

「小説家 真山仁さん:
そもそも仲介会社は、M&Aを仲介するだけが仕事です。買う側も売る側も、それぞれ専門家を独自で雇ってやらなければいけませんが、お金がかかるので、そこを全部仲介会社に依存しているところに問題があります。」

仲介会社の実名も出せばよいのに...

落ち度がないのなら、そのように反論すればよいでしょうし、大手仲介会社の紹介でもひどい目に遭うことがあるという警告になるでしょう。

同じ学者のコメントを長めに引用しています。

「まさに吸血型M&A」高齢化に後継者不足…悩める経営者を狙って資金吸い上げ 悪質“買い手企業”に専門家「素人の手口とは思えず」【調査報道】(TBS)

「—後継者がいない理由は。

「一般的に、苦労してきた親の事業を継ぎたくない、という心理がある。私が見聞きしたケースだと、代替わりを迎えた創業者の子供達は、就職氷河期を経験してやむを得ず家業に入らざるを得なかった世代が多くを占める。二代目、三代目が『後を継ぐか?』と聞かれた時に、『自分はこれがやりたかったんだろうか』と悩んで、事業承継を断る」

—創業者の心理は。

「『それでも従業員の生活を守らないといけない。事業を存続させたい』という気持ちがある。黒字であればなおさらだ。そのタイミングで、M&A仲介会社から積極的な営業をかけられたり、ダイレクトメールが来たりする。そうすると、『渡りに船だ』とばかりにM&Aに踏み切ることになる」

—ルシアン社の手口は。

「ルシアン社の場合は、仲介会社を通じて中小企業を買収し、まともに経営に取り組むどころか、契約を守らずに、株式の譲渡金を払わなかったり、負債を創業者に押しつけたり、あげくの果てに倒産に至ったケースもある。吸い取ったカネで、他の企業を買収し、更に巨額のカネを吸い取ろうとする。昆虫の「タガメ」が、活きのいい魚から血や栄養を吸い取る。標的がボロボロになったら次の魚を狙う。そんな比喩が一番当てはまる。まさに吸血型M&Aだ」

—吸血型ですね。関係者によると、ルシアン社が買収した企業は37社にのぼる。

「芝居のようなやり口だ。台本を書いて、それぞれが役者として振る舞う。素人の手口とは思えない。関係者から、ルシアン社以外の企業も問題を起こしているケースをいくつも聞いている。ルシアン問題は氷山の一角に過ぎない。私の肌感覚では1割から2割のM&Aはまともに行われていないと思う」

—M&A仲介会社はルシアン社の問題を把握していたのか。

「個別のケースは分からない。しかし、把握しているのであれば当然伝えるのが誠実なビジネスのやり方だろう。仮に知らなかった場合でも、『知りませんでした』『免責条項があるから責任は負いません』では済まされない。買収された企業には従業員の生活、地域での歴史、積み上げてきた信頼がある。健全な中小企業を詐欺的な行為で失うことは地域の経済の衰退を加速させる危険性を孕んでいる」」

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