東芝の「特設注意市場銘柄」指定解除は、日本取引所自主規制法人の理事の間で意見が割れていて「薄氷の可決」だったという記事。
「公表した最終表決の結果は賛成6反対1。全会一致の慣例は初めて崩れたものの、東芝の上場維持への賛成票は圧倒的な多数だった。
だが実際は薄氷を踏むような可決だった。2人の社外理事が採決直前の討議で「解除に反対」と明言していたのだ。自主規制法人は4人いる社外理事の過半数が賛成しないと可決できないルールを定めている。2人が反対姿勢を貫けば、特注解除は否決されていた。」
「「内部管理体制が本当に改善したのかもう少し様子をみたい」。反対派理事の意向は前日までに事務局に伝わっていたが、佐藤理事長は当日の説得に懸けたようだ。「このままでは何も決められず、責任を果たせない」。佐藤理事長が翻意を迫ると、土壇場で1人が条件付き賛成に回った。
「上場維持の結論が正しかったかどうかは分からない。時間の経過とともに判明する」。社外理事の一人、京都大学の川北英隆名誉教授はブログで明かした。その苦悩は特注制度の限界も示す。」
佐藤理事長は金融庁の天下り(元金融庁長官)ですから、役所の圧力(あるいは役所への忖度)があったのかもしれません。
「更生を促しながら市場に混乱を招かないためにはどうすればいいのか。上場維持と廃止の二択ではなく「改善度合いを事後監視する制度を導入すべきだ」(早大法学学術院の黒沼悦郎教授)との声がある。大規模な不祥事であれば改善策の定着に時間がかかる。解除後も定期的に調査に入り、改善状況を公表すれば市場の安心感は高まる。」
「特設注意市場銘柄」にずっとおいておき(その間東証1部上場とかジャスダック上場とか名乗ることができないようにする)、解除してほしければ、会社から申請して新規上場に準じて審査をやってもらい、徹底的に調べた上で、解除するという制度にすべきなのでは。一定期間のうちに、上場廃止にするかどうかの結論を出さなければならないというのは、無理があります。
日経ビジネスの記事によれば、唯一解除に反対したのは会計士協会元会長の増田氏だったそうです。東芝が監査人を長年にわたってだましてきたせいで、監査業界全体が大きな悪影響を被っている、もっともらしい作文を提出しただけで無罪放免にすべきではないと考えたかどうかはわかりませんが、筋を通したのだと思います。
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当サイトの関連記事
日経記事でふれている社外理事のブログより。
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東芝問題の決着と残された課題(川北英隆のブログ)
「第2点。東芝には、「フリーポート社との天然ガスの液化に関する加工委託契約」という爆弾が残っている。詳細は有価証券報告書を見て欲しい。最大「1 兆円に近い損失が発生するリスクを抱えている」。その他、損害賠償に関する訴訟も抱えている。」
東芝上場維持の判断への批判(同上)
「何故、10月初旬だったのか。これには明確な理由がある。
8月10日、東芝は2017年3月末決算に対して監査法人から「限定付き適正意見」をもらい、決算書を公表した。この瞬間、ボールが自主規制法人に投げ返されたことになる。
その後、2週間ほどかけて、自主規制法人はその決算書と監査法人の「限定付き適正意見」の背景を分析した。東芝にどの程度の責任があるのかの分析である。次の1ヶ月間は、これまでの分析の総まとめに費やされた。膨大な資料と審議過程があるから、(直接作業をしていない者から見て)1ヶ月の時間は仕方ないのではと思う。その後の2週間を使い、理事の間での意見交換を急ぎ行い、臨時理事会を開いて結論を出した次第である。ボールが手に渡ってから、大急ぎで、しかし慎重に結論を出したのではないだろうか。」
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