厚生年金基金制度廃止の方針に関連して、厚生年金基金の問題点と今後どのような問題が起こり得るかを取り上げたコラム記事。
まず「代行」制度を強く批判しています。
「「代行」とは、厚生年金基金が、厚生年金本体の資産の一部を、厚生年金本体に「代わって」運用する仕組みだ。したがって、厚生年金の運用で得られるはずだった利回りと、実際に運用した利回りとの差が、厚生年金基金にとっての損益になる。
多くの厚生年金基金にあって、運用資産中に代行による資産が過半を占める。代行は、実質的に厚生年金からお金を借り入れて、自分自身の企業年金資産と共に運用しているわけだから、厚生年金基金は、それ自身がヘッジファンドのようなリスクの取り方をしているとも言える。
代行部分に要求される利回りは、当初は固定的な厚生年金本体の予定利率(年金の想定運用利回り)だったが、現在は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する厚生年金本体の利回りをターゲットとすることになっている。
低金利のなか、現在の方式は、固定的な予定利率を要求されるよりもましだが、厚生年金基金は、この動く運用目標をターゲットに、「他人のお金」で膨らんだ運用資産を運用している。」
これは企業にとっては大きなリスクなので(また、退職給付会計も後押ししたのでしょう)、大企業を中心に「代行返上」で早めに逃げ出したわけですが、まだかなりの企業がとり残されてしまいました。
「厚生年金基金およびその母体企業に代行部分を返還できる十分な財務的体力がなかった基金が、悪化した資産状況のままで基金運営を継続した。残った基金は、中小企業が業界単位などで多数集まって基金をつくった「総合型」の基金が多かった。
年金財政が悪化し、母体企業の体力が乏しく、また多数の企業が関わるため、合意形成が難しくて身動きが取れない状態で「取り残された」彼らの中には、資産運用による状況の回復を求めて運用で大きなリスクを取る者もあった。
これで、ますます深手を負った基金もあったし、注意の足りないいくつかの基金はAIJ投資顧問のような悪徳業者に引っかかった。」
年金基金廃止となれば、廃止までの期間に危険な運用をする基金が出てくるかもしれないと注意喚起しています。
「損失負担の問題とも関わるが、仮に、解散時点での代行部分に生じた損失の全部ないし一部を国が補填してくれることになれば、(部分的にせよ)国にリスクを取らせた形でハイリターンを目指して、大きなリスクを取る基金や母体企業が現れてもおかしくない。
こうしたモラルハザードを意図的に実行しないまでも、残された時間の中で、運用でリスクを取って損を取り返す可能性に賭けたいというのは、起こりやすい心理状態ではないか。」
重罪の天下り理事 欠陥無視して甘い汁! 廃止の厚生年金基金(夕刊フジ)
当サイトの関連記事(厚生年金制度廃止について)
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事