「破産です。給料は払えません。即時解雇です」 船井電機が破産手続き 突然の知らせに従業員2000人は(動画あり)
船井電機の倒産(→当サイトの関連記事)で、従業員が即日解雇されたという記事。
「大阪の電機メーカー「船井電機」が、破産手続きの開始決定を受け、全従業員およそ2000人を解雇したことが分かりました。
突然の知らせに、従業員からは驚きの声が上がっています
「破産です。給料は払えません。即時解雇です」
24日、突然の解雇通知を言い渡されたのは、大阪府大東市に本社を置く「船井電機」の従業員です。
25日は給料日でしたが、まだ支払われてないということです。」
「24日、急遽説明会が開かれ、従業員に解雇が伝えられました。
労働組合関係者によると、解雇されるのは、全従業員およそ2000人だということです。
突然の決定に従業員は…
「突然そうなるとは思わず、驚いた。あっという間に終わってしまった」
船井電機に17年勤め、けさ、私物を取りに来た男性は…
「みんな、怒ったりするのではなく、静かに受け入れた。自分もそうだった。あと数年、数ヶ月はもつと思ってた」
破産手続きの開始決定を受け、25日、本社には取引先も訪れていて、影響が広がっています。」
事業不振で倒産することはあるにしても、これはひどすぎる...
こちらの記事も従業員に話を聞いています。
船井電機破産、嵐の一日 解雇された社員「不穏な伏線は夏ごろに」(朝日)(記事の一部のみ)
「24日は嵐のように過ぎた。
「食堂に集まってください。説明があります」。午後1時半ごろ、社内放送が流れた。開始まであと15分くらいだった。集まったのは500人ほど。破産管財人に選ばれた片山英二弁護士のほか、同社の人事部門や管理部門の幹部らが出席し、説明が始まった。
「裁判所から破産の開始決定が出された」「残念ながら本日をもって解雇せざるを得ない」
弁護士の言葉に頭が真っ白になった。」
「翌25日に振り込まれるはずだった10月分の給料も、予定通りには支給できないことも伝えられた。退職金は基金から支払えるとのことだった。
なぜ破産の決断をしたのか。幹部からは「いろんな人が会社のお金を抜く行為も起こっていた。それは止めるべきで、伝統ある会社をぐちゃぐちゃなまま閉めてはいけない」との説明もあったという。」
非上場とはいえ、「会社のお金を抜く行為」が本当にあったのなら、責任追及すべきでしょう。
信用調査会社の記事。
倒産・注目企業情報 船井電機(株)(東京商工リサーチ)
「1980年代からは映像関連や生活家電の製造にも参入し、1990年代には米ウォルマート社との取引を開始して業容を拡大した。2000年3月には東証1部(当時)に上場した。
特に北米での高いシェアを誇り、「世界のFUNAI」と呼ばれ、2005年3月期には単体売上高3535億9200万円をあげた。」
これが一番良い時期で、その後は競争激化で業績は低迷したそうです。
「2017年に創業者の船井哲良氏が死去。事業承継を模索するなかで2021年5月、(株)秀和システムホールディングス(江東区)が株式公開買付を実施して、同社の完全子会社となり、2021年8月26日に上場を廃止した。その後、秀和システムホールディングスの親会社である(株)秀和システム(江東区)の傘下となり、2023年3月末に当社へ事業を移管し、船井電機は船井電機・ホールディングス(以下、船井電機HD)へ商号変更し、中間持株会社となった。さらに同年4月、船井電機HDは脱毛サロン運営の(株)ミュゼプラチナム(東京都港区)を買収した。
しかし、2024年3月に、本社と東京支店の不動産(いずれも船井電機HD名義)に対して、創業家より100億円を超える根抵当権の仮登記が設定されていることが判明。また5月に役員構成が入れ替わるなかで、当社より明確な説明がなされず、信用不安が高まった。さらに、ミュゼプラチナムはネット広告企業に対する債務約22億円の支払いが滞る事態も発生。債務を連帯保証していた船井電機HDが保有する当社株式に対する株式仮差押が申し立てられ、5月2日に仮差押決定の発令を受けた。
10月3日に経営体制の刷新が発表されたものの、支払遅延が発生するなかで材料仕入なども困難となり、今回の事態となった。」
業績不振が背景にあるとしても、こういう形で倒産するというのは、事業承継の失敗だったのでしょう。
また、最近中小企業のM&Aトラブルが注目されていますが、上場会社をターゲットにした買収も監視が必要でしょう。今回のケースでは、買収資金を出した銀行が、監視すべきだったのでは。
倒産前の記事ですが...
船井電機の先行きは不透明に…株式は仮差し押さえ、上田智一社長が不可解な辞任(Yahoo)(日刊ゲンダイ配信)
「91年にアメリカに進出し、テレビの販売を開始。中国で生産されたVHSデッキを内蔵したフナイの激安「テレビデオ」は、市場を席巻した。2000年には船井哲良氏は日本人として初めて米国版長者番付であるフォーブスの「Billionaires」に名前が載ったほどだった。」
「だが、2010年代以降、中国・台湾メーカーとの競争が激化し、フナイの激安テレビデオをもってしても利益を上げられなくなった。さらに16年にフィリップスの家電事業買収が破談となり、175億円の違約金を支払うことになった。船井電機は特別損失を計上するなど2年続けて赤字に転落。3年間に社長が3度代わるなど、経営が混乱した。
その混乱のただ中の17年7月、創業者の哲良氏が死去。相続した長男の船井哲雄氏(医師、旭川十条病院院長)は、船井電機顧問の板東浩二氏(元NTTぷらら社長)の仲介により、出版会社、秀和システムグループ代表の上田智一氏に経営を託した。上田氏は21年5月に船井電機をTOB(株式公開買い付け)で買収し非上場化、同年7月に船井電機の社長に就いた。」
経済評論家に話を聞いた記事。
北米シェア1位だった船井電機、なぜ破産?ミュゼプラチナム買収が致命傷(Business Journal)
「「...実はこの時期、脱毛サロン大手がつぎつぎと経営破たんする状況が続いていました。17年にエターナルラビリンスが、22年に脱毛ラボが経営破たんし、船井電機がミュゼを買収した23年の年末には業界大手の銀座カラーまでが破たんに追いこまれています。ミュゼも同様に経営が苦しく、巨額のネット広告費が未納になりネット広告会社から訴えられます。ミュゼ株を売却した船井電機HDはミュゼの20億円ともいわれる負債について連帯保証をしていました。
最終的にこの10月にネット広告会社が船井電機HD株の大半を差し押さえることを東京地裁が決定しました。その前月に上田社長は退任し再建の道を探っていたのですが、支払い不能と判断され取締役会の決議を経ずに準自己破産にいたったのです」(鈴木氏)」
当サイトの関連記事(船井電機を取り上げた雑誌「FACTA」の記事などについて)(←当サイトでは前代未聞の数十万件の閲覧がありました。)
準自己破産とは? メリット・デメリットや必要な手続きを解説(ベリーベスト法律事務所)
「法人については、法人自身(=債務者)と法人の債権者が破産手続開始の申し立てをすることができます(破産法第18条第1項)。
さらに法人については、以下の者による「準自己破産」の申し立てが認められています(破産法第19条第1項、第2項)。
① 一般社団法人または一般財団法人
→理事、清算人
② 株式会社または相互会社
→取締役、清算人
③ 合名会社、合資会社または合同会社
→業務を執行する社員、清算人
※上記以外の法人についても、理事や清算人などは準自己破産の申し立てが可能(破産法第19条第4項)」
(再掲)事業報 告 事業年度 2023 年4月 1日から(第 72 期) 2024 年3月 31 日まで(船井電機・ホールディングス株式会社)(PDFファイル)