会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「粉飾分析官」が挑戦状、弱腰監査法人にNO(日経産業より)

「粉飾分析官」が挑戦状、弱腰監査法人にNO(記事冒頭のみ)

会計評論家の細野祐二氏(キャッツ事件の元会計士)が主要企業の財務諸表を分析したリポートを紹介した記事。

「細野氏は公認会計士時代のノウハウに基づき、企業が財務諸表で公表している「キャッシュフロー(現金収支)」や簿外債務など計78項目を取り上げ、独特の重み付けで評点した。「0」が最も安全を示す最高点で、最低点は「マイナス455」。

マイナス48点で「警戒」となった日揮は、プラント受注の落ち込みで不採算の受注残が増えているうえに工事の利益率が急降下している。稼ぐ力を示す営業キャッシュフローは直近の3カ年はずっと赤字。これは100社で1社だけだった。

3000億円を超える利益剰余金があるため、当面は「資金繰りに行き詰まる事態にはならない」(細野氏)。だが、赤字受注が数年先に実際の損益に反映される可能性があるという。

ソフトバンクと電通の2社は海外企業の買収で生じたのれん代が問題視された。

マイナス105点のソフトバンクは米携帯電話会社のスプリントを2兆円強で買収した。のれん代(買収金額と買収会社の純資産額の差額)に約2700億円を計上し、買収価額を上回る無形資産約5兆3000億円を引き継いだ。スプリントは2017年までの4事業年度でずっと最終赤字なのに、ソフトバンクは「のれん」の減損をしていない。「超過収益力の裏付けがなく、のれん代と無形資産の全額について資産性を認めることはできない」(細野氏)

16年に3兆円強の巨費を投じて買った英半導体会社、アーム関連の約3兆3500億円に上るのれんと無形資産についても「それに見合う超過収益力の裏付けがなく資産性に疑義がある」(同氏)。」

「マイナス78点の電通も海外企業の買収絡み。同社は13年に英社、16年には米社を買った。電通は16年12月期に計1兆円近くののれんと無形資産を計上しているが、そのうち約9200億円に超過収益力の裏付けがなく、資産性が認められないという。」

ソフトバンクは、アリババ集団とヤフーの巨額含み益で信用力が支えられているそうです。

細野氏の見立てが当たっているかどうかはわかりませんが、M&Aで急速に会社規模が大きくなると、今までの数字との比較が難しくなり、実態が見えづらくなるということはあるのかもしれません。

青山学院大の町田教授のコメント(監査人への期待を込めたもの?)もあります。外部から不正というのは乱暴と、やや批判的です。

「IFRSが役割を果たすには、独立した第三者である専門の監査人(監査法人)が厳格な判断をすることが大前提だ。会計に詳しい青山学院大の町田祥弘教授は「細野氏の主張の焦点はまさにこの点で、『監査が甘いのではないか?』と挑戦しているに等しい」と指摘する。これは細野氏が「監査法人は企業から高額の監査報酬を受けているから、顧客と対等な立場でモノを言えない」という主張と重なる。

減損の是非を判断するには経営者への聴取も含めて将来利益を予想しなければならない。町田教授は「実際、専門能力があり独立した立場にありながら、企業の内部に立ち入って事業をみられる監査人だけが判断できる。監査人が適正だとした判断を疑う合理的根拠を我々は持ち合わせていない」と話す。」

「町田教授は細野氏の手法を「財務諸表の分析でもかなりのことがわかるのは確かだが、事業の詳細や将来計画までは外部から知り得ない。圧倒的に情報が不足している外の人間が『不正』と言うのは乱暴な議論だ」と指摘する。」
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