会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

公安の逮捕も地検の起訴も「違法」認定…「大川原化工機」の国賠訴訟、都と国に賠償命令(読売より)

公安の逮捕も地検の起訴も「違法」認定…「大川原化工機」の国賠訴訟、都と国に賠償命令

「大川原化工機」の経営者が不当逮捕・起訴された問題の国家賠償訴訟で、警察・検察の違法行為が認定され、賠償が命じられたという記事。

「判決は、公安部は逮捕前の段階で、機械の設計担当だった相嶋さんらから「機械内部に温度が上がりにくい箇所があり、菌を死滅させる温度に達しない」と聞いていたのに、改めて温度を測る実験を行わなかったと指摘。「実験していれば、殺菌できる温度にならないことは容易に明らかにできた。社長らに嫌疑があるとした判断は合理的な根拠に欠け、漫然と逮捕したことは違法だ」とした。

さらに、担当検事についても、温度に関する社員らの主張を起訴前に把握していたと認定。「有罪立証に必要な検証をせず、違法に起訴した」と結論付けた。

判決は、公安部の警察官が島田さんに対し、「殺菌」の意味をあえて誤解させて供述調書に署名させた点も、「偽計を用いた取り調べで違法だ」と認定した。訴訟では、捜査を担った公安部の警部補が証人尋問で事件を「 捏造 」と述べたが、この証言への言及はなかった。」

不正輸出めぐるえん罪事件 捜査は違法 国と都に賠償命じる判決(NHK)

「27日の判決で東京地方裁判所の桃崎剛裁判長は、警視庁公安部が大川原化工機の製品を輸出規制の対象と判断したことについて、「製品を熟知している会社の幹部らの聴取結果に基づき製品の温度測定などをしていれば、規制の要件を満たさないことを明らかにできた。会社らに犯罪の疑いがあるとした判断は、根拠が欠けていた」として違法な捜査だったと指摘しました。

逮捕された1人への取り調べについても、調書の修正を依頼されたのに、捜査員が修正したふりをして署名させたと認定し、違法だと指摘しました。

また検察についても、起訴の前に会社側の指摘について報告を受けていたことを挙げ、「必要な捜査を尽くすことなく起訴をした」として、違法だったと指摘しました。

勾留中にがんが見つかり、亡くなった相嶋静夫さんにも触れ、「体調に異変があった際に直ちに医療機関を受診できず、不安定な立場で治療を余儀なくされた。家族は、夫であり父である相嶋さんとの最期を平穏に過ごすという機会を、捜査機関の違法行為によって奪われた」と、被害の大きさについて指摘しました。」

日経でさえも朝日みたいな社説を書いています。

[社説]冤罪生んだ違法捜査の検証を(日経)

恣意的な捜査で無実の人を長期間勾留する。民主的な法治国家で起きたことなのか、耳を疑う。判決が捜査機関の責任を指弾したのは当然である。」

「日本の刑事司法について、長期間身柄を拘束して自白を迫る「人質司法」が問題視されて久しい。今回は典型的な例だろう。

顧問の男性は勾留中にがんと診断されたが保釈は認められず、名誉回復の機会がないまま亡くなった。重大な人権侵害だ。この点も真摯な反省と検証が求められる。」

こちらの記事によると、最初から事件は捏造だったようです。

公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決
冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める
(東洋経済)

「大川原化工機を立件したのは警視庁の公安部外事1課。捜査を指揮したのは宮園勇人警部だ。

「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された。“あるべきではないところ”というのは、後からわかったことだが宮園警部の作り話である。」

「宮園警部は東京地検に逮捕の1年半前から相談。塚部貴子検事は同じく9カ月前から継続的に宮園警部から相談を受けていた。

「塚部検事は深く長く、事件の真相を知りうる立場にいた」(高田弁護士)。大川原社長らが逮捕されたのち、「5人の従業員が『装置に残った菌は殺すことができません』と言っている」と別の検事から聞いても、塚部検事は「従業員の供述は変遷している」とし、意に介さなかった実際の装置を見ることもなく、3人を起訴した。

ところが東京地検は初公判の4日前に「大川原化工機の噴霧乾燥器が規制対象であることの立証が困難」として起訴(公訴)を取り消した。取り消した当日は、公安部と経産省とのやり取りを記した大量の捜査メモを東京地裁に提出する期限日だった。」

会計士・監査法人業界には全く関係のない事件かといえば、そうではないでしょう。上場企業の不正会計を取り締まっている証券取引等監視委員会のトップは検察上がりです。人質司法、事件捏造の毒が回っていないとは限りません。

もちろん、不正会計摘発の多くは、監視委の調査が入る前に会社側が自主的に有報などを訂正したり、調査後であっても、一応納得したうえで、訂正しているケースがほとんどでしょうから、冤罪はまれでしょう。

しかし、日産ゴーン事件(これも最初の逮捕は有報虚偽記載事件でした)は、いきなり逮捕で、長期拘留が行われています。容疑も薄弱で、冤罪と言ってよいと思います。仮に虚偽記載だとしても、いきなり逮捕は、他のケースとのバランスからいってもありえません。

そのほかにも、最近の事件では、すてきナイスグループの虚偽記載事件で、第一審の有罪判決が高裁で取り消され、差し戻されています(→当サイトの関連記事)。

いくら監視委に専門家が大勢いて、理屈に合わないことはしないはずだといっても、検察主導の事件では、でっちあげであっても、検察に協力させられるのでしょう。逆に、東芝のように明らかに粉飾である場合も、検察が消極的な場合には、刑事告発が見送られます。

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