会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝監査をめぐる混乱は、受任したPwCに重大な責任(BLOGOSより)

東芝監査をめぐる混乱は、受任したPwCに重大な責任~「真の第三者委員会」で“東芝をめぐる闇”の解明を

あの郷原弁護士が、東芝監査問題の議論に参戦してきたようです。

見出しで言っている東芝の監査をあらたが引き受けたこと自体を批判している部分より一部抜粋。引き受けた時点ですでに、第三者委員会による責任追及が不十分であることや、米子会社で巨額の減損処理を行なった事実を隠していたことや、デロイトから「監査法人対策」の指導を受けていたこと、つまり東芝が油断のならない会社であることはわかっていたのではないかといっています。

「...PwCが東芝の会計監査を受任した2016年3月末の時点で、「最低限の信頼関係」が作れる見込みはあったのか。PwCはなぜ東芝の会計監査を受任したのか

その時点においても、東芝には、一連の会計不祥事に関して、監査法人に対して悪質な「隠ぺい」を行った疑いが指摘されていた。東芝は、会計不正の疑いが表面化したことを受け、「第三者委員会」を設置し、その報告書公表を受けて「責任調査委員会」を設置して歴代経営者への責任追及について検討したが、それらの一連の「第三者委員会スキーム」では、調査の対象は、原発関連ではなく、調査対象とされた事業の範囲も責任追及の範囲も極めて限定的で、当時の室町正志社長は、責任追及の調査の対象にすらされず、問題の幕引きが図られた。」

「このように、会計監査人の監査法人に対して不誠実極まりない対応を繰り返してきたことが相当程度明らかになっていた東芝の会計監査を、PwCは、敢えて受任したのである。しかも、受任する際には、その時点での東芝の財務諸表や内部統制に問題がないか、事前調査も行ったはずである。その段階で、東芝の監査法人への対応に問題があることに気づかなかったのであろうか。」

この議論の流れで行くと、PwCあらたは、契約時には判断が甘かったものの、遅ればせながら、東芝の本質に気づいて厳しく対応し、「限定付意見」を出したのはやむをえないということになるはずですが、なぜか、東芝や前任の新日本よりの見方になっています。

「今回、有価証券報告書に添付した監査報告書で、PwCは、

工事損失引当金652,267百万円のうちの相当程度ないしすべての金額は、2016年3月31日現在の連結貸借対照表の非継続事業流動負債に計上する必要があった

としているが、その根拠についての記述は、「工事原価の発生実績が将来の工事原価の見積もりに反映されていなかった」などの抽象的なもので、損失計上すべきであった時期も特定されず、金額も「相当程度ないしすべての金額」と曖昧な表現とにとどまっている。2016年3月以前の段階で損失を認識すべきだったとする根拠として十分なものであるのか疑問がある。」

「2016年3月末で会計監査人がPwCに交代することが決まっており、それまでさんざん東芝に騙されてきた新日本としては、その時点で、東芝にたいして、甘い監査で「お目こぼし」などする動機は全くなかった。2016年3月末の段階で、その前年末にS&Wを買収したことによる損失発生の可能性についても、徹底して厳しい目で監査を行ったはずだ。その新日本ですら損失発生の可能性を認識する根拠は見出せなかった。」

「ところが、PwCは、東芝の会計監査を受任した後、2017年度の第1四半期、第2四半期はいずれも、東芝の決算を「適正」と評価しておきながら、2016年12月に、S&W買収による巨額損失が表面化するや、一転して、東芝に対する「不信」を露わにし、2017年3月期の会計報告について「意見不表明」を続ける一方、前任会計監査人の新日本が、2016年3月末の時点で東芝が損失発生の可能性を認識すべきだったのに、見過ごしたかのような主張を始めたのである。」

もし東芝が「会計監査人の監査法人に対して不誠実極まりない対応を繰り返してきた」会社であるなら、今になって、その言い分をあらたの言い分より重視するのはおかしな話です。逆に、受任の時点で東芝の経営が本当に刷新されていたのなら、監査を引き受けたことには問題はないでしょう。議論が破綻しているように感じます。

結論部分では、「「東芝不祥事」の全容を解明するための、東芝執行部からの独立性・中立性が確保された「真の第三者委員会」の設置」が、受け入れられなければ、PwCは会計監査人を辞任すべきといっています。これについては、会計監査人を辞任すべきという点は賛成です。数千億円規模の会計処理誤りを、株主から負託を受けた会計監査人から指摘されたのに、修正しようともしない会社とは直ちに縁を切るべきでしょう。辞任しないと、何か弱みをにぎられているのだろうかと推測したくなります。
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