会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

買い取り側 資金調達に社長株

買い取り側 資金調達に社長株

ビックカメラの不動産証券化の問題はなぜかNHKが最も熱心なようです。

(ビックカメラから)「不動産を買い取った有限会社は、東京・渋谷区の豊島企画という会社から75億5000万円の出資を受けていました。豊島企画は銀行から融資を受けて資金を調達していましたが、この融資の担保に、当時、ビックカメラの社長を務めていた新井隆二会長が保有するビックカメラの株式が充てられていたことが税務調査でわかりました。」

豊島企画の借入についてビックカメラが担保提供していたとしたら、会計士協会の実務指針(会計制度委員会報告第15号)の「譲渡人が譲受人の不動産購入に関して譲受人に融資または債務保証を行っている場合」に該当し(または支配力基準により豊島企画がビックカメラの連結子会社に該当し)、オフバランス処理は難しかったでしょう。

しかし、このケースでは担保提供されているのは経営者(会長)の個人財産であり、譲渡人であるビックカメラが保証を与えているわけではありませんので、それだけであれば問題ないようにも思われます(豊島企画を支配しているのは担保提供により援助している会長であり、ビックカメラではない)。しかし、今回摘発されたビックカメラから豊島企画へのカネの流れがやはり気になります。「譲渡人が譲渡不動産からのキャッシュ・フローや譲渡不動産の残存価額を実質的に保証している場合」に該当していることを隠すために、税務リスクをおかしてまで裏金で還流していたのかもしれません。あるいは、豊島企画の資金コストを実質的にビックカメラが負担していたのであれば、豊島企画の借入は本当はビックカメラが引き受けていた、したがって借入金で購入したビックカメラ店舗不動産の持分の実質的な所有者はビックカメラであったとみることができるかもしれません。

また、証券化された不動産は、昨年ビックカメラが買い戻しています。買い戻し条件が付いていた場合には、オフバランス処理は認められないので、形式的にはそうした条件は付いていなかったのでしょう。しかし、ビックカメラと豊島企画は、いずれも会長の影響下にあるわけですから、実質的に買い戻し義務の履行であっても、形式上買い戻し権の行使や新たな譲渡契約)のように見せることは簡単でしょう(実際にそうかどうかはわかりませんが)(注:譲渡人に買い戻し権が与えられていてもオフバランスは可能)。

共通の支配者である会長の存在まで含めた全体のスキームを見て判断する必要があります。

(繰り返しになりますが、以上、報道に基づく単なる推測であることをお断りします。)
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