会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

グローバル基準という誘惑にご用心 Beware the temptation of global standards

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フィナンシャル・タイムズ紙より、米国のSECが国内企業に国際会計基準の適用を認めようとしていることを批判した論説記事。米国の大学教授が書いています。

SECは国際会計基準を認めることにより、米国企業と米国以外の企業の比較可能性を高めようとしている。これにより、米国企業のなかでも国際基準を適用する企業と米国基準を適用する企業が生じて、国内企業間の比較可能性は損なわれるものの、それは国際的な比較可能性を高めるための合理的な代償だとしている。しかしそうではないというのが筆者の主張です。

But an unstated, higher price is how global comparability in written standards could disguise diversity in practice. Comparability requires uniform standards and uniform application. It would be surprising if people in the 100 countries endorsing international standards achieved uniform application, considering the varying political, economic and cultural environments that exist in the world and absence of any global enforcement authority that could overcome them.

「しかし、明らかにされていないより高い代償は、紙の上に書かれた基準の中のグローバルな比較可能性が、実践における多様性を隠してしまうことである。比較可能性には、統一的な基準と統一的な適用が必要である。世界に存在する政治的、経済的、文化的環境の違いと、グローバルな執行機関の欠如を考えると、国際基準を受け入れている100カ国の人々が、統一的な適用を達成したとしたら、驚くべきことであろう。」

Every important accounting decision requires judgment. People making the judgments do so in local, not global, contexts. Judgments differ between countries to reflect local conditions, such as legal norms; financial market size and scope, ownership concentration, the character and status of the auditing profession and the press, and a government's role in an economy.

「あらゆる重要な会計上の決定には判断が必要である。判断するのは各国のコンテクストの中で判断するのであって、グローバルなコンテクストの中で判断するのではない。法的規範、金融市場の規模と範囲、所有の集中、職業監査人やマスコミの特徴や地位、経済における政府の役割といった各国の状況を反映させるために、国によって判断は異なる。」

Champions of international standards say that converging global markets make uniform global accounting inevitable. Yet divergent accounting will persist, given enduring local diversity. Some believe that adopting uniform written standards can influence local behaviour. While this is possible, it would require a global enforcement authority that does not exist and is unlikely to appear. So the proposals risk misleading investors into believing that nominal uniformity means real uniformity.

「国際基準の提唱者たちは、統合化しつつあるグローバル市場によって、統一的でグローバルな会計が不可避だといっている。しかし、各国の多様性を前提にすれば、会計の多様性は残るだろう。統一的な基準の採用が各国における行動に影響を与えると信ずる者もいる。それはあり得ないことではないが、そのためには、今は存在せず、これからもあらわれそうにないグローバルな執行機関が必要であろう。(国際基準を適用するという)提案には、名目上の統一性が本当の統一性であると投資家を誤解させるリスクがある。」

筆者は米国の投資家の利益を念頭において、比較可能性の面から国際基準の欠点を議論しているようです。日本の状況には必ずしも当てはまりませんが、国際基準に過大な期待をしない方がよいというのはいえると思います。

(本筋とはあまり関係ありませんが、会計に政府が介入した例として日本のことが取り上げられています。When accounting rules required Japanese banks to record big losses on large loans in the 1990s, Japan's government intervened against doing so to avert a national financial crisis. (1990年代、会計ルール上、日本の銀行は債権に対して多額の損失を計上しなければならなかったのに、金融危機回避のため、日本の政府は損失計上させないよう介入した。)海外ではそういうふうにみられているようです。)
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