12月12日に決定された2009年度与党税制大綱の簡単な解説記事。
企業に関係するものでは、まず、中小企業向けの税率引き下げ、繰り戻し還付の対象拡大があります。
「資本金1億円以下の中小企業を対象とする。2009年4月からの2年間に終了する各事業年度に企業が得た所得のうち、800万円までにかかる法人税率を22%から18%に引き下げる。800万円を超える部分には本来の30%の税率が課される。」
「また、赤字に転落した場合、前年度に納めた法人税を戻してもらう制度の対象を、現在の設立5年以内の企業から、すべての中小企業に広げる。」
その他、自動車税の減税も行われます。
「今回の減税では、電気自動車や、電気とガソリンを併用するハイブリッド車などを新車で購入すると、重量税と取得税の全額が免除される。また、燃費性能に応じて、重量税と取得税について本来の税額からそれぞれ75%か50%を差し引いた額を実際の税額とする。」
この記事ではふれていませんが「国際課税」という項目で海外子会社からの配当の益金不算入が挙げられています。
「間接外国税額控除制度は廃止する。内国法人が外国子会社から受ける配当などの額について、内国法人の各事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入しないこととする制度を創設する。」(日経新聞より)
現行制度でも、外国子会社からの配当(外国での法人税課税後の利益から行われる)については、間接外国税額控除により、外国で課税された法人(所得)税は二重課税にならないよう控除されていますが(ただしいろいろな要件はある)、今回の大綱では、外国での課税額(一般に日本より税率が低い)を税額控除しない代わりに、日本の(高い税率の)法人税の対象にもしないということになります。
会計への影響を考えてみると、海外子会社からの配当は、連結ベースの損益では消去されてしまうので、あまり影響はないといえますが、海外子会社の留保利益に対して繰延税金負債を計上している場合(たぶんまれだと思いますが)は、それを取り崩すことができるかもしれません。
いずれにしても、外国税額控除や連結の税効果会計は複雑な領域なので、大綱どおりの改正が行われた場合には、よく検討する必要があるでしょう。
また、海外子会社からの配当を行うということは、子会社の自己資本が減るということですので、子会社に余裕資金がある場合は別として、別途資金を調達する必要が出てくるかもしれません。海外で日本以上に貸し渋りが激しいとすると、そうした財務的な面も考慮しなければなりません。
平成21年度税制改正大綱(自民党のサイトより)(PDFファイル)
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