日本公認会計士協会は、経営研究調査会研究報告第40号「上場会社の不正調査に関する公表事例の分析」を、2010年4月13日付で公表しました。
「公認会計士が社内調査委員会の委員や補助者あるいはアドバーザーとして不正調査業務に関与したり、外部調査委員会の委員として社内調査委員会の調査を監視・監督する業務を要請された場合に参考として利用できるよう、上場会社の不正に関して分析を行ったもの」ということで、不正そのものの研究や会計監査のためというより、あくまで会計士の行うアドバイザリー業務の参考という位置づけです。
分析の具体的な目的として以下の事項が挙げられています。
・不正関与者や不正の発生要因、手口及び不正発覚の発端の分析
・社内で不正調査を実施する場合の組織体制、調査手続、結果報告の方法の分析
・外部調査委員会が設置された場合の組織体制、調査手続、結果報告の方法の分析
・是正措置の策定過程の分析
・分析対象会社30社の不正及び不正調査に関する集計
・不正調査における公認会計士の役割についての検討
事例分析(会社名は実名)がメインですが、最初の方では「不正及び不正調査に関する基本概念」ということで基礎的な知識がまとめられています。
肝心の事例分析では、不正そのものの分析だけでなく、上記の目的に沿って、各事例が比較検討されています。
100ページ以上ある大作ですが、比較的読みやすそうです。
ところで、不正調査については職業倫理の関係でいくつかの問題があります。報告書の最初でも「監査人が監査関与先の財務に関する不正調査委員会のメンバーに就任することは、監査人の独立性に対する阻害要因となる可能性が高いことから、就任すべきでない」とされています。それでは、監査人でない会計士ならいいのかというと、会計基準の適用などの微妙な問題の場合には、監査人が不正だと認めていないことも想定され、セカンドオピニオンとなる場合もあるでしょう。この点についてはあまりふれていないようです。
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