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シャープ「2600億円赤字」を招いた原因に残る疑問 再び連結化した液晶パネル製造会社を巨額減損(東洋経済より)

シャープ「2600億円赤字」を招いた原因に残る疑問 再び連結化した液晶パネル製造会社を巨額減損

シャープの2023年3月期決算の巨額赤字の原因である堺ディスプレイプロダクト(SDP)連結子会社化に関する疑問点を取り上げた記事。

「巨額赤字の直接的な原因は、2022年6月に”再び”連結子会社化した液晶パネル製造会社、堺ディスプレイプロダクト(SDP)の業績不振にある。これによりディスプレー事業などで総額2205億円もの減損損失を計上した。」

「今回の減損処理やそもそもSDPを連結子会社化したことに対して、株式市場からは疑問の目が向けられている。」

SDPに関する経緯。

「そもそも同社は2009年4月にシャープディスプレイプロダクトとして設立された。」

「シャープはSDP株の大部分を2012~2016年にかけて鴻海の創業者、郭台銘(テリー・ゴー)氏の投資会社に売却している。連結業績を安定させるのが目的だった。結果、SDPは過半を握った鴻海の子会社となっていた。」

「その後、シャープは2021年2月にSDP株の完全売却を発表した。ところが「譲受人の強い要望により」、発表からわずか2週間後に売却を撤回。売却予定先については非開示を貫いた。」

「手のひら返しは続く。2022年2月に今度はSDPを完全子会社化すると発表。」

完全子会社化はすごいスピードで進んだそうです。

「シャープは協議開始発表からわずか2週間後の3月4日に株式取得契約を締結した。この間、価格交渉などを行ったという記述は、少なくとも開示資料には存在しない。」

価格決定プロセスについて、疑問を呈しています。

「価格決定の過程も不透明だ。価格の算定を担当した大和証券は、SDPの企業価値を約390億~約780億円と見積もっている。算定数値に2倍の開きがあり、明瞭とは言えない。」

「シャープがSDPを買い戻したタイミングが疑問視されている。公表されている決算によれば、SDPは買い戻し前の2018年12月期から3年間は営業赤字だった。とくに2020年12月期は416億円の営業赤字で、当期損益は会社設立以来最大となる1019億円のマイナスだった。

ところが買い戻し直前の2021年12月期は、新型コロナ禍の液晶パネル需要を受けて業績が改善、93億円の営業利益を計上し、純損益も69億円の黒字だった。業績の増減が大きいことを前提に企業価値を計算すると、結果の幅が大きくなる。」

「結局、シャープはSDPの企業価値を算定結果の中間値である600億円程度と判断。400億円相当の株式を新規に発行、2022年6月に株式交換を実施してSDPを買い戻した異例の再子会社化は発表からわずか4カ月でスピード決着をみた。」

記事でもいっているように、たしかに、せっかく連結から外した赤字会社をわざわざ買い戻した(しかもタイミングがたまたま黒字になった年の直後)という取引は疑問です。

減損損失については、当期の黒字化のために、重荷を減らそうという意図もあったのかもしれません。

(細かい話になりますが、SDPの再子会社化で「段階取得に係る差益」 12,422百万円を計上しています。この利益のために、取引し、高い評価額にしたわけではないでしょうが...)

特別損失の計上に関するお知らせ(シャープ)(PDFファイル)

2023年3月期 決算資料(シャープ)

シャープ株式会社による堺ディスプレイプロダクト株式会社の完全子会社化に係る株式交換(簡易株式交換)による株式取得契約の締結に関するお知らせ(2022年3月)(シャープ)(PDFファイル)(取引の目的、株式交換の交換比率算定など)

シャープ、鴻海とすきま風 前期最終赤字2608億円 液晶のSDP子会社化、株主総会で追及も(日経)(記事冒頭のみ)

「近畿大学の千手崇史准教授は「買収決定に至るまでの審議の過程に著しく不合理な点があったことが明らかになれば、株主代表訴訟に発展する可能性はある」と指摘する。」

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