会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

2024 年 3 月期決算発表延期に関するお知らせ(子会社の過大請求事案の影響)(博報堂 DY ホールディングス)

2024 年 3 月期決算発表延期に関するお知らせ(PDFファイル)

博報堂 DY ホールディングス(東証プライム)のプレスリリース(2024年5月8日)。

2024 年 5 月 13 日に予定していた 2024 年 3 月期の決算発表を延期するとのことです。

「1. 決算発表延期の理由

当社の連結子会社である日本トータルテレマーケティング株式会社は 2023 年 3 月 10 日付で過大請求事案を公表し、2024 年 3 月 27 日付で外部専門家からなる調査委員会から最終となる調査報告を受けましたが、これら過大請求事案の影響を反映した決算数値を確定するには一定の時間を要するため、決算発表を延期することといたしました。」

調査報告書に関する子会社のプレスリリース。報告書も添付されています。

京都市業務の調査報告について(2024年3月27日)(日本トータルテレマーケティング)

「この度、京都市様から受託した新型コロナ感染症のワクチン接種事業における過大請求事案に関して、当社に設置した外部の専門家による調査委員会より、最終の調査報告書を受領いたしました。

調査報告の概要は以下の通りです。

・中間報告後、新たに、過大請求隠蔽のための実働時間数の水増しが判明し、京都市様への過大請求額は消費税抜きの合計で8億5,718万2,064円と算定されました。

・水増し行為には当社の運用部門における複数の社員が関与し、幹部社員も、これを黙認していたとされました。水増し行為は、同部門において特別なことではなくなっていたともされました。

・調査委員会は、幹部社員らが調査委員会に虚偽の供述を行っており、当社が調査に消極的姿勢であること、原資料が改ざんされると、内部通報なしには正しい調査が困難であること等から、同種業務における類似の過大請求等の有無の調査を中止するとされました。

・水増し行為の主な原因は基本的なコンプライアンス意識の欠如等であるとされ、これらを踏まえた早急に行うべき方策として、再出発のための新しい体制を組織し、社内の意識改革に取り組み、過去の不正の清算を行うこと等が必要とのご指摘を受けました。

京都市様に対しまして、信頼を裏切り、多大なご迷惑をお掛けしたことについて、深くお詫び申し上げます。さらに、命と健康を守る公共の事業において重大な問題を生じさせ、京都市民の皆様方、そして国民の皆様方にご心配とご迷惑をお掛けいたしましたことにつきまして、重ねてお詫び申し上げます。」

結局、同種業務の不正については、全く調べていないということなのでしょうか。それでは、幕引きは無理でしょう。

ただし、

「・社員に向け、業務上で過誤や不正に関与した場合でも、その旨を報告した社員には一定の免責を施すことを周知し、社員に過去の不正についての情報提供を求め、事実解明への協力を呼び掛ける
 ・新体制の下に、自前のチームを組成し、社員からの情報提供を受けて、改めて社内調査を実施し、仮に、不正が判明した場合には、関係するお得意先様にご報告を行い、不正の精算を行う」

というような施策は行うそうです。それにしても、これで博報堂 DY ホールディングスの監査人(あずさ監査法人のようです)は納得するのかどうか...

調査報告書より。

こういう理由で同種の不正はなさそうだから、詳しい調査は行わないというのなら、まだわかるのですが、これによると「京都市の業務以外にも広がっている可能性があるといえる状況」で、しかも、「原資料自体が虚偽であったり作出されたりしている可能性がある」のですから、むしろ、徹底的に範囲を拡げて調べるべきでしょう。

それができない、あるいは、やっても無駄であるというのであれば、監査人は、何に依拠して監査意見を出すのでしょう。(監査人が直接調べても、この子会社が協力しないのであれば、有効な手続はできないでしょう。)

重要性があれば、限定をつけるしかないのでは。

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