会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

きらやか銀行のじもとHD、「国有化」決定 株主総会開催(日経より)

きらやか銀行のじもとHD、「国有化」決定 株主総会開催

東北の2つの銀行を傘下に持つじもとホールディングス(HD)が、株主総会を開き、「国有化」を決めたという記事。

「東北が地盤のきらやか銀行と仙台銀行を傘下に持つじもとホールディングス(HD)が20日、仙台市で株主総会を開いた。国が持つ優先株の無配を報告し、再び配当ができるまで国が議決権の63%を保持する事実上の「国有化」状態が固まった。

国が筆頭株主となることで、じもとHDの人事や資本政策に影響力を持つ。」

過去の公的資金の注入に伴い、国に優先株を発行していましたが、決められた配当ができない場合には、優先株に議決権が発生するようになっていたそうです。

ところが、今回の総会で優先株への配当が議案となっていませんでした。

「じもとHDが無配を決定した背景には、2024年3月期の連結最終損益で234億円の赤字に陥った経緯がある。傘下のきらやか銀が単体で244億円の最終赤字を計上したことが響いた。同行は融資先の倒産などが相次ぎ、貸倒引当金を大幅に積み増していた。」

主要株主及び主要株主である筆頭株主並びに親会社以外の支配株主の異動に関するお知らせ(じもとホールディングス)(PDFファイル)

整理回収機構は、議決権の過半数を所有するものの、親会社ではないそうです。

「株式会社整理回収機構は、当社の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配している状況にはなく、また同社による議決権の行使は当社を支配することを目的としているものではないことから、当社の親会社には該当いたしませんが、当社の株主総会における議決権の過半数を所有することとなったことから、同社が親会社以外の支配株主に該当することとなったものです。」

なお、同社の有報は6月20日提出ですが、監査報告書は6月19日の日付となっています。

後発事象を見てみると...

4月と5月の取締役会の決定が後発事象ということのようです。

ちなみに、KAMは「貸出金等に対する貸倒引当金算定の基礎となる債務者区分の判定の妥当性」でした(連結)。

この国有化に関し、金融庁に批判的な記事。

東北の「きらやか銀行・じもとHD」、234億円の大赤字で「痛すぎる国有化」の全内幕…金融庁も想定外「公的資金を一年足らずで食いつぶす」まで(現代ビジネス)

きらやか銀行は、3度にわたり計480億円の公的資金による資本注入を受けていたそうです。

「...金融庁は、国有化回避に向けて賭けに出た。2023年9月に実施した3度目の公的資金180億円の投入がそれで、表向きはコロナ禍で打撃を受けた中小企業への資金供給の円滑化が理由だが、実際は、1年後に期限を迎える公的資金200億円の返済を確実に行わせる思惑だった。

公的資金の借り換え」との批判を交わすため、新たな注入額を返済額よりやや少なめにしたほか、じもとHDと資本・業務提携するネット金融大手、SBIグループにも20億円弱を追加出資させ、「官民協調」の地域金融の円滑化支援の構図を描いていた。」

「にもかかわらず、じもとHD・きらやか銀行は1年も経たないうちに、新たに注入された公的資金も食い潰しただけでなく、あろうことか、9月の返済期限延長まで申し入れてきたから堪らない。

金融庁は「意図せざる国有化」を受け入れざるを得なくなり、栗田照久長官(1987年旧大蔵省)や伊藤豊監督局長(1989年同)ら首脳陣は「どうせなら2024年3月期に思い切った損失処理を断行させろ」と現場に指示したという。

これが当初、17億円の黒字を見込んでいた、じもとHDの2024年3月期決算が一転して234億円の巨額赤字に陥った顛末だ。」

金融庁にいわれて赤字決算にするというのも情けない話です。そもそも、金融庁にそんな権限があるのか...

金融庁や森元長官の悪口も書いています。

「「理想主義者の長官の下、『金融育成庁に変身する』などとうたって、銀行が抱える不良債権を厳しく査定する検査局を廃止したのが失敗だったのではないか」

金融庁内では今、こんな悔恨の言葉が漏れ聞こえる。「理想主義者」とは、2015〜2018年の3年間も長官を務め、当時の安倍晋三政権に重用された「史上最強の金融行政トップ」森信親氏(1980年旧大蔵省)のことだ。」

「地銀も含む金融機関に対しては、厳格な貸出資産の管理よりもリレーションシップ・バンキング(リレバン、地域密着型金融)による地域経済の活性化への貢献や、真にニーズに合った投資商品を提供する顧客本位の業務運営を促した。

金融行政の大転換の総仕上げとして、金融庁は2018年7月に検査局を廃止する大胆な組織改正を断行。翌2019年12月には、銀行の融資管理の手引書だった金融検査マニュアルも廃止した。

検査官は監督局に移り残ったが、各行に立ち入って不良債権の見積もりが妥当かどうかを検証する「資産査定検査」は行われなくなった。」

「だが、副作用も大きかった。検査官による金融検査マニュアルに基づく統一的な目線での貸出資産の査定が行われれば、不良債権を多く抱える「落第」地銀を早めに炙り出せたが、それができなくなった。

正常債権か不良債権かという分類が銀行任せにされた結果、地銀の中には収益確保などの思惑から自己査定を甘くして貸倒引当金を十分に積まないケースが出てきた。実際、きらやか銀行は2024年3月期にこれまで「正常債権」と分類してきた融資が200億円以上も減少、その分、不良債権が膨らみ、貸倒引当金の大幅な積み増しを迫られて進退極まった。」

「リーマン・ショック後の旧民主党政権下の2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」をきっかけとした地域企業支援優先の流れも、金融規律を失わせるモラルハザードを招いた。

返済期限を延長しても機械的に不良債権に分類しなくて済むようにしたことから「モラトリアム(返済猶予)法」と異名された円滑化法は2013年に失効したが、その後、自民党に政権交代しても状況は変わらず、コロナ禍では担保も保証人も不要の「ゼロゼロ融資」が大々的に展開されるなど、永田町では「企業を決して潰すな」との風潮が広がった。

選挙の支持基盤である地元企業を守りたい政治が主導したものとは言え、霞が関で影響力を高めたい金融庁もこれに便乗した。」

会計の観点からは、検査マニュアルが廃止されようが、会計基準がしっかりしていて、監査人も厳格に監査していれば、関係ないはずですが、ながらく実質的に検査マニュアルが基準化していたようですから、マニュアル廃止で、現在は基準が空洞化している状態なのかもしれません(現在の実務を知らないので推測ですが)。

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