会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

傾斜マンション建て替え390億円 三井不、負担配分は先送り (日経より)

傾斜マンション建て替え390億円 三井不、負担配分は先送り

三井不動産が傾斜マンション問題で、建て替え費用などの見積もりができているにもかかわらず損失計上しなかったという記事。

「横浜市都筑区の傾斜マンション問題で、三井不動産は11日、建て替えなどにかかる費用が総額約390億円になるとの見通しを発表した。」

「マンションの管理組合は9月、傾いていない3棟を含む全4棟の建て替えを正式に決めた。これに伴い、三井不動産は費用総額を算定。将来的に支払いの義務が発生する恐れがある「偶発債務」として決算添付資料の注記事項に記した。費用には建て替えのほか、住民への慰謝料や仮住まい費用を含む。

慰謝料として支払い済みの約21億円など、390億円のうち既に発生した一部費用に関しては、2016年4~9月期から貸借対照表の流動資産に計上した。

総額390億円のうち今後発生する費用については、いったん三井不動産が負担し、その後、施工者である三井住友建設や日立ハイテクノロジーズ、旭化成建材に全額を請求するとしている。ただ4社の主張には隔たりがあり、協議次第で三井不動産も一部費用を負担する可能性がある。

負担配分が決まった段階で、各社はそれぞれの負担額を特別損失に計上する。協議は長引く見込みで、損失計上は来期以降になる可能性が高い。」

顧客に対する義務の存在はほぼ確定しており、またその金額の見積りもできているのに、偶発債務なのでしょうか。見積りができていないのは、ゼネコンらに求償できる金額の方であって、債務の方ではありません。

2017年3月期第2四半期決算 最新決算資料(三井不動産)

「当マンションについては、施工会社である三井住友建設株式会社より杭施工時に施行記録のデータの転用・加筆等が行われたとの報告書を受領し、また、杭の一部が支持層に未達であること、当マンションが建築基準法違反であることが確認されております。このため、レジデンシャル社は、上記合意書に基づく当マンションの建替え費用、建物工事期間中の仮住まい費用等発生費用のすべてについて、施工会社である三井住友建設株式会社並びに杭施工を行った株式会社日立ハイテクノロジーズおよび旭化成建材株式会社に対し、不法行為責任、瑕疵担保責任等に基づき求償いたします。上記発生費用は、総額で約390億円と見込まれ、レジデンシャル社が当第2四半期連結会計期間末までに仮払いしている金額については、当社四半期連結貸借対照表の流動資産に計上しております。」(決算短信の偶発債務注記より)

ということは、ゼネコンにはまだ請求すらしていないということになります。

四半期報告書も11日に提出済みで、監査人(あずさ)は無限定の結論を出しています。

金融庁がこの決算に対して何も言わなければ、日本の会計基準上はこれでいいということになるのでしょう。
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