kage日記 読書&お仕事編

読書記録、仕事雑感(愚痴?)

本のエンドロール

2021-05-06 09:08:00 | 読書記録

本のエンドロール 安藤祐介


新聞の書評で見て、早速図書館に予約。

出版社、編集者の話はたくさんあるが、印刷会社にスポットを当てたものは珍しい。

まさに新卒で3年ほど某印刷会社で営業をしていた私にとってはこれは絶対読んでみたい本だった。

責了、下版、刷版、ヤレ紙、特色・・などの業界言葉と、本を見るとき奥付から見てしまうというあるあるなど、懐かしい気持ちでいっぱいになった。

半面、印刷会社はただ紙を刷っているだけだと思っている作者や編集者が、平気でやり直しを命じたり原稿入れるのを遅らせたりして、それによって後工程が詰まって現場が大変になり営業が板挟みになる、というのもさんざん経験してきたので、懐かしい反面、読んでて胸が痛くなった。

私は、主人公の浦本のように、こんなに熱心で熱い営業ではなかったし、こんなにも本の制作の内容にも立ち入ることもなかったが、(しかし、これほど新作本の内容に立ち入る印刷会社の営業がいるのか?)自分のかかわった本ができた時はうれしかった。

原稿からデータを起こして組み、製版して印刷工場で下阪、刷版、印刷、断裁、折り、製本、配送まで、それぞれの工程にそれぞれのこだわりの職人がいて、誇りをもって仕事をしている。印刷所の仕事を知らない人たちにはこんなにもたくさん工程や作業があって、様々な人々の手から本が生まれていることを知ってもらえるだろう。否、たった3年しか勤めなかった私にさえも、知らないことがたくさんあった。こんなにも、印刷会社について詳しく書いた本はないんじゃないかな。

最後の家族への印刷製本会社ツアーは、私も参加してみたいくらいだった。

印刷工場へは数えるほどしか行ったことはなかったけど、読んでいて、あの独特のインクと紙とフィルムの匂い、だだっ広い工場の様子がよみがえってきて、泣きそうになった。

電子書籍にしても、会社の首を絞めることになるにもかかわらず、時代の流れでやらざるを得ない葛藤が描かれていたが、「廃れゆくものは敗れることでない。廃れゆく本を造る限り、負けることはない」と、本を造る道を選ぶエンディングに、拍手を送りたくなった。

私も、もう少し長く勤めていれば、こういう醍醐味も味わえたかもしれないな。ただ、あまりにブラックすぎて身体を壊すのとどっちが先になるか・・・な環境だったので(;'∀') 今はもう少しまともになったのだろうか。

いい本を読みました。

 

 

 



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