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Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

「メスキータ」展

2019-06-29 | アート
移動の途中、東京ステーションギャラリー「メスキータ」展へ。
 
アムステルダムに生まれたポルトガル系ユダヤ人で、建築を学んだ後、木版画、エッチング、テキスタイル制作、ドローイング、水彩、油彩など多くの作品を制作するとともに応用美術学校で美術を教える。教え子の一人が、あのエッシャーだ。
 
75歳で、ナチスにより家族とともにアウシュビッツに送られて殺される。メスキータ逮捕を知ったエッシャーら教え子たちが、命をかけてメスキータの作品を運び出し、守ったという。
今回は日本で初めての、メスキータの回顧展である。今年は没後75年に当たる。本日初日。
 
メスキータの正確な描写力、コントラストによる画面構成、しかも彫刻刀の彫り方使い方による陰影や立体感の描き方など、圧倒された。アムステルダムの動物園に足しげく通って制作したという、動植物の生き生きとした、それでいてどこか神秘的な、単純な線での浮き立たせ方が素晴らしい。
当時発行されていた芸術芸術総合雑誌「ウェンディンゲン」、今あったら定期購読するのになあ。
 
「メスキータ」展、見応えがあった。
東京駅(丸の内)に来られる機会があればぜひ。
 
 
 

「トルコ至宝展」

2019-05-05 | アート
国立新美術館にて開催中の、「トルコ至宝展」を見てきた。
HPの「開催概要」に、
本展では、イスタンブルのトプカプ宮殿博物館が所蔵する貴重な宝飾品、美術工芸品をとおして、花々、とりわけチューリップを愛でた宮殿の生活、オスマン帝国の美意識や文化、芸術観を紹介します。
とあるように、壮大で輝かしいオスマン帝国の有様を映し出す多彩な品々が展示されていた。
 
それはそれは見事な、金やルビー、サファイア、トルコ石などが散りばめられた武具や装飾品。もちろん実用のための短刀や兜などではないわけだけれど、この輝きを纏ったスルタンの威光たるや、文字通り世に煌めくものがあっただろう。
 
また、オスマン帝国では、チューリップの花が愛されていたことを実感できた。
 
「チューリップ」の言葉の綴り(当時のアラビア文字)が、組み換えると「アッラー」に通じたことなどもあり、チューリップは単に花として愛好されただけでなくイスラムの象徴と見なされ、美術品のモチーフとして大いに使われたとか。
 
絵では細長い花の方が良しとされたそうで、会場には、細長めのチューリップの意匠が、布にも紙にも、礼拝用のマットから馬具にまで、美しくあしらわれていた。いや、これ可愛い。文具店にこのシリーズあったら買うなあ。
 
柄としてだけではなく、チューリップは当時盛んに栽培され飾られていたということで、チューリップ用の、先のすぼまった形の花瓶も様々な色形のものが展示されていた。「チューリップ時代」と呼ばれた頃、トプカプ宮殿には内外ともにチューリップが咲き競っていたのが目に浮かぶようだ。
 
「トルコと日本」のコーナーにはエルトゥールル号の遭難のことも取り上げられていた。
トルコは親日国だとよく言われるが、日本人にとってもトルコは魅力的な国であると思う(そう言えばこないだトルコ料理食べたなあ)。これからも良好な関係であるように、自分にできることから心がけていきたい。
 
出口の売店で散々迷った末、チューリップ柄のメモ帳と、キリムのコースター(一つ一つ柄が異なり、裏が革張りになってる)を、ささやかなお土産に。
 
 

藝大卒展2019(2)

2019-02-02 | アート
続き。

デザイン科 浅野舞子さん「コア」は、見る人が癒されるかどうかの実験として、丸くなった姿の動物図案を製作したそう。
私は癒されましたよ。



彫刻科 秋吉怜さん「無題」。もう一つ、「風に吹かれて」と同様のコンセプトだが、穴のあいたような御影石は、墓標のようでもあり、生命の暗喩のようでもある。



日本画科も、どれも力作だった。例えば谷口陽奈子さん「人知れず」は、東京に住むものとしてなんとなく心惹かれる色合いがあった。



それにしても日本画の展示は、同じ大きさの絵に同じ大きさの自画像がついていて、いわば安定感のある展示であったのだが、

油画科は、いろいろありというか、もはや絵を描いていないというか、全員で絶賛模索しながら活動中という感じか。
こちらは、先に行われた学内展での展示は、都美術館の制約のため再現できない部分が多く、その分ある意味「エッセンス」的な作品になっているものも多くあった。
スマホではうまく写真が撮れない(繊細さが再現できない)ものも多々あり、紹介しきれずすみません。

諏訪部佐代子さん「分節」
学内展でのスケールとは違うけれども、波打つ感じ、時間軸はこの2つのセメントからでも伝わってくる。



岩井真由さんの「私たちを包む多面体」。スマホで写真撮ってもなんだか豆腐のようにしか見えないけれど、よく見ると表面には繊細な多面体の繰り返し構造が浮かび上がってくる作品。



マスコマユ「もうそこに貴方は居なくても」は、学内展では雑草とエタノールを使ってガラス展示を展開していたけれど、都美ではドライなモティーフに変更されていた。



これは前にいた人が「かわいい〜」と言っていた、筧由佳里さんの「チョコチップ柄のいぬ」。たしかにかわいい。



加納紫帆さん「現在地」。藝大という現在地を卒業してから、皆どのように発展していくのだろう。



藝大卒展、明日午前まで開催中。みなさんお疲れ様。

藝大卒展2019(1)

2019-02-02 | アート


今日は、上野の東京都美術館で、藝大卒展を観てきた。

時間の関係で藝大構内の院生の方には行かれなかったけれど、都美で展示されている日本画、油画、先端、工芸、彫刻、デザイン、建築を一通り回って、学生さんたちのエネルギーのたくさん詰まった作品群の中を歩いてきた。とても多くの、子どもからシニアまでが観にきて、作家(学生)さんたちと話をしていた。

どれも面白い。

普通、美術館で見るような「完成された」美術品、というのではなくて、自分はこれからこれをやっていきたい、こんなことを表現してみたい、という気持ちのカタマリというか。そしてそれが、都美の展示室という限られた広さの中に密に集まっている、わくわくした空間を形成している。

例えば、デザイン科の真船結花さんの「My flower. Your flower.」という作品。



見たことのあるアレやコレが、まるで最初からそうであったかのような変身ぶり。

工芸科 梅田怜奈さん「accumulation』の彫金。なにか不思議な生命を感じる。そしてとても、ひとつの世界を形成している。



建築科 島津利奈さんは「波止場の終史線」と題して、東京・築地川水門付近の土地空間への葬儀場・火葬場の設計を試みている。海の見える葬儀場である。



そしてこれが、話題になっているという「生物」。デザイン科 門脇康平さんの「地球人へ」という作品であるが、ご丁寧に「特定未確認生物DNA型鑑定書」と「生命体証明証」までついているのである。頭蓋骨のレントゲンもつけてあったので、これは間違いなく未知の生命体なのだな!