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Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

「最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか」

2021-05-05 | 本・映画・テレビ
 
Disaster.

その結末を、現在の我々はあらかじめ知っている、悲劇の数々。

かつて起こった「最悪の事故」について、その端緒(ほとんどはほんのちょっとした失念や不注意)から悲劇的な結末に至るまでを、技術的、心理的な視点から、まるで読者がその現場を見ているかのように解説する一冊である。
スリーマイルやチャレンジャー、インド・ユニオンカーバイド社の殺虫剤事故など有名なものから、すんでのところで事故を回避した事例まで、時系列的に「何がいけなかったのか」を解き明かしていく様子はスリリングであり、また現場で事故回避のために奮闘していたであろう人々が「〇〇人が死亡した」という結末となる胸の痛みもあり、比較的厚い本であるが一気に読ませるものがある。

著者は技術評論家のジェームズ・R・チャールズ氏で、その知見の幅広さには驚かされる。
失敗や事故の事例からは学ぶことが多い。事故で愛する人を亡くすことがないように、まずは日頃のルーティーンや情報のリニューアルを怠けることがないように心がけたいと思う。

"好むと好まざるとにかかわらず、トラブルシューティングと判断力行使という能力は、限界ぎりぎりのところで動いている高度なテクノロジーのなかで人間だけが発揮できる、数少ない技能なのだ。"(本文より引用)


世田谷散歩〜松原にて陶芸の個展

2021-03-14 | 日記
松原駅からしばらく歩くと、住宅街の中にふいに現れる民家の一角、
赤堤のgallery MARUNI AKIYAにて、

畑中咲輝 個展
“ 一艘のカヌー、未来へ戻る…”。

福岡で制作を続けているという作家さんの陶芸作品。

土を焼いたものたちなのだが、生き生きと動き出しそうな温かさ。






「麒麟がくる」

2021-02-07 | 本・映画・テレビ
「麒麟がくる」
最終回 本能寺の変

今日が最終回。
明智光秀の軍勢は本能寺に攻め入り、
織田信長を討った。
信長は光秀と聞いて
「是非に及ばず」と発し、
自ら火を放ってその生を終えた。

歴史が苦手でも、流石に歴史的な「謀叛」として知っているこの出来事。
長谷川博己さん、染谷将太さんが、それぞれ光秀と信長として、若い頃の夢や野心、信頼が、やがて「変」に至るまでの機微を見事に演じ、これまでにない本能寺の場面になっていた。

明智光秀に関しては前半生の史料がなく、信長に支えるまでどう過ごしていたのかわかっていないというが、
今回の大河ドラマでは、時代の端境に懸命に生きる人々があり、帝から架空の人物までに至るその群像の中心に光秀がいて、
光秀は、膠着した戦国の世の歯車を、大きく回す立ち位置にあった…というように描かれていたと思う。

そして、その命は山崎の戦いの後にも繋がっていたのだと。


私はこれまで大河ドラマをまともに見たことはなかったのだが、
今回はコロナで日曜夜にほとんど家にいるようになり、
明智光秀が主役というのも珍しいと思ったし、またシン・ゴジラでハセヒロさん良いなあと思ったりもした…ので見始めたのだった。

途中、やはりコロナ禍のために収録が中断され、合戦のシーンなどかなり脚本も変わったのだろうが、
それでも役者さんたちの渾身の演技と、細かいところまで意匠のこらされたセットや道具、衣装など、感嘆しながら楽しめた。

オープニングのジョン・グラムの音楽も良かった。
軍の太鼓や騎馬隊、甲冑の音のようでもあり、切なさや、どこかにいるであろう麒麟のイメージも浮かんでくるような。

思わずサントラを予約してしまった。





「信仰と医学」

2021-01-19 | 本・映画・テレビ
ふと、「聖地ルルド」というサブタイトルが目に留まり、帚木蓬生氏の「信仰と医学」を読んだ。


聖ベルナデットの聖母マリアとの遭遇、そして今日までの多くの巡礼者(そう言えば、コロナ禍の中で、聖地はどうなっているのだろうか)、

そういったあれこれを断片的に知識として知ってはいても、それをまとめて医学的な視点から記述した日本語の文献はあまり読んだことがなく、興味をもったのである。

箒木氏は仏文科卒後に精神科医となった作家であり、フランス留学の経験もある。
ルルドについて語るにはこの上ないバックグラウンドである。

この本では、まず氏が実際にルルドを訪れた時のエピソードをプロローグとし、

ついで、ルルドにおいて、ベルナデットという少女がいつ、どのようにして聖母マリアと出会い、語らい、それに対して周囲の社会がどう反応したかを詳細に綴っている。
この記録は一人の神父によるものとのことだが、まるでドキュメンタリーのように、当時のセリフの一言一言まで書かれており精細だ。

次いで、その後のルルドの発展や、「ルルド国際医学評議会」について、
また最終章は、おそらく皆が抱いているであろう疑問、「奇跡の治癒はプラセボ効果か」というタイトルで論じられている。

その疑問に、明確に回答を出すような書き方は、本書では注意深く避けられている、と思える。

しかし著者は言う、

「しかしルルドが(中略)他に類を見ない特異な場所になっているのは、そこでは宗教と医学が手を取り合って、お互いを、補完し合っているからである」。(“おわりに”より)

宗教と医学が並び立つからこそ、ルルドは特別であり、病者も健康な人も、いつか訪れてみたいと思える地なのであろう。

いつか、ベルナデットの見た風景を見に行きたい、と思う。

「50歳からの孤独入門」

2021-01-08 | 本・映画・テレビ


図書館でたまたま見つけて読んでみた本。

私も50代半ば。いわば“人生この先どうしよう感”に苛まれているので、このタイトルを見て興味を持った。
斎藤孝氏の著作は初めて読む。

…軽い。
すらすら読める。
ネタが幅広くて、趣味の話が続出するので読みやすいのかなと思う。

歴史上の偉人の話も面白いが、まあ昔の50歳と今の50歳とでは生物学的にも社会的にも違うし、

魚類の求愛ダンスと人間のダンスが同じなのか定かではないけれども、

そんな感じでいろいろな話題が繋がっている。

「プライドと折り合いをつけて生きる」

とか、

「美的な精神生活を獲得する」

とか、

悩み多き50代にとっては、知ってたけどまあそうだよね、と、言われて改めて確認するような事柄がいろいろ記述されている。

まあ、まだまだとりあえず頑張ろう。

とは言え自分は、

「50歳になったら物欲が整理される」

ことはなく、日毎Amazonやらをポチポチしてるけれども。