稲嶺氏再選 誇り高い歴史的審判
日米は辺野古を断念せよ
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米軍普天間飛行場の移設問題が最大の争点となった名護市長選で、辺野古移設阻止を主張した現職の稲嶺進氏が、移設推進を掲げた前県議の末松文信氏に大勝し、再選を果たした。
選挙結果は、辺野古移設を拒む明快な市民の審判だ。地域の未来は自分たちで決めるという「自己決定権」を示した歴史的意思表明としても、重く受け止めたい。 日米両政府は名護市の民主主義と自己決定権を尊重し、辺野古移設を断念すべきだ。普天間の危険性除去策も、県民が求める普天間飛行場の閉鎖・撤去、県外・国外移設こそ早道だと認識すべきだ。
知 事 不 信 任
名護の平和と発展、子や孫の未来、持続可能な環境・経済の在り方を見据え、誇りを持って投票した市民に心から敬意を表したい。
稲嶺氏は一貫して「自然と未来の子どもを守るためにも、辺野古に新しい基地は造らせない」と訴えてきた。市民はその決意を信じ、市の発展と、自らや子孫の将来を託したと言っていいだろう。
選挙結果はまた、昨年末に普天間県外移設の公約を反故(ほご)にし、政府の辺野古埋め立て申請を承認した仲井真弘多知事に対する名護市民の痛烈な不信任と見るべきだ。
知事は選挙結果を真摯(しんし)に受け止め、埋め立て承認を撤回すべきだ。沖縄を分断する安倍政権の植民地的政策に追従するのではなく、民意を背景に県内移設断念をこそ強く迫ってもらいたい。
知事は、辺野古移設への執着は県民への裏切りであり、辞職を免れないと認めるべきだ。県外移設公約を撤回し、民意に背いた県関係の自民党国会議員、自民党県連、市町村長もしかりである。
1996年の普天間返還合意以来、移設問題に翻弄(ほんろう)され苦痛を強いられてきた市民が、自らの意思で日米両政府による犠牲の強要をはね返した。これは子々孫々の代まで誇れる画期的な出来事だ。
選挙戦で自民党側は、移設問題は今選挙で「決着」と訴えていた。ならばその通り、辺野古断念で決着すべきだ。
今後は4万7千市民が心を一つに、豊かな自然と文化を誇る山紫水明の里・やんばるの発展に尽くしてほしい。
狭い沖縄で新基地建設が強行されれば、どこであれ過重負担や人権侵害が生じ、生命・財産の脅威が深刻化、固定化することは火を見るより明らかだ。人の痛みをわが事のように受け止め「肝苦(ちむぐ)りさ」と表現する県民にとって、基地のたらい回しは耐えがたい。
民主主義の適用
普天間飛行場は、米海兵隊輸送機オスプレイ24機が常駐配備され、住民の過重負担がより深刻化している。断じて容認できない。
知事の埋め立て承認直後に琉球新報などが実施した県民世論調査では、県外・国外移設と無条件閉鎖・撤去を合わせて73・5%を占めた。普天間代替基地は認められない。これが沖縄の民意だ。
本土住民も人ごとのように傍観するのではなく、普天間の閉鎖・撤去に強力な力添えをしてほしい。 かつては辺野古移設を支持していた複数の米国の外交・安保専門家が見解を変え、「プランB(代替案)」の検討を提案している。
ノーベル賞受賞者を含む欧米知識人も辺野古移設に反対している。世界の良識が県民を支持している。 日米は環境の変化を直視すべきだ。沖縄返還という歴史的事業を外交交渉でやり遂げた両国が480ヘクタールの普天間飛行場一つの閉鎖・撤去を決断できないはずはない。
県民は国政選挙や知事選、県議選、市町村長選など民主的手続きを駆使し辺野古移設拒否を表明してきた。世論調査で辺野古移設が過半数を占めたことは一度もない。
安倍晋三首相とオバマ大統領は、諸外国に向かって「自由と民主主義、基本的人権の尊重、法の支配という普遍的価値を共有する」と言う前に、沖縄にも民主主義を適用してもらいたい。民意の支持なき辺野古移設は実現不可能だ。県内移設を断念するときだ。
(琉球新報 2014年1月20日、社説より)
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