「聞く聴くドリル」(CD4枚付き・文英堂)で「頭の体操」」を!
もし、お子様から「何のために勉強するの?」と尋ねられたら、何と答えるでしょうか。「いろいろな知識を身につけて、将来、困らないようにするため」「いろいろな技術を身につけて、将来の自立に備えるため」などと答える方が多いと思います。しかし、本当にそうでしょうか。私自身、学校で勉強したことが、社会生活で「役に立った」とは感じられません。例えば、算数・数学、せいぜい「割合の計算」くらいまで(小学校4年程度)は使いますが、分数の計算、方程式、因数分解、微分・積分、三角関数などとはおよそ無縁の生活を送っています。例えば、英語、未だに相手の言うことは、ちんぷんかんぷん、会話は全く不可能です。つまり、学校で学んだことが、社会生活の中で「ほとんど」役に立っていないのです。
では、勉強をする必要はないのでしょうか。私はそうは思いません。勉強は子どもにとってはもとより、大人にとっても必要な「仕事」だと思います。なぜでしょうか。勉強の目的は「頭を使う」こと、つまり「頭の体操」をすることだからです。適度な運動が健康を保たせるように、適度な勉強は健全な心を養います。物を見分けること、憶えること、計算すること、文字を読み書きすること等々、それらはすべて「頭を使う」ことに他なりません。「頭を使っていれば」間違えてもいいのです。学校の勉強では、なぜか、「間違う」ことが忌み嫌われますが、「間違う」ことをおそれて、「頭を使う」ことを止めてしまうのはもったいないことだと、私は思います。
さて、「頭の体操」には様々な活動がありますが、中でも最も大切なものは(しかも、つねに見落とされているものは)「聞く」という活動ではないでしょうか。「聞く」という活動は、「話す」「読む」という活動の土台になっています。「聞く」力が不十分な場合、「話す」ことも「読む」ことも十分にはできなくなります。私が英語を「話せない」のは、英語を「聞く」力が十分ではないからです。英文をすらすらと音読できないのも、英語を「聞く」力が十分ではないからです。それは日本語においても同じこと、もし「スムーズに会話ができない」「文章をすらすらと音読できない」「ことばがはっきりしない」(発音に誤りがある)という問題が生じている場合、まず「聞く」力が十分に備わっているかを見極める必要があると思います。
では、「聞く」力とは具体的にどのような力でしょうか。私の恩師・谷俊治先生(東京学芸大学名誉教授)は、以下の七つを挙げています。
①聴力(小さい音まで聞き取る能力。いわゆる「難聴」とは、この能力が不十分な状態をいいます) ②弁別力(音や言葉の違いを聞き分ける能力。この能力が不十分な場合、発音に誤りが生じることがあります)
③記銘力(音や言葉を聞いて憶える能力。昔、小学1年生の国語の教科書に「5つの言葉を聞いておぼえましょう」という単元がありました。成人の場合、数字7桁まで聞いて憶えることが要求されます。昔の電話番号は7桁でした)
④分析力(ひとまとまりの言葉を聞いて、その言葉がいくつの音で作られているかを聞き分ける能力。例えば「木」は一音、「猫」は二音、「机」は三音、「手袋」は四音というように。この能力が不十分だと、かな文字の習得に支障が生じます)
⑤統合力(バラバラの音を聞いて、それらを「まとまり」に統合する能力。例えば、「ア」「タ」「マ」という音を二秒間隔で聞いて「頭」という言葉(意味)が思い浮かぶかどうか。この能力が不十分だと、かな文字を「すらすらと音読する」ことに支障が生じるでしょう。いわゆる「ベンケイガナ、ギナタヲ」式の「拾い読み」の段階の場合、この能力がまだ不十分ということになります。
⑥構成力(言葉を途中まで聞いて、全部(終わりまで)を推測する能力。例えば、「先生さようなら、みなさん○○○○○」という言葉を聞いて、○に該当する音を推測するように。日常生活で使われている音声言語は、つねに「不正確」「不十分」です。それを、聞き手の方が「修正」「補足」しながら「やりとり」できたとき、会話が成立するといえるでしょう。したがって、この能力が不十分だと、スムーズな会話ができにくくなります。
⑦聴解力(ラジオのニュース、朗読、放送劇などを聞いて、その意味を正確に理解したり、登場人物の気持ちを察して感動することができる能力。いわば、①から⑥までの能力が総合された能力といえるでしょう)
「聞く」能力が不十分という場合、通常、⑦の「聴解力」が不十分ということになりますが、その原因を明らかにするためには①から⑥までの能力がどの程度かを的確に把握する必要があると思います。①の聴力が正常であっても、②の弁別力、③の記銘力が不十分であれば、相手の言葉を正確に聞き取ることはできないでしょう。
そんなわけで、まず「音や言葉を聞き分ける」「聞いて憶える」能力を養うことが、「頭の体操」(勉強)にとって最も大切だと思います。
では、どうすればよいか。最近市販された「聞く聴くドリル・聞き取り練習教材・CD4枚付」(和田秀樹監修・村上裕成・文英堂・2006年)は、恰好の教材だと思います。これまでのドリルは、「読むこと」「書くこと」を中心に作られているものが多く、「聞くこと」に真正面から取り組んだものは、皆無に等しかったと思います。この教材は①「入門編」(5歳程度)、②「小学校1年」(6歳程度)、③「小学校2年」(7歳程度)の三部で構成されており、それを順番どおりにマスターしていけば、「弁別力「記銘力」「分析力」「統合力」「構成力」が、「自然に」身につくようになると思いました。
今、その一部分(③「小学校2年」)を紹介します。
<問題1 お話のどこがちがう>
ア、イの2つのお話を聞きくらべ、ちがうところをさがしましょう。ちがうところは1つとはかぎりません。ちがうところがなければ、○をしましょう。
① ア 体育館に入ろうとしたとき、誰かが僕を大声で呼んでいるのが聞こえた。そこで 僕は急いで声のした方に走って行った。
イ 体育館に入ろうとしたとき、誰かが僕を遠くで呼んでいるのが聞こえた。そこで 僕はすぐに声のした方に走って行った。
② ア 明君は八百屋さんまで買い物に行く途中で財布を落としてしまいました。一生懸 命探しましたが見つかりません。それでしょんぼりして家に帰りました。
イ 明君は八百屋さんまでお使いに行く途中でお金を落としてしまいました。一生懸 命探しましたが見つかりません。それでしょんぼりして家に戻りました。
③ ア 桜の花が咲く季節は北の地方に行くほど遅くなります。また同じ地方でも高い山 の上に咲くものほど遅く咲きます。
イ 桜の花が咲く時期は北の地方に行くほど遅くなります。また同じ地方でも高い山 の上に咲くものほど遅く咲きます。
<問題3 大事なことは3つ>
言われたところに色をぬりましょう。問題を言っている時に、色鉛筆を持ったり、ぬる場所を指でおさえたりしてはいけません。
① 右から4番目に赤色をぬります。
② 左から3番目に緑色をぬります。
③ 左から1番目と4番目に青色をぬります。
<問題5 お話をくりかえそう>
お話がおわったら、すぐにくりかえして言いましょう。
① 太陽も月も 東から出て 西へ 沈みます。
② 昼の 時間が 1番 長い月は 6月です。
③ 2月が 29日まで ある年を うるう年と 言います。
<問題7 条件に合うのはどれ>
聞こえてくる説明について、条件に合うものをみつけましょう。答えがわからない時は、何も書かずに空けておきます。
① もし、ネズミがネコより大きく、ネコがトラより大きいとしたら、1番大きい動物は 何ですか。
⑤ もし、春が夏より暑く、冬が春より暑いとしたら、この中で1番寒い季節はいつです か。
⑨ もし、コップがやかんより小さく、コップがバケツより大きいとしたら、1番大きい 物は何ですか。
このドリルの特長は、①CD付であること、②やさしい問題から難しい問題にきめ細かなステップが組まれていること、③1回の時間が10分以内で済むこと、④それぞれの問題ごとに「目標得点」(100%正答でなくてもよい・間違えてもよい・わからなくてもよい)が示されている、ことだと思います。
お子様と一緒に「頭の体操」(勉強)をはじめたい方、「聞く聴くドリル」をぜひ御活用ください。。。))
もし、お子様から「何のために勉強するの?」と尋ねられたら、何と答えるでしょうか。「いろいろな知識を身につけて、将来、困らないようにするため」「いろいろな技術を身につけて、将来の自立に備えるため」などと答える方が多いと思います。しかし、本当にそうでしょうか。私自身、学校で勉強したことが、社会生活で「役に立った」とは感じられません。例えば、算数・数学、せいぜい「割合の計算」くらいまで(小学校4年程度)は使いますが、分数の計算、方程式、因数分解、微分・積分、三角関数などとはおよそ無縁の生活を送っています。例えば、英語、未だに相手の言うことは、ちんぷんかんぷん、会話は全く不可能です。つまり、学校で学んだことが、社会生活の中で「ほとんど」役に立っていないのです。
では、勉強をする必要はないのでしょうか。私はそうは思いません。勉強は子どもにとってはもとより、大人にとっても必要な「仕事」だと思います。なぜでしょうか。勉強の目的は「頭を使う」こと、つまり「頭の体操」をすることだからです。適度な運動が健康を保たせるように、適度な勉強は健全な心を養います。物を見分けること、憶えること、計算すること、文字を読み書きすること等々、それらはすべて「頭を使う」ことに他なりません。「頭を使っていれば」間違えてもいいのです。学校の勉強では、なぜか、「間違う」ことが忌み嫌われますが、「間違う」ことをおそれて、「頭を使う」ことを止めてしまうのはもったいないことだと、私は思います。
さて、「頭の体操」には様々な活動がありますが、中でも最も大切なものは(しかも、つねに見落とされているものは)「聞く」という活動ではないでしょうか。「聞く」という活動は、「話す」「読む」という活動の土台になっています。「聞く」力が不十分な場合、「話す」ことも「読む」ことも十分にはできなくなります。私が英語を「話せない」のは、英語を「聞く」力が十分ではないからです。英文をすらすらと音読できないのも、英語を「聞く」力が十分ではないからです。それは日本語においても同じこと、もし「スムーズに会話ができない」「文章をすらすらと音読できない」「ことばがはっきりしない」(発音に誤りがある)という問題が生じている場合、まず「聞く」力が十分に備わっているかを見極める必要があると思います。
では、「聞く」力とは具体的にどのような力でしょうか。私の恩師・谷俊治先生(東京学芸大学名誉教授)は、以下の七つを挙げています。
①聴力(小さい音まで聞き取る能力。いわゆる「難聴」とは、この能力が不十分な状態をいいます) ②弁別力(音や言葉の違いを聞き分ける能力。この能力が不十分な場合、発音に誤りが生じることがあります)
③記銘力(音や言葉を聞いて憶える能力。昔、小学1年生の国語の教科書に「5つの言葉を聞いておぼえましょう」という単元がありました。成人の場合、数字7桁まで聞いて憶えることが要求されます。昔の電話番号は7桁でした)
④分析力(ひとまとまりの言葉を聞いて、その言葉がいくつの音で作られているかを聞き分ける能力。例えば「木」は一音、「猫」は二音、「机」は三音、「手袋」は四音というように。この能力が不十分だと、かな文字の習得に支障が生じます)
⑤統合力(バラバラの音を聞いて、それらを「まとまり」に統合する能力。例えば、「ア」「タ」「マ」という音を二秒間隔で聞いて「頭」という言葉(意味)が思い浮かぶかどうか。この能力が不十分だと、かな文字を「すらすらと音読する」ことに支障が生じるでしょう。いわゆる「ベンケイガナ、ギナタヲ」式の「拾い読み」の段階の場合、この能力がまだ不十分ということになります。
⑥構成力(言葉を途中まで聞いて、全部(終わりまで)を推測する能力。例えば、「先生さようなら、みなさん○○○○○」という言葉を聞いて、○に該当する音を推測するように。日常生活で使われている音声言語は、つねに「不正確」「不十分」です。それを、聞き手の方が「修正」「補足」しながら「やりとり」できたとき、会話が成立するといえるでしょう。したがって、この能力が不十分だと、スムーズな会話ができにくくなります。
⑦聴解力(ラジオのニュース、朗読、放送劇などを聞いて、その意味を正確に理解したり、登場人物の気持ちを察して感動することができる能力。いわば、①から⑥までの能力が総合された能力といえるでしょう)
「聞く」能力が不十分という場合、通常、⑦の「聴解力」が不十分ということになりますが、その原因を明らかにするためには①から⑥までの能力がどの程度かを的確に把握する必要があると思います。①の聴力が正常であっても、②の弁別力、③の記銘力が不十分であれば、相手の言葉を正確に聞き取ることはできないでしょう。
そんなわけで、まず「音や言葉を聞き分ける」「聞いて憶える」能力を養うことが、「頭の体操」(勉強)にとって最も大切だと思います。
では、どうすればよいか。最近市販された「聞く聴くドリル・聞き取り練習教材・CD4枚付」(和田秀樹監修・村上裕成・文英堂・2006年)は、恰好の教材だと思います。これまでのドリルは、「読むこと」「書くこと」を中心に作られているものが多く、「聞くこと」に真正面から取り組んだものは、皆無に等しかったと思います。この教材は①「入門編」(5歳程度)、②「小学校1年」(6歳程度)、③「小学校2年」(7歳程度)の三部で構成されており、それを順番どおりにマスターしていけば、「弁別力「記銘力」「分析力」「統合力」「構成力」が、「自然に」身につくようになると思いました。
今、その一部分(③「小学校2年」)を紹介します。
<問題1 お話のどこがちがう>
ア、イの2つのお話を聞きくらべ、ちがうところをさがしましょう。ちがうところは1つとはかぎりません。ちがうところがなければ、○をしましょう。
① ア 体育館に入ろうとしたとき、誰かが僕を大声で呼んでいるのが聞こえた。そこで 僕は急いで声のした方に走って行った。
イ 体育館に入ろうとしたとき、誰かが僕を遠くで呼んでいるのが聞こえた。そこで 僕はすぐに声のした方に走って行った。
② ア 明君は八百屋さんまで買い物に行く途中で財布を落としてしまいました。一生懸 命探しましたが見つかりません。それでしょんぼりして家に帰りました。
イ 明君は八百屋さんまでお使いに行く途中でお金を落としてしまいました。一生懸 命探しましたが見つかりません。それでしょんぼりして家に戻りました。
③ ア 桜の花が咲く季節は北の地方に行くほど遅くなります。また同じ地方でも高い山 の上に咲くものほど遅く咲きます。
イ 桜の花が咲く時期は北の地方に行くほど遅くなります。また同じ地方でも高い山 の上に咲くものほど遅く咲きます。
<問題3 大事なことは3つ>
言われたところに色をぬりましょう。問題を言っている時に、色鉛筆を持ったり、ぬる場所を指でおさえたりしてはいけません。
① 右から4番目に赤色をぬります。
② 左から3番目に緑色をぬります。
③ 左から1番目と4番目に青色をぬります。
<問題5 お話をくりかえそう>
お話がおわったら、すぐにくりかえして言いましょう。
① 太陽も月も 東から出て 西へ 沈みます。
② 昼の 時間が 1番 長い月は 6月です。
③ 2月が 29日まで ある年を うるう年と 言います。
<問題7 条件に合うのはどれ>
聞こえてくる説明について、条件に合うものをみつけましょう。答えがわからない時は、何も書かずに空けておきます。
① もし、ネズミがネコより大きく、ネコがトラより大きいとしたら、1番大きい動物は 何ですか。
⑤ もし、春が夏より暑く、冬が春より暑いとしたら、この中で1番寒い季節はいつです か。
⑨ もし、コップがやかんより小さく、コップがバケツより大きいとしたら、1番大きい 物は何ですか。
このドリルの特長は、①CD付であること、②やさしい問題から難しい問題にきめ細かなステップが組まれていること、③1回の時間が10分以内で済むこと、④それぞれの問題ごとに「目標得点」(100%正答でなくてもよい・間違えてもよい・わからなくてもよい)が示されている、ことだと思います。
お子様と一緒に「頭の体操」(勉強)をはじめたい方、「聞く聴くドリル」をぜひ御活用ください。。。))