物語エトセトラ

気分は小説家?時に面白く、時に真面目に、物語を紡ぎ出す

ゆうきのサバイバル日記(71)

2008-09-20 | Weblog
    頭が混乱したまま眠ったわりには、よく眠れたみたいで、翌朝は
   すっきりとした目覚めだった。病院で出された薬のおかげかもしれ
   ない。
    それなのに
    「伊東、まだ熱あるんじゃない?
     なんか、ぼーーっとした顔だぜ」
    と、北崎が俺の顔を見るなり言う。
    先入観に影響されやすい性格だったんだな、こいつは。
    食堂で朝飯を食べた後、みんなが和田と俺を取り囲む。
    俺たちがもらった薬のけばさは、あっという間に広まり、薬を見た
   い奴や実際に飲むところを見物しようという暇な奴らが興味津々で集
   まったというわけだ。
    先生からもちゃんと飲むように念を押されているし、みんなが注目
   してるので誤魔化すわけにもいかず、和田と二人で薬を飲んで見せた。
    「おおーーーっ!!」
    と、感動?とため息が混じった声をきくと、悪い気もしない。

    今日は、韓国の女子高との交流会だった。
    最初はお互いに緊張していたが、相手は信じられないくらい英語が
   うまい。俺たちのグループでは、夏目だけが対等に話せただけで、あ
   とは会話の中味も聞き取れないという有様・・・・。
    日本の英語教育をもっと真剣に考えてもらわないとな。
あまり楽しいとはいえない時間だった。
    その後何とかいうおもしろくもない所を見学し、土産物屋へ寄った。
    買い物をするのは、これで最後といわれたので適当に家への土産を
   買うことにした。
    まずは韓国海苔!
    これは美味い!!
    母親の了解をもらっているので30袋買う。
    これで家への土産はOk。
    自分の物を探していたら、
    「伊東、お前こんなとこで何やってんだ?」
    と、能島が寄ってきた。
    みやげ物を買うのに決まってンだろうが。
    こいつおかしいんじゃないか?
    「おまえさあ」
    と、能島が俺の肩を抱き寄せ囁く。
    「女の子にあげるような物は、ここにはないだろう?
     あっちの方に可愛いのがあるぜ」
    「へ?」
    「ああーー、もうっ!!
     相良に何かお返しするもんだろう?
     おまえ、まさか貰いっぱなしにしようなんて思ってるんじゃ
     ないだろうな?」
    「えっ?!えーーー・・・・?」
    そういうもんか?
    「今なら、あんまり人がいないからさ。
     買うなら今のうちにした方がいいよ」
    いつの間にか北崎までいる。
    結局俺は二人に引っ張られるように、なんかごちゃごちゃ小物が
    並んでいる棚へ移動した。
    「これなんか可愛いぜ」
    能島が携帯のストラップを摘み上げる。
    「そうだな、いいかも」
    北崎もうなずく。
    「そ、そうかな?」
    俺はまだ迷っている。
    そりゃあ貰いっぱなしというのは良くないが、お返しをするという
   のは、へんな誤解を招くんじゃないか?相良のことは嫌いじゃないん
   だけど・・・・
    「伊東、絶対これがいいって」
    能島が俺の手にそのストラップを載せようとしたとき
    「それはちょっと派手よ」
    俺たち3人の間にちかつかと割り込んできたのは、森崎だった!  

    
    
   

ゆうきのサバイバル日記 (70)

2008-08-20 | Weblog
     俺が部屋に入ろうとしたら、ドアが開いて北崎が顔をだした。
     「おう、伊東。電話終わった?
      お母さん心配してたろう?」
     「うん、まあ」
     「あれ?!」
     北崎が俺が手にしてる紙袋に目を留める。
     「伊東、それ相良からもらった?」
     「えっ?!そうだけど・・・・」
     何でこいつが知ってるの?
     「北崎、なにやってるんだ?」
     マサヤの声。なんでお前が俺たちの部屋にいるんだ?
     「あ、伊東!待ってたんだぜ」
     北崎の脇の下から顔を出す。
     「うゎあ!伊東!相良からもらったんだ!?」
     「!?」
     どういうことだ?
     なんでお前までが、そんなこと知ってるんだ?
     「おい!伊東が相良からもらったぞ!!」
     マサヤが部屋の中にむかって叫ぶ。
     「なに!?」
     「おお!!」
     部屋の中がいっきに騒然となり、みんながドアに殺到する。
     「おお!いっとう。そうか、そうか」
     「相良、偉い!伊東よかったな」
     みんなが口々に訳のわからないことをわめいて、俺を抱え込むよ
    うに部屋へ引っ張り込む。
     「そうか、修学旅行でか・・・・」
     「で?、で?あいつ何て?」
     どうなってんだよ?
     俺は完全に混乱してしまった。
     何も言わない俺に
     「伊東、俺たち友達だよな」
     「水臭いぞ、伊東」
     「お前、熱出して正解だったな」
     「で?相良は何て?」
     みんなが俺の顔を覗き込む。
     異様な迫力。キモイというか、恐いというか・・・・
     「べ、別に・・・・
      今日、観光に行けなかったから、土産だって」
     「ふーーん。で?」
     「で?って、それだけだけど・・・・」
     「それだけ?」
     「おーー!相良も押しが弱いよな」
     「やっぱさ、そこまで俺たちがサポートしてやらなきゃダメだった?」
     「うーーん・・・・
      でもさ、いくらなんでも伊東、お前分かるよな?」
「?・・・・」
      こいつら何言ってるんだ?
     「伊東?まさかお前・・・・
      まさかと思うけど、状況が読めてないってか?」
     ゲゲーーッ!
     能島、それ以上顔を俺に近づけるなよ!
     俺だっていい加減切れるぞ!
     「信じられないけど」
     それまで俺たちから一人離れて見ていた春日が歩み寄り、俺に異常
    接近している能島の肩に手をかける。
     「伊東君、君さあ、青春している・・・、いや、青春できるかもし
      れないってことだよ」
     「おお!!さすが、春日!
      伊東、そういうことだぞ」
     そういうこともなにも、俺はちゃんと青春してるぞ!
     「伊東、つまりそういうことだ」
     能島が俺の肩をたたきながら言う。
     「お、おう。そうか」
     なんだかよく分からないが、とにかく話を合わせておこう。
     「そうだよ。お前劇的といえるかもよ」
     「そうそう。ドラマチックなシチュエイション!」
     「だよな」
     「それにしては、かなり控えめな告白だよな」
     「うーーん。相良ってば、奥ゆかしさも相手をみて、程度を考え
      ないとだめなのにさ」
     「だよな。
      俺たちが伊東に念押ししなかったら、通じていなかったもんな」
     「まったくだ。
      伊東、明日はお前からちゃんと、はっきり言うんだぞ」
     「おお!!いいねえーー。
      何て言う?」
     「そりゃあ・・・・・
      やっぱ、好きだ!でしょう?」
     「うわぁー、直接的!!」
     「そういえば、金子君は突然そうわめいて、振られたんだよな?」
     「ハハハ・・・。
      もう相良の気持ちは分かってるんだからさ。
      しかし、やっぱ、わめくのはよくないな」
     「当ったり前じゃん。
      耳元で、ささやくんだよ」
     「ギェーー!!
      そんなに接近したら、やばいだろ?
      な?伊東?」
     「えーーっと、それって、もしかして相良が俺のこと好きってこと?」     「・・・・・・・」
     「いっとうーー!!
      このボケ!!
      全然分かってなかったのかよ!!」
     「よせっ!俺は病人だぞ!!」 
    

      
      
         
            

ゆうきのサバイバル日記 (69)

2008-08-09 | Weblog
     相良は大きく息を吸って吐き出すと(とても深呼吸とはいえない
    感じ)、俺のほうに歩いてきた。
     「伊東君、大変だったね。
      もう、大丈夫?」
     「う、うん、まあ、なんとか・・・」
     なんか微妙にあせる。
     「今日はみんなと一緒に観光に行けなくて残念だったね」
     「う・・、ああ」
     「あのね、これ」
     相良がケバイ色の小さな紙袋をポケットから取り出す。
     「伊東君にお土産」
     「え?」
     「一緒に修学旅行行ってるのに変だけど、伊東君は今日行けな
      かったから」
     「・・・・・」
     何も言えないでいる俺の手をつかむと、俺の手にそれをのせた。
     「明日は交歓会一緒に出れるね。
      楽しみにしてるから」
     「う、うん・・・」
     「えーっと・・・・、
      明日はいつもみたいに元気になってるといいね。
      おやすみ」
      そう言うと、相良は身を翻して行ってしまった・・・・・。
     「・・・・・・・・」
     俺はバカみたいに、手のひらにのせられた紙袋をぼんやり見ていた。
     えーーっと、
     今日の観光を俺は欠席したわけで、つまり今日だけに限ると、俺は
    修学旅行に行かなかったということで、土産をもらったってこと。
     去年同じクラスだったよしみで・・・・。
     去年も今年もクラスが同じ北崎はくれなかったぞ。
     気がきかない奴だ。
     なんて・・・・・・、やっぱ、違うよな?  
   

ゆうきのサバイバル日記(68)

2008-08-03 | Weblog
    どれくらい眠っていたんだろう?
    俺は、保健の先生に起こされて目が覚めた。
    「伊東、お前って相変わらずよく寝る奴だな」
    横で、和田が笑っている。
    まだ顔が赤い。
    「なにを偉そうに。
     和田君、よだれが垂れてるぞ」
    先生に言われて、和田があわてて口元を手の甲でぬぐう。
    さっきよりも、さらに顔が赤くなったみたいだ。
    寝たわりには、身体がすっきりしないが、俺たちは生きてる。
    死ぬ心配もろくにしないうちに、眠ってしまったけど、まあ一安心だ。
    俺たちは来た時と同じようにタクシーでホテルへもどった。
    再びあの恐ろしげな、人間用とは思えない薬を飲んで、眠った。

    次に起こされた時は、ずっと気分が良くなっていた。
    熱も下がっている。
    みんなと一緒に食事をするのは目の毒だと言われ、俺たちは部屋で夕食
   を食べた。最初見た時は「なんて少ない!」と思ったが、食べてみるとそ
   うでもない。やや物足りなさはあるけど。
    ああ、みんなは何美味いもの食べてるんだろう?
    三度目の薬を飲んで、俺たちは無事みんなと合流した!
    長い、長い一日だったぜ。寝てばっかりだったけどさ。
    部屋へもどると、みんなから熱烈大歓迎!!
    病院での奇奇怪怪?物語で盛り上がり、とどめにもらった薬を見せてや    ると、盛り上がりは最高潮!!
    まったくみんなガキだな。
    気がつくと、部屋は20人近くのガキどもでいっぱいになっていた。
    ああ、生きてて良かった、なんて ね。
    それにしても、熱がでた日が悪いよな。
    明日ならよかったのにさ。
    明日はなんとかって言う女子高と交流会だぜ。
    今日は、観光の合間に自由時間もあって、遊べたのにさ。
    しばらくすると、保健の先生が俺を呼びに来た。
    家へ電話するんだってさ。
    ロビーには、和田もいる。
    ツアーコンダクターの人が、夕方に学校の方から家には連絡してあって
   心配してるだろうから、元気な声を聞かせて安心させてあげなさいと言わ
   れて、受話器を渡された。
    「ゆうちゃん?
     勇気?大丈夫なの?」
    母親の声。
    ずいぶん久しぶりに聞いた気がする。
    なんか知らないが、胸が熱くなるって言うか・・・・・
    だけどさ、横に和田や先生がいるんだぜ。
    何を言えっていうんだよ。
    俺は母親の気持ちも分からないではなかったが、ついぶっきらぼうな返
   事をして、電話を終わらせた。
    和田も同様だった。
    部屋へもどろうとしたら、他のクラスの奴らにつかまり、和田と二人で
   病院での貴重な体験談を披露することになった。
    ようやく解放され、部屋へもどるころには、かえって疲れなんかぶっ飛
   んだみたいで、元気が出てきた。
    十分な睡眠を取ったから?
    エレベーターを降りて、部屋のあるほうに向かおうとすると
    「伊東君!」
    聞き覚えのある声。
    ふりむくと、相良が立っていた。
    相良は俺のほうへ2,3歩あるいて、そこで止まってしまった。
    なんだか、ちょっと恐そうな、泣くのをこらえてるような顔だ。
    えーーっと、
    他の奴みたいに病院での話を聞きたいってわけじゃないみたいだ・・・

ゆうきのサバイバル日記 (67)

2008-07-27 | Weblog
    俺はそのまま和田の隣のベッドに、たぶん和田と同じように
   ぐったりとなって横になった。
    そして、結局そのまま朝をむかえた・・・・・。
    解熱剤を飲み、おかゆみたいな物を少し食べた・・・・気が
   する。
    朝になっても、熱は下がらない。
    食欲もない。口がまずい。頭が痛い。身体がだるい。
    先生が何回か来て、何か言っていた気もするが、ハッキリし
   ない。
    そして・・・・・
    和田と俺は病院へ行くことになった。
    保健の先生と、ツアーコンダクターの人に付き添われて、タク
   シーで病院へ。
    やけに大きな病院だ。
    総合病院っていうやつだ。
    韓国語だろうな、たぶん。ガンガンする頭に突き刺さるようだ。
    俺たちは、まず熱を計った。
    呼ばれて診察室へ入ると、医者が聴診器をあて、のどをみる。
    日本の病院と同じなので、少し安心。
    レントゲンを撮って、次に案内された部屋へ入ると・・・・
    ここは、注射をしたり採血をしたりする部屋じゃないか!
    俺と和田は顔を見合わせた。
    思うことは同じようだ。
    「伊東、大丈夫だよな、きっと」
    「そうじゃない?人間の身体はいっしょのはずだし・・・」
    「だよな、お前先にしてもらっていいよ」
    40度の熱でふらついている奴とは思えない力で、和田が俺の
   肩を押した。
    抵抗する気力もない俺は、あっという間にイスに座らされ、腕
   にゴムを巻きつけられた。
    絶体絶命!!
    看護婦のおばさんが、採血用のカプセルを6こもバラバラとテ
   ーブルの上に置くと、
   何かすごい剣幕でまくしたて、俺が頭を抱えようとした時、俺の
   腕に針を突き刺した。
    ゴムがきついような気がするけど、恐い顔で注射器をにらむ看 
   護婦のおばさんには、言えない雰囲気。
    っていうか、韓国語なんて知らない!!
    やっと終わって、和田と交代。
    和田の奴は、さっきよりビビっている。
    おばさん看護婦が、恐ろしい声で何か言ってる。
    きっと、早く来いって言っているんだろう。
    「いとーーーう・・・・。
     俺、恐いよー」
    バカな奴だ。俺のを見てたから余計恐いんだよ。

    結局、俺たちは点滴をされた。
    別の部屋で、和田と二人並んで。
    もう、くたくただ。
    しばらくうとうとしてたかもしれない。
    保健の先生が入ってきた。
    「あなたたち、風邪ですって。
     まあ、変な病気じゃなくてよかったわ。
     二人とも、この薬飲んでね」
    「げぇぇっ!?」
    先生から渡された薬は、赤、緑、青の錠剤とカプセルが茶と黄色
   の顆粒につかっている、超ど派手なしろものだった。
    「先生ーー、こんなもん飲んで、俺たち大丈夫?」
    どう見たって、このケバくドギツイ色は
    「これはおもちゃだから口にいれるな、注意!!!」
   っていうふうにしか見えない!思えない!
    「うーーん・・・
     まあ、日韓友好の証というか、うんとサービスしてくれてる気が
     するよねぇ・・・・。
     だから、きっと効き目バツグン!
     飲んだら身体がビックリして、すぐに治るわよ」
    「うぇーー?まじっすか?」
     俺たちが躊躇してると、看護婦さんが紙コップに入った水を持っ
    てきてくれた。
     なんだか知らないが、やけに長々としゃべって和田と俺に紙コッ
    プを渡すと、俺たちの顔を交互に見てニコニコしてる。
     どうやら俺たちが薬を飲むまで、立ち去るつもりはないようだ。
    「君たちは日本男児の代表だ。
     潔く、いっきに飲め!」
     保健の先生が、他人事だと思っていい加減なことを言う。
     しょうがないよな。
     まさか死ぬことはない・・・・・よな、きっと。
     それになにより、このままいつまでも立ってるのが辛い。
     和田と俺は、決死の覚悟で薬を飲んだ!
     薬の量が多いので、水をたっぷり飲んだ。
     気持ち悪い・・・・・・。
     俺たちは、再びベッドに倒れこんだ。
     いつの間にかうとうとし・・・・深い眠りに・・・・・。

     っていっても、別に死んじゃったわけじゃないから。
     念のため。  
   

ゆうきのサバイバル日記 (66)

2008-07-20 | Weblog
    ホテルに着いて、部屋割りを確認して、やっと部屋へ!
    ホテルなんか、あんまり泊まったことないけど、特に韓国らしい
   ってこともなく(っていうか、日本のホテルでも日本らしいとこっ
   てないんじゃないか?)、「まあ、こんなもんか」と思った。
    「ここって、俺たちの街より都会だよな?」
    窓の外を眺めながら、北崎と梅原が何やら話している・・・・。

    「伊東、どうした?」
    気がつくと、目の前には北崎の顔が。
    どうやら、うとうとしていたみたいだ。
    「伊東、お前大丈夫か?」
    北崎の後ろから梅原が顔をのぞかせる。
    「え・・・・、う、うん・・・・」
    ベッドから起き上がろうとすると、頭がくらくらする。
    バスに乗って観光してる途中から、なんか頭が痛くなってきていた
   が、今はのども痛いような・・・・・。
    これって、かなりやばいかも・・・・?
    「一応、熱計ってみるわ」
     俺は保健の先生がいる部屋へ行くことにした。
    先生は部屋にいた。
    「伊東君、どうしたの?」
    「えーーっと、もしかしたら熱があるかもしれないので、念のため」
    「ふーーん」
    先生はおれの顔をしばらく見ていたが
    「そりゃあ、きっと高い熱が出たんだわ。9度はあるわね。
     一応計ってみようか?」
    と、いやなことを言う。
     体温計を手渡しながら
    「はい、そこに並んで寝なさい」
    と、奥のベッドを顎でしゃくる。
    ベッドの方へいくと、そこには何故か和田がぐったりと横たわっていた!    顔が赤い。息も苦しそうだ。
    「ピ、ピピーーッ!!」
     体温計を取り出すと、39度8分だった。
    ウソだろ?
    修学旅行だぜ。
    飛行機に乗って、来たばかりなんだぜ。
    今日は初日だぜ。
    今晩は、本場焼肉じゃないか。
    ああ、天井が回る・・・・・・・。 
      
      

ゆうきのサバイバル日記 (65)

2008-07-13 | Weblog
     日本から韓国なんて、あっという間だよ。
     それでも、飛行機が離陸してからグングン上昇して雲をつき抜け
    る時は窓がまっ白になって、視界ゼロだもんな。びびった奴もいた
    みたいだ。
     雲を抜けて青空につつまれ、下に雲の絨毯があることに気付くと
    「うわぁ!!」と、歓声があがるなんて、可愛いだろ?
     「すっげえぇぇ!!!
      あの上だったら、絶対あるけるぞ!
      落ちそうにないよな、伊東?」
     なんて、馬鹿なことを言う奴がいなきゃね。
     おまけに、なんだって俺に同意を求めてくるんだ?
     通路をはさんで、さらに2列前の席から身をのりだしてわめくマサ
    ヤをにらんでやったけど、全然通じてない。
     「ほんと、すげぇーよな。
      ちょっとだけ降ろしてくんないかな?」
     「アホか!!
      お前、そこまで言うと本気かと思われるぞ」
      ようやくアテンダントのお姉さんが笑いをこらえてるのに気付い
     た近くの奴らが、マサヤを黙らせる。
      まったく、俺たちの学校のレベルを疑われるよ。

     韓国の空港を出ると、俺たちはバスに乗って市内見学しながらホテ
    ルへ向かう。
     無事に入国した俺たちは、緊張もとけごきげんだった。
     なかでもサッカー部の神山は有頂天だ。
     あいつは、入管の窓口でいきなり
     「I have a good flight.
I hope we have a good time in Corea!!
Thank you!]
     って係員に言ったんだ。
      係員も驚いたろうが、俺たちはもっとたまげた。
      お世辞にも神山は英語が得意ではない。
      俺よりほんの少しいいだけだ。
      それを俺たちはみんな知ってるから、この後どうするつもりか
     不安だった。あいつの英語力じゃ、すぐに底が見える。
      案の定、少し間をおいて、落ち着きを取り戻した係員が英語で
     何か言い出した。
      しかし、神山は答えない。当り前だが・・・
      「ya,ya」と、どう見ても適当に相槌をうっているだけだ。
      係員は肩を少しすくめると、神山を通した。
      その後は、気のせいか時間が短かったような・・・・?
      楽だったけど、よかったのかな?
      神山は、「俺のおかげで早かっただろ?」と、得意げだ。
「神山君て、意外とお調子者ねぇ?」
      前の方で女子か小声で話してる。
      「やあねぇ。
       あんたの後ろには英語の得意な都築さんがいるから、なんか
       あっても助けてもらえるから大丈夫って言ったら、その気に
       なっちゃって」
      「ホント、まさか本気でやるなんて、ビックリよねぇ」
      「ルックスもまあまあだし、けっこうイケテルと思ってたのに
       うーーん、あんまりバカだと・・・」
      「いやぁー!マジ?」
      「違うって!
       少しマシってことだって・・・」
      「そお??あやしいーー?」
      「やめてよー。
       どっちにしても、これで完全にバツ!だもんね」
       まったく、どうして女って奴はこうも勝手なんだろう?
      バスから見る風景は、少なくとも俺たちの街よりは都会的だ。
      今晩は、レストランで本場焼肉だ!
      俺は秘かに楽しみにしている。   

  

ゆうきのサバイバル日記 (64)

2008-07-06 | Weblog
    俺たちを乗せた飛行機は無事に離陸した。
    日本よ、しばしの別れだ!!
    なんてね、ここまでくるのが長かった。
    なにしろバスケの先輩達から、出入国の難しさをさんざん聞かされ
   脅かされていたからだ。
    「相手は、俺たちが高校生ってこと分かってるだろ?
     顔を見てさ、英語で質問してくるだぜ。
     内容の難しさにランクがあって、一番簡単なヤツができなかった
    ら、別室でペーパーテスト。
     なんとか飛行機に乗れても、入国審査じゃ意地悪な役員に当たっ
    たら悲劇だぜー。
     みんなを見送ってさ、一人日本へ帰るんだぜーーー。
     恥だよ、恥!」
    と、こんな調子さ。
     まさか!?と思っていたが、他の部活の奴らも先輩達から同じよう
    に聞かされているのを知って、みんなパニックさ。
     先生に聞いた奴もいたが、
     「うーーん。
      まあ、普段の授業程度だろうから、しっかり授業を受けなさい」
    と、はっきりしない。
     しょうがないから、ハワイへ行ったことがある母親に聞いたら、
     「そんなのあったりまえじゃない!?
      お母さんは、結婚式の様子や、子供たちの性格とか聞かれたわよ。
      ああ、そういえば、お母さんの2,3人前の人は、他の係員に
      どこかへ連れて行かれたんだわ。
      あれは、再テストか、裏口から帰されたのかもね」
     「でも、そんなに難しい質問じゃないよね?」
     「相手の顔を見てじゃないの?
      勇ちゃんなら、結構易しいレベルの質問じゃない?」
     「どういう意味だよ?
      N校の生徒だぜ。」
     「たとえN校でも、係員の人はプロよ。
      顔を見たら、相手の知的レベルなんて、一発よ!
      勇ちゃんには、きっとすごく簡単な質問をされると思うけど、
      それでしくじったら、もう後がないからね!」
     「う、うーーん。・・・・・」

     なんて親だ!!
     出国審査なんて、どうってことないんだぞ!!
     少なからずビビッテいた俺たちは、初め自分達が審査を通過した
    ことが分からなかった。
     何人も集まって、ようやくホッと肩から力が抜けた。
     飛行機に乗るのだって、ニュースで見るみたいに、タラップって
    いうの?ああいうのを登っていくのかと思っていたのに、指示にし
    たがって歩いていったら、いつの間にか機内だぜ。
     趣っていうのがないよな。
    
     なんだかんだ思い出しているうちに、飛行機は韓国に!!
     いやあ、近いもんだよな。
     お隣さん、だよな。
     韓国のり、きむち、ビビンバ・・・・。
     本場の料理が俺を待っている。  
      

ゆうきのサバイバル日記(63)

2008-06-30 | Weblog
   修学旅行のバスは予定通り出発した。
   空港までおよそ1時間。
   バスが動き出したとたん、俺たちは興奮と緊張とどこかほっとした
  安心感とがごちゃ混ぜになった不思議な感覚になった。
   しばらくすると、パスポートを取り出して写真の見せ合いが始まっ
  た。
   高校生だぜ。可愛い奴らだ。
   俺のまわりでも写真を覗いては何やら批評が始まったので、仕方な
  俺もカバンからパスポートを取り出す。
   「えーーー!!
    伊東、お前これって寝起きで撮ったのか?」
   後ろの席から身体を乗り出して、能島が余計なことを言う。
   「えー?どれどれ、見せろよ」
   軽薄な奴らが、すぐに身を乗り出してくる。
   「げーー!!
    伊東、マジか、これ?」
   「お前、写真撮る前に顔くらい洗えよ」
   「完全に半分寝てるな」
   口々にかってなことをほざく。
   いっとくが、俺はちゃんと顔を洗って写真屋へ行った。
   さらに付け加えるなえら、行く前だって眠ってなんかいなかった!
   俺の写真を撮ったのが、すごいばあさんだったせいだ。
   この写真については、家でも一悶着あった。
   父親が写真を見て
   「このボケーっとした顔、お母さんソックリだな、お前」
   と、言ったことから母親がヘソを曲げて
   「失礼な!
    私はこんなボーっとした顔してません!!」
   「いや、絶対にお前にそっくりだって。
    なあ、勇気。この顔お母さんににてるだろ?」
   「ぜーーったい、似てない!
    私はもっと知的な顔してるわよ。ねえ?」
   って、俺の立場はどうなるんだよ?
   なんて、浸ってる間に俺のパスポートは、後ろの座席まで移動し
  ている。もう勝手にしてくれ。
   「おーー!!
    すごいぜ、これ。
    これ見せたら、入国拒否されちまうぜ」
   俺のところに回ってきた写真は、こっちをやや下から睨んでいる、
  超迫力の河野の顔だった。
   みんなが騒ぐはずだ。
   河野は野球部で、陽に焼けて色黒。
   坊主頭を通り越してスキンヘッドにちかい。
   しかも練習中に左目の下に打球を受け損なってできた、あざがはっ
  きり写っている。写真を撮る時、なんとか左側を隠そうとした結果だ
  ろう、なんか歪んだ表情で確かに恐い・・・・かも。
   パスポートが戻ってきた頃には、朝ごはんのかわりにパンを食べだ
  す奴がチラホラ。
   機内食というものを食ってみたかったが、残念ながら出ないという。
   なんだかんだ言ってるうちに、バスは空港に。
  「飛行機に乗ってしまったら、後戻りはできんからな。
   気分の悪い者、体調に不安のある者はいないか?」
  先生が朝から3回目の質問。
  だあれもいないようだ。
  俺も不思議なくらい、鼻水がピタリと止まったモンな。
  ま、日ごろの行いがものをいうんだろうな、これってさ。
  もうすぐ、日本を離れる。
  俺たちが乗る飛行機はどれだ? 
       

ゆうきのサバイバル日記(62)

2008-06-11 | Weblog
     今日から修学旅行だ。
     韓国だ。
     外国だ。
     飛行機だ。
     やはり緊張のためか、目覚ましが鳴るとすぐに?目覚めた・・・・、
    はずだ・・・・・、と、思う。
     4時50分。
     しばらくすると、なにかぼやきながら母親が部屋を出て階段を下りて
    行った。
     よし!!
     これで集合に遅れることはない。
     なにせ、送っていってくれる母親が寝坊しては一大事だからな。
     俺は安心して、再び眠りについた。
    
     枕の下で携帯が鳴っている。
     5時10分。
     北崎からの目覚ましコールだ。
     ホントに頼りになる奴。
     3分後には、俺のもうひとつの目覚ましが鳴り出す。
     さあて、そろそろ起きようかと寝返りをうったときに母親の呼ぶ声。
     返事をして起き上がる。
     何から何までいい感じではないか。
     さい先がいいというか・・・。

     下へ降りていくと、
     「ちょっと、ゆうちゃん。
      今朝の目覚ましはなんなの?
      早すぎるでしょ?
      止めただけで、起きないくせに」
     母親がミルクを飲みながら俺を睨んでみせる。
     「お母さんが寝坊したら大変だから、俺が気をきかせてあげたんじゃ
      ないか」
     「そういうのを、余計なお世話!っていうのよ。
      お母さんは、ちゃんと自分の目覚ましを持ってるんだから」
     「それじゃ心配だから、俺が気を使わなけりゃいけないんじゃないか」
     「バカいいなさい。
      のんびり食べてると、遅れるわよ。
      のどはどう?
      薬持って行くのよ」
     「大丈夫みたい。
      まあ、一応持って行くけど・・」  
なあんちゃって。
      昨日寝る前は鼻水がしばらく止まらなくてあせったけど、今朝はなん
     ともないから、一応念のため朝は飲んでいくことにするけど、持って行
     く必要はない。
      保健の先生だって一緒に行くんだし。
      朝飯をゆっくり食べても、十分に余裕!!
      ゆとりを持つっていいねえ。
      車に乗ってすぐにメールが入った。
      マサヤからだ。
     「起きたか?
      もう、バスが来てるぞ。急げよ!!」だって。
      マサヤの奴、もう集合場所に行ってるのか?!
      こういうことだけは素早いんだよな。
     「今、車の中。
      あと10分で着くと思う」
      天気もいい。
      気分もいい。
      時間にも余裕。
      修学旅行にはもってこいの朝だ。