東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「マリー・ローランサンとモード」展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2023年03月03日 | 展覧会(西洋美術)
マリー・ローランサンとモード
2023年2月14日〜4月9日
Bunkamuraザ・ミュージアム
 
 
 「マリー・ローランサン美術館」は、日本の美術館である。
 マリー・ローランサンの世界で唯一の専門美術館で、油彩画98点、水彩画・版画・その他を含めると600点以上のコレクションを所蔵するという。
 1983年7月に長野県茅野市蓼科高原に開館するが、2011年9月に閉館。2017年7月に東京・ホテルニューオータニにて再開館し、2019年1月に閉館。閉館後もコレクションを維持し、展覧会への貸出しも行っている。
 
 
 私的には、2014年の三鷹市美術ギャラリー「マリー・ローランサン展 〜女の一生〜」でマリー・ローランサン美術館のコレクションを見ている。
 ローランサンの初期から晩年、1902年から1950年代までの作品69点の展示で、そのほとんどがマリー・ローランサン美術館の所蔵作品であった。
 
 
 本展も、マリー・ローランサン美術館の所蔵作品を中心とするローランサンの回顧展かと思っていたが、違った。
 
 
 本展の主役はローランサンであるが、ローランサンだけではない。
 本展のもう一人の主役は、ローランサンと同じく1883年生まれのココ・シャネル、そして、1920年代、レザネ・フォル(狂騒の時代)のパリのモードと女性たちである。
 
 対象期間が1920年代であるため、ローランサンも、もっぱら1920年代の作品が出品される。
 その前後、1910年代の作品や1930年代の作品も多少あるが、1940年以降の作品はなく、メインは1920年代の作品である。
 
✳︎1910年代:キュビスムの作風
✳︎1920年代:明るく強い色彩に微妙な階調のグレーに溶け込むピンクや青、儚げで、多様性や曖昧さ、性別不詳の不思議な魅力を持つ人物像。
✳︎1930年代:はっきりとその存在を主張する人物像。女性らしさ。
 
 また、マリー・ローランサン美術館の所蔵作品比率は高いのは確かだが、それ以外にも、パリのオランジュリー美術館およびポンピドゥー・センター、国内からもポーラ美術館、名古屋市美術館、ひろしま美術館の所蔵作品が出品される。
 
 
【本展の構成】
 約90点の出品。
 うちローランサン作品は31点。
 
1 レザネ・フォルのパリ
 ・ローランサンとパリ社交界の女性たち
 ・エディエンヌ・ド・ボーモン伯爵の舞踏会
 ・シャネルを身にまとう社交界の女性たち
2 越境するアート
 ・ローランサンとバレエ・リュス「牡鹿」
 ・シャネルとバレエ・リュス「青列車」
 ・ローランサンと装飾美術
 ・ローランサンとニコル・グルー
 ・アール・デコ博1925
3 モダンガールの登場
 ・1910年代:ポワレからシャネルへ
 ・シャネルの帽子店
 ・ローランサンと帽子の女たち
 ・1920年代:モダンガールの登場
 ・1930年代:フェミニンへの回帰
 ・1930年代のローランサン
エピローグ 蘇るモード
 
 
【印象に残る作品】
 
マリー・ローランサン
《マドモワゼル・シャネルの肖像》
1923年、オランジュリー美術館
 ローランサンと言えば、私的には、この作品。
 シャネルの注文により制作された肖像画。シャネルは出来上がりに満足せず、描き直しを要求するも、ローランサンは譲歩せず、結局シャネルは作品の受け取りを拒否したというもの。
 
 
マリー・ローランサン
《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》
1923年頃、ポンピドゥー・センター
《黒いマンテラをかぶったグールゴー男爵夫人の肖像》
1923年頃、ポンピドゥー・センター
 1886年生まれ、ニューヨークの銀行家の一人娘で、先祖がナポレオン軍の将軍で功績をあげ、ナポレオンの名を名乗ることを許されたというナポレオン・グールゴー男爵の夫人エヴァ・ゲバートの肖像画2点。
 男爵の注文により制作されたピンクのコートをいたく気に入った夫人は、すぐにもう1点注文。完成したのが黒いカンテラで、本作を契機に、ローランサンは肖像画家としてパリの社交界の寵児となる。
 なお、グールゴー男爵は美術コレクターとしても知られる存在らしく、ローランサンと同時期にマティスにも妻の肖像画を注文したらしい。さて、マティス作品を夫人はお気に召したのだろうか。
 
 
【撮影可能エリア】
 
 エピローグ「蘇るモード」は、撮影可能エリア。
 ローランサン作品1点と、シャネルのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルドによる、ローランサンからインスピレーションを受けたドレス(シャネル2011年の春夏オートクチュール・コレクションより)が展示。
 
マリー・ローランサン
《ニコル・グルーと二人の息子、ブノワットとマリオン》
1922年、マリー・ローランサン美術館
 
 
カール・ラガーフェルド
《ピンクとグレーの刺繍が施されたロング・ドレス(2011年春夏オートクチュール・コレクションより)》
2011年、パトリモアンヌ・シャネル、パリ
 
 
 私的にはローランサン自体に強い関心を持つわけではないが、1920年代パリの「レザネ・フォル(狂騒の時代)」の一端が伺えて、過去見た展覧会、例えば、キース・ヴァン・ドンゲンやキスリング、藤田嗣治、エコール・ド・パリの画家たちの活躍もあわせ特異な時代だったのだろうことを思う。
 
 
 2023年は、ローランサン生誕140年。
 本展は、このあと京都市京セラ美術館と名古屋市美術館に巡回する。
 また、12月〜翌年3月に、アーティゾン美術館にて別途のローランサンの回顧展が開催される予定。
 
 
 
 Bunkamuraザ・ミュージアムは、本展の閉幕をもって長期休館となる。
 1/31に営業終了済みの東急百貨店本店土地の開発計画に伴うもので、2027年度中までの休館を予定しているという。
 休館期間中「Bunkamuraも経年使用による施設の補修や設備の更新などを行うとともに、新築される施設との一体化に向けた改修工事を実施する予定」とのこと。
 休館期間中も、他の場所で展覧会を開催するとのことで、現時点では、次の展覧会開催予定がHPに掲載されている。
 
ウェス・アンダーソンすぎる風景展 
あなたのまわりは旅のヒントにあふれている 2023年4月5日〜5月26時
寺田倉庫G1ビル
 
ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
2023年7月8日〜8月23日
ヒカリエホール ホールA(渋谷ヒカリエ9F)
 
平間至展 写真のうた -PHOTO SONGS-  
2023年7月8日〜8月23日
ヒカリエホール ホールB(渋谷ヒカリエ9F)


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。