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ゴーガンのブルターニュ、日本人画家たちのブルターニュ -【その3】「憧憬の地 ブルターニュ」展(国立西洋美術館)

2023年04月14日 | 展覧会(西洋美術)
憧憬の地 ブルターニュ
モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷 
2023年3月18日〜6月11日
国立西洋美術館
 
 
「風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派の土地と精神」
 
 ゴーギャン作品が11点(うち油彩9点)。
 他には、エミール・ベルナール、ポール・セリュジエ、アンリ・モレ、マキシム・モーフラ、アルマン・セガンの計5名のポン=タヴェン派の画家たちが取り上げられる。
 
 ポン=タヴェンは、この辺り。
 
 
 本展出品のゴーガン油彩画9点を、ゴーガンのブルターニュ滞在歴とからめて見る。
 
1886年7月末〜11月はじめ
初めてのポン=タヴェン滞在
 
《ボア・ダムールの水車小屋の水浴》
1886年、ひろしま美術館
 
《ポン=タヴェンの木陰の母と子》
1886年、ポーラ美術館
 
 
(1887年4〜11月、パナマ、マルティニーク島滞在)
 
 
1888年2〜10月
2度目のポン=タヴェン滞在
 
《ブルターニュ風景》
1888年、国立西洋美術館
(常設展展示時に撮影)
 
《水辺の柳、ポン=タヴェン》
1888年、東京富士美術館
 
《海岸の岩/木靴職人》
1888年、愛知県美術館
 
 
(1888年10月〜12月、ゴッホとの共同生活)
〈参考:本展非出品〉
《アリスカンの並木路、アルル》
1888年、SOMPO美術館
(所蔵館展示時に撮影)
 
 
1889年3月
ポン=タヴェン滞在
 
 
1889年7月〜90年2月
ポン=タヴェン、ル・プルデュ滞在
 
《海辺に立つブルターニュの少女たち》
1889年、国立西洋美術館
 
《家畜番の少女》
1889年、静岡県立美術館
 
 
1890年6〜11月
ル・プルデュ滞在
 
《画家スレヴィンスキーの肖像》
1891年、国立西洋美術館
✳︎ポーランド人画家。1889年にゴーガンと知り合い、ル・プルデュで活動する。
 
 
(1891年6月〜93年6月、タヒチ滞在)
 
 
1894年4〜11月
ポン=タヴェン滞在
 
《ブルターニュの農婦たち》
1894年、オルセー美術館
 本展の目玉作品の一つ。
 第一次タヒチ滞在から帰国後の作品。
 女性たちが一段とエキゾチックさが増しているのは、その容貌にタヒチの女性たちが投影されているから。なるほど。
 
(1895年7月、再びタヒチへ)
 
 
 
 エミール・ベルナールは、《ポン=タヴェンの市場》1888年、岐阜県美術館、ポール・セリュジエは、《森の中の焚火》1889-90年頃、岐阜県美術館、を特に見る。
 
ポール・セリュジエ
《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》
1922年、ヤマザキマザック美術館
 残る3人は、よく知らない。
 
 
 
「日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし」。
 
 ブルターニュを描いた日本人画家たちの作品が展示される章。
 当然に国立西洋美術館はそのような作品を所蔵していないので、国内各地の美術館から作品を集めている。
 
 1891〜92年の黒田清輝&久米桂一郎。
 1910〜20年代の日本発、パリ経由、ブルターニュ行の日本人画家14名。
 
 以下、撮影可能作品より。
 
 
黒田清輝
《ブレハの少女》
1891年、アーティゾン美術館
 この「真赤な髪を持った百姓の子供」が、ブルターニュの少女だったとは初めて認識する。
 黒田はブレハ島を二度、久米桂一郎ともに滞在する。
 最初は、1891年9月11日〜30日。
 二度目は、1892年8月27日〜9月17日。
 本作は、最初の滞在時の作品とされる。
 ブレハ島は、この辺りに位置する。
 
 
久米桂一郎
《林檎拾い》
1892年、久米美術館
 ブレハ島のおそらく滞在先のオテル・サントラルの庭を舞台に、ブルターニュのコワフと木靴を身につけたふたりの少女が林檎を収穫する様子が描かれる。
 
 
小杉未醒(放菴)
《楽人と踊子》
1921年頃、茨城県近代美術館
 小杉は、1913年7月〜9月まで、山本鼎らとケルファニー=レ=パンに滞在する。
 本作は、帰国して時間が経過してからの作品。
 左翼は、ブルターニュの木靴を履いてボンバルド(オーボエに似た楽器)を演奏する男性たち。 
 右翼は、その音色に合わせて踊るコワフを被った女性たち。
 典型的なイメージで、ちょっといじればスイス・アルプスのイメージにもなりそう。
 ケルファニー=レ=パンには、この辺りに位置する。
 
 
 他の日本人画家13名は、次のとおり。
斎藤豊作
金山平三
満谷国四郎
山本鼎
森田恒友
安達源一郎
黒田重太郎
鹿子木孟郎
藤田嗣治
長谷川潔
中村義夫
坂本繁二郎
岡鹿之助
 
 
 フランスや欧州の画家たちの流儀にしたがい、地方を旅行してみたパリの日本人画家たち。
 断片的とは言っているが、こうして日本人画家の作品をも楽しめるのは、良い。
 
 
【本展の構成】
1 見出されたブルターニュ:異郷への旅
(1)ブルターニュ・イメージの生成と流布
(2)旅行者のまなざし:印象派世代がとらえた風景 
2 風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派の土地と精神」
3 土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち
(1)アンリ・リヴィエールと和訳されたブルターニュ 
(2)モーリス・ドニと海辺のアルカディア
(3)「バンド・ノワール」と近代ブルターニュの諸相
4 日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし


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