空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

宙組「Never Say Goodbye」(2022)

2022-03-07 14:48:00 | 観劇(タカラヅカ)
オミクロン大流行の煽りでなかなか幕が開かず、
チケット取ってた日も中止になって、
取り直して何とか行けた大劇場。

16年ぶりの再演で、
初演は真風氏の初舞台。
初舞台生に水夏希そっくりの子がいる!と話題になっていた、あの春から16年。

世紀のゴールデンコンビ、タカハナのサヨナラ公演だった初演。
16年経って。
たかこさんはこの作品の作曲者、ワイルドホーン氏と結婚しちゃって、
お花様はまた東宝エリザでシシィを演じると発表があり、
アギラールだったあひちゃんは、まさかまさかのバラエティタレントとして大ブレイク。
たかこさんの千秋楽パフォーマンス(お立ち台でネバセイ主題歌生歌唱)は未だに伝説だけど、
感染症対策で入り待ち出待ちはできなくなり、
……そしてヨーロッパでは戦争が起こっている。

「侵略者」、「内戦」、
「ファシスト」、「コミュニスト」、
「義勇軍」、そして「オリンピック」。

 世界の未来はどこにある/ファシズムか民主主義か
 世界の未来はどこにある/アメリカかソビエトか
(「ここはハリウッド」)

大好きな作品で全曲覚えているからこそ、
「ノーパサラン」も「俺たちはカマラーダ」も「ONE HEART」もしんどい。

素晴らしかったのですよ、宙組コーラスの本領発揮。
初演でたっちんが歌い上げた「ノーパサラン」のソロも、
るいまきせ君がど迫力で熱唱してくれたし。
ラ・パッショナリア(情熱の花)って実在の人物なんだよね、初演の時は知らなかった。

フィナーレでキキちゃんが歌った主題歌一幕バージョンが胸に響く。

 この世界が たとえ暗闇に閉ざされているとしても
 いつか朝日が差し込む日が訪れる
 僕らの力で 闇を晴らそう

戦争の酷さも、
分かりやすい言葉に酔って敵味方に分断することの危険も、
プロパガンダの恐ろしさも、
扇動者は安全圏にいることも、
「自分で見る」ことの大切さも、
全部入っていたんだなあ。


びっくりするぐらい、初演とセリフが変わっていなくて。
変わったのはセットと衣装と、
真風氏のダンスが増えてるのと、
(初演のたかこさんは事故の後遺症がまだあったから)
「俺にはできない」の曲ぐらい。
(初日の記事で「新曲」とあって「?」となったけど、確かに新曲だった。)

「あなたで4人め」とか、「もって3日」とかは変えて良かった気がするんですけど!
一幕の感動を返せ!ぐらいに、二幕のアギラール周りはツッコミ所が多すぎるからなあ…

逆にエンリケの「80年近く前のことだよ」は、変わってるよね?
1936年スタートだから、2022年基準だと確かに80年以上経ってるけど、
ペギー父(母の可能性もあるが)の生年を変えられない以上、ペギーいくつよ、って話になっちゃうので、ここは無理に現在にしなくて良かったのでは。
1992年(バルセロナ五輪)以降でさえあればいいんだから。


真風さんのジョルジュ。
たかこさんは私の宝塚における初恋だから、どうしても過去の記憶が邪魔をする。
たかこさん以外の歌う主題歌を受け入れられるだろうか、ってぐらい心配だったんだけど、初めの曲からとっても丁寧に歌ってくれてるのが分かって嬉しかった。
「僕はデラシネ」は、一幕では正直なかなか大変なことになっていたけど、二幕のリプライズはとっても良かった。
比べてどうこうではなく、真風さんのジョルジュ。

潤花ちゃんのキャサリンは、正しく「小娘」だったと思う。
「ただの愚かな女」、この歌詞嫌いだけど、ここに帰結しないといけないから、役作りとしては賢すぎなくて正解。
でも真摯に現実と向き合おうとする姿に、ジョルジュが惚れたのが分かる。
「全ては君のために」で最高潮を迎える、正しいラブストーリー。

そして、タカハナに比べて「何の説明も無いですが誰が見ても運命の恋人」感が薄れていたのと逆に、
まかキキが「何の説明も無いですが誰が見てもソウルメイト」感に溢れていたのが最高だった。
てか、主役カップルの心の動きに対して、ジョルジュとヴィセントの描写少なすぎだから!
ジョルジュは最終的にキャサリンと別れてヴィセントのために死ぬんだから、そっちの描写こそ必要でしょうが!
と、今更脚本にツッコミ。
何の説明も描写も無くても「親友」「背中を預け合える戦友」になれる、まかキキ最高。
キキちゃんのカリスマっぷりが素晴らしかったです。

で、
「和央ようかと真風涼帆」
「花總まりと潤花」
「大和悠河と芹香斗亜」以上に、
ギャップが激しくて私の知覚に混乱を来したのが、
「遼河はるひと桜木みなと」です笑
(注:2人とも大好きですよ!)

ちっちゃくて歌の上手いアギラールなんて!(暴言)

そして歌が上手くても残念キャラに変わりはなかった…

まぁ、ずんちゃんはベネディクトもやってたしな…どっちもイケコ悪役の型の一つだし…と思いながら見ていたんですが、
ヒーローもののオーシャンズに対してシリアス歴史物の悪役として、ほんまに残念すぎるアギラール。
サンジョルディの小芝居の場面で剣持たされるアギラール君(初演もあんな場面あったっけ)をどういう目で見たらいいか分からないまま救出劇が終わりました…
いろいろいたたまれないのよね。


しかしそういうツッコミどころを全部吹っ飛ばすフィナーレ!!!
スパニッシュの場面が息を呑むってか、「カッコ良すぎて息ができない」レベルのもので、
いや、本編の悲劇どこ行った?というバランスの悪さは感じるんですが、
素直にええもの見たなーと思います。

この作品が長らく再演されてなかったのは、
サヨナラ公演だから手をつけにくかったからだけでも、
ツッコミどころが多いから避けられていたからでもなく、
作り上げるのが本当に大変な大作だったからだ、というのが今回の実感。
だからこそ、宙組の皆さん。

再演してくださって、ありがとうございました。



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