3月6日付東京新聞夕刊の文化面より
◇「日本人が最も好む花が桜であることは、言うまでもない。
その理由は、まさにこの花の開花の期間が、
殆どうらめしいほど短い上、
盛りを見届ける前に花が散ってしまわないかという恐れが、
ひどく大きいからである」
(1990年刊の『日本の美意識』から)
◇「日本人が自らの文化は
外国人にわからないと決めてかかるのは、一番よくありませんね」
(2008年10月、文化勲章受賞が決まって)
◇「ニューヨークを離れるのは非常に寂しいが、
(日本永住の)決断は今でも正しいと信じている。
日本で死ぬことは私にとり、とてもふさわしいことだ」
(2011年8月、日本への出発を前に)
◇「五十年前の政治家の名前は忘れられても、
五十年前の文学作品は読まれるのです。
文学には力があるのです」
(2012年2月、名古屋大学の公演で)
◇「生きるとしたら何を一番したいか。日本にいたいと。
(既に持っている)永住権では満足できませんでした。
特に東北の地震、津波、原発があって、外国人は日本から逃げた。
私は違う。日本にいたい。そう思いました」
(2012年3月、日本国籍を取得して)
◇「文楽は世界に誇る日本の宝。
外国人だった時は、お客さんなので、
文句を言うのは失礼だと思っていましたが、今は日本人。
『大阪の政治家の判断は間違っている』とはっきり言います」
(2012月9月、大阪市の文楽への補助金削減を受けて)
◇「とても素晴らしい儀式でした。四回も拝観できて、
九十一歳まで生きていて本当に良かったと思います」
(2013年10月、伊勢神宮=三重県=式年遷宮遷御の儀を見守って)
◇「『源氏物語』がなぜ、今も人の心に訴えるのか。
それを考える上で大事なことは、女性が書いたということです。
この一点はとても大きい。
もし同時代の男性、平安朝の貴族の男性が書いたら、誰が出世したとか、失脚したとか、
そういう話ばかりになって、面白くなかったでしょう」
「私はもともと戦争に反対していましたが、
日本兵の日記を読んだとき、いよいよその思いが強くなりました。
そして九十六歳の今も、その気持ちは変わりはありません。
むしろ、戦争は絶対あってはならないことだという気持ちが、
どんどん強くなっているように思います」
(2018年刊、作家・僧侶瀬戸内寂聴さんとの対談『日本の美徳』から)