
世間で評判だという是枝裕和監督映画『海街diary』を
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「そして父になる」「誰も知らない」などで国際的にも高い評価を受ける是枝裕和監督が、第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞やマンガ大賞2013を受賞した吉田秋生の人気コミックを実写映画化。湘南を舞台に、異母妹を迎えて4人となった姉妹の共同生活を通し、家族の絆を描く。鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、15年前に家を出ていった父の訃報が届く。葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、そこで異母妹となる14歳の少女すずと対面。父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずだが、葬儀の場でも毅然と立ち振る舞い、そんな彼女の姿を見た幸は、すずに鎌倉で一緒に暮らそうと提案する。その申し出を受けたすずは、香田家の四女として、鎌倉で新たな生活を始める。主人公の姉妹を演じるのは、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。
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自分は是枝裕和監督作品を常に観てきた訳じゃないし、原作の漫画も知らない。この手の映画は自分からすすんで観ることはめったにないのだけれど、露出も多く、キャストも豪華
で、観終えた後の感想を単純に並べてみると……
・最初から長澤まさみの着替えシーン!
・4姉妹が仲睦まじくほのぼの!
・とにかく葬式やら法事が多い!
・飯食ってるシーンも多い!(特に夏帆)
・広瀬すずを大フィーチャー!(サッカーがかなり巧い)
というところか。
登場人物のリアルな会話(広瀬すずには本番前までセリフを指示しなかったとか)や美しい風景描写が是枝作品の持ち味なのかと思うほど、人間や風景の映し方には一つの美学みたいなものを感じた。下品に言えば、「鎌倉や湘南に行きたくなった」「鎌倉で古民家に住んでみたい」「桜並木のアーチを二人乗り自転車で走りたい」と思わせるには十分の描き方というか。
他に女を作って死んでしまった父親の腹違いの子を迎えて暮らすという3姉妹、母親との確執、妻ある男性との恋愛など、人間関係は複雑なのだが、その重苦しさを季節感溢れた映像美によって抑えるかのように見せていて、そのあたりは、スッと入り込めたという人と描写が軽薄ではないかという人とで意見が分かれるかもしれない。
個人的には、初めの三姉妹が四女のすずと出会った山形の田舎で“一番いい眺めの場所”に行き「ここが何となく鎌倉に似ている」と長女の幸(綾瀬はるか)、次女の佳乃(長澤まさみ)、三女の千佳(夏帆)が言う場面で、ストーリーのクライマックスが(鎌倉で同じような景色が見える場所に行って話をリンクさせるんだなと)読めてしまったこともあって、ストーリーとして面白いということはなかった。
特段、巧妙な伏線とかはなく、感情の起伏も少ない。視覚的にドラマティックに強調して見せていく手法ではないから、そのようなストーリーを期待する人やその手の映画好きには物足りないことこの上ないと思う。
一方で、何気ない日常生活のなかに溢れるさまざまな出来事を大仰にフォーカスすることなく淡々と描いていくジワジワと沁みてくるような作品が好きな人には、映像も含め、素敵な作品と感じるはずだ。『かもめ食堂』みたいな。菅野よう子が手掛ける音楽との相性も良く、オーガニックなデトックス効果作品といえるかもしれない。
思うのは、この作品を第68回カンヌ国際映画祭に出品とかするからどれほどの作品なのかと期待値が高まる訳で、単純に“ある人間味あふれる4姉妹の物語”として見れば、“豪華キャスト揃えて、広告費かけて、それでこのストーリーでカンヌ??”とか悪口は叩かれなかったのではないかと。良くも悪くも(フジ)テレビ(が作る映画)的な手法にも思えたり。
良く言えば、重苦しい人間模様を四季折々の美しい風景によって抑制を効かせ感受性や共感に訴えた作品、ということになるだろうか。刻々と過ぎていく日常をありのままに映し出すことで何かを感じ取ってもらいたいというのが是枝作品の特徴だとしたら、まさにザ・是枝作品といえる映画だった。“他愛もないことの素晴らしさ”、それを伝えているのが良かったと思う。
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前にも述べましたが、広瀬すずがかなりフィーチャーされていて、バスタオル一枚で前をバッと開けて涼むシーンとかもあって(もちろん後ろ向きに)、広瀬すずのかわいらしさにノックアウトする人が続出しそうな感じです。
ただ、この映画の面白いところは一つどこかと言えば、突然、三女の千佳(夏帆)が務めるスポーツ用品店の店長役の、
レキシこと池田貴史があのアフロで登場するところ
ですかね。(笑)
あと、4姉妹のうち誰が良かったかといえば、これは誰が何といおうと夏帆。あんな
そして、夏帆の食いっぷりがあまりにも素晴らしいので、
映画鑑賞中に腹が何回も鳴りました。
隣の席の女子はすすり泣きしていたっていうのに。
以上です、キャップ。

