ホーム最終戦の多摩川クラシコは、リーグ覇者・川崎に完敗しACL出場消滅。
FC東京のホーム・味の素スタジアムで迎えた川崎との第32回多摩川クラシコは、今季リーグ連覇を果たした川崎に軍配。小林悠と大島僚太という柱を怪我で欠いた川崎だったが、自分たちのサッカーを貫き、知念と長谷川による2ゴールで快勝。リーグ覇者の貫禄を示した形となった。
アタッキングサードからの三角パスやサイドチェンジなど“らしい”攻撃でリズムを崩すことなく主導権を握った川崎だが、当初の印象はそれほど圧倒的ではなかった。川崎がパスを回して支配率を高めていたものの、FC東京はボックス内にはそれほど容易に侵入させず、前半は相手にボールを握られていても焦らず、攻めのミスからカウンターを待つ形をやろうとはしていた。
だが、その流れが瓦解したのが19分。川崎のプレスに出しどころを失った橋本が苦し紛れに横パスを出すと、これがミスパスとなり知念に渡る。エリア外から放ったシュートがゴール左隅に決まって川崎が先制。先に絶対失点をしないというプランが一挙に崩れ、まだ前半20分を過ぎたところであったが、点数以上の落胆がピッチ上に見えた。その後はほとんど川崎のボールを奪えず、ボールを回されるがまま前半を終了。
どうしても点が獲りたいFC東京は、後半から負傷もあった米本に代えて永井を投入。ディエゴ・オリヴェイラとともに前へ重心を掛けていく戦術を繰り出そうとしていた矢先の50分、GK・チョン ソンリョンから守田、家長、エウシーニョ、中村とパスを繋ぐと、中村が右サイドを駆け上がったエウシーニョにスルーパス。受けたエウシーニョがグラウンダーのクロスを送ると知念がシュート。GK・林が一度はセーヴするが、こぼれ球に詰めていた長谷川がヘディングでゴールマウスへ押し込んで川崎が2点目。痛恨の追加点となった。
FC東京はリンス、矢島をピッチに送り込みながら終盤は川崎陣内へ何度も攻勢を仕掛けたが、ポストへ当たる場面やシュートチャンスを作りながらも川崎の最後の牙城を崩せず。アディショナルタイムにはGK・林もゴール前へ上がって攻勢を掛け続けたが実らぬまま、試合終了。FC東京は今季5位以下が確定、来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権を逃す結果となった。同時にDAZNからの理想強化分配金制度の対象となるシーズン4位以内に入ることが出来なくなったのも大きい。
この試合のターニングポイントは1失点目だろう。橋本のミスパスを奪われて知念にゴールされた瞬間、FC東京は一気にダメージを食らった感じに見えた。まだ、20分しか経過していなかったが、これ以上失点してはならないという気持ちと自分たちが先制するという意気込みがかえってある程度の落胆に繋がったのか、回されるボールに対してプレッシャーを掛けようとも足取り重いまま。1トップのディエゴ・オリヴェイラに預けて、という戦術はいいとして、2列目の東や大森が守備に忙殺されるから、トップ下の高萩がパスを散らす状況も作れず、ディエゴが孤立するという悪循環。さすがにタフなディエゴでもすぐに2、3人に囲まれては突破も難しい。シーズン後半で得点力が減退した形がそのままこの試合でも展開されていった。
後半は永井、リンスを投入しディエゴと近い位置で攻撃の形も作れたゆえ、川崎が2点目を獲った後は余裕をもって引いたというのもあるが、攻勢を仕掛けられる場面も増えた。だが、単純なクロスは跳ね返され、シュートのタイミングでも寄せが素早く、クリーンヒットしたシュートを打つことが出来なかった。
川崎のスタイルが理想形とは思わないが、それでも前線からのプレス、パスの受け渡しのスピード、ボールを前に進ませる展開力は見事。川崎が相手がプレスに来る前にパスをして、ボールをどんどん動かすサッカーをしているのに対し、FC東京はどちらかというとプレスに来た相手を引き込んでから空いたスペースへパスを出すのだが、いかんせんパスを出すタイミングの判断やパススピードが遅いから、どうしても前へボールを展開出来ず、横や後ろへのパスがどうしても多くなる。縦へ出してもすぐ後ろに戻す場面も散見され、それを“くさび”といえば聞こえはいいが、前への推進力が失われ、前線のディエゴの孤立も生み出していた。前へ攻めようというチャレンジは室屋には感じていて、サイドからコーナーをえぐっていく仕掛けで川崎のディフェンスを翻弄した部分もあった。一方、左サイドの太田は一度クロス前にボールをセットするような“タメ”の時間を作ることが多く、どうしてもその時間で相手の帰陣を許し、マークのギャップが作りにくくなっているから、いくら精度の高いクロスを上げようとも、ディフェンスに対応されてしまう。アーリークロスやダイレクトでクロスを供給するなどのヴァリエーションが増えればその限りではないだろうが、気持ちの余裕がないなかでは、なかなかそれも繰り出せずにいた。
もう一つ気になるのは、失点後のバタバタした対応がやはりこの試合でも見られたこと。失点数は川崎に続いてリーグ2位とデータとしては堅守なのだろうが、先制された後のディフェンスでの連係は堅守のイメージのそれではないことは確か。森重、チャン・ヒョンスは東京の守備の核となるCBだが、今季は特にチャン・ヒョンスのクリアの質や森重のボールを奪ってからのビルドアップ時のパスミスなどが多く、コンディションの影響も見て取れた。
長谷川体制へ移り、90分タフに走ることについてはようやく浸透し始めている段階にはあると思う。ただ、ゲームプランに応じて気持ちをコントロールする部分（川崎や鹿島などに身についているそれ）では、まだ体現出来ないのが現状だ。精神面の成長がFC東京というチームのクリアしなければならない課題として露見して久しいが、あと僅かなところでACLを逃したこの経験を無にすることなく、チーム力に積み重ねていかねばならない。その一歩となるのが、次の最終節となる。ACL圏争いからは脱落、既にリーグ残留も決めるなど結果に左右されない立ち位置となり、正直なところ動機付けを高める戦いではなくなってしまった。相手となる浦和も同様だ。
ただ、FC東京としてはそのまま流されることが多かったこれまでを払拭するためにも、アウェイの浦和戦という“鬼門”を克服するためにも、来季へ向けて勝利して終わるという意味においても、勝ち点3をがむしゃらに取りに行くべきだ。タイムアップの笛がなった時にどのような光景をサポーターに見せられるのか、川崎戦以上に大切な、意義ある試合になるはずだ。
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【明治安田生命J1リーグ 第33節】
2018年11月24日(土)14:03試合開始 味の素スタジアム
入場者数 37,422人
天候 晴 ／ 気温 14.8℃ ／ 湿度 40％
主審 家本政明 ／ 副審 川崎秋仁、熊谷幸剛 ／ ４審 榎本一慶
FC東京 0（0-1 / 0-1）2 川 崎
≪得点≫
（東）：
（川）： 知念慶（19分）、長谷川竜也（50分）
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≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 48 チャン・ヒョンス
DF 03 森重真人
DF 06 太田宏介
MF 38 東 慶悟
MF 07 米本拓司 → 永井謙佑（46*分）
MF 18 橋本拳人
MF 39 大森晃太郎 → リンス（58分）
FW 08 高萩洋次郎 → 矢島輝一（82分）
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 25 小川諒也
DF 05 丹羽大輝
MF 27 田邉草民
FW 11 永井謙佑
FW 13 リンス
FW 23 矢島輝一
≪監督≫
長谷川健太
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【明治安田生命J1リーグ 2018シーズン日程】
第01節 2018/02/24(土)14:00△FC東京 1-1 浦 和（H・味スタ）
第02節 2018/03/03(土)15:00✕FC東京 0-1 仙 台（H・味スタ）
第03節 2018/03/10(土)15:00✕FC東京 0-2 磐 田（A・ヤマハ）
第04節 2018/03/18(日)15:00〇FC東京 1-0 湘 南（H・味スタ）
第05節 2018/03/31(土)15:00〇FC東京 3-2 Ｇ大阪（H・味スタ）
第06節 2018/04/08(日)14:00〇FC東京 5-2 長 崎（A・トラスタ）
第07節 2018/04/11(水)19:00〇FC東京 2-1 鹿 島（H・味スタ）
第08節 2018/04/14(土)15:00✕FC東京 0-1 Ｃ大阪（A・ヤンマー）
第09節 2018/04/21(土)13:00〇FC東京 1-0 清 水（A・アイスタ）
第10節 2018/04/25(水)19:00〇FC東京 3-1 広 島（H・味スタ）
第11節 2018/04/28(土)15:00〇FC東京 3-2 名古屋（H・味スタ）
第12節 2018/05/02(水)19:00△FC東京 0-0 神 戸（A・ノエスタ）
第13節 2018/05/05(土)14:00〇FC東京 2-0 川 崎（A・等々力）
第14節 2018/05/13(日)16:00△FC東京 0-0 札 幌（H・味スタ）
第15節 2018/05/20(日)15:00△FC東京 0-0 鳥 栖（A・ベアスタ）
第16節 2018/07/18(水)19:00〇FC東京 1-0 柏 （A・三協Ｆ柏）
第17節 2018/07/22(日)19:00〇FC東京 5-2 横浜FM（H・味スタ）
第18節 2018/07/27(金)19:00✕FC東京 0-1 長 崎（H・味スタ）
第19節 2018/08/01(水)19:00〇FC東京 2-1 鹿 島（A・カシマ）
第20節 2018/08/05(日)19:00〇FC東京 1-0 神 戸（H・味スタ）
第21節 2018/08/10(金)19:00✕FC東京 1-2 Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第22節 2018/08/15(水)19:00✕FC東京 0-1 柏 （H・味スタ）
第23節 2018/08/19(日)13:00✕FC東京 2-3 札 幌（A・札幌ド）
第24節 2018/08/26(日)19:00△FC東京 0-0 湘 南（A・ＢＭＷス）
第25節 2018/09/02(日)19:00△FC東京 0-0 鳥 栖（H・味スタ）
第26節 2018/09/15(土)14:00✕FC東京 0-1 仙 台（A・ユアスタ）
第27節 2018/09/22(土)19:00△FC東京 1-1 広 島（A・Ｅスタ）
第28節 2018/09/29(土)17:00✕FC東京 0-2 清 水（H・味スタ）
第29節 2018/10/07(日)16:00〇FC東京 2-1 名古屋（A・豊田ス）
第30節 2018/10/20(土)19:00✕FC東京 0-1 Ｃ大阪（H・味スタ）
第31節 2018/11/03(土)14:00〇FC東京 1-0 横浜FM（A・日産ス）
第32節 2018/11/10(土)14:00△FC東京 0-0 磐 田（H・味スタ）
第33節 2018/11/24(土)14:00✕FC東京 0-1 川 崎（H・味スタ）
第34節 2018/12/01(土)14:00 FC東京 vs 浦 和（A・埼 玉）
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【明治安田生命J1リーグ 2018順位表】※2018/11/24現在
01 川 崎 66／33／20／06／07／55／26／+29
02 広 島 56／33／17／05／11／45／33／+12
03 鹿 島 55／33／16／07／10／50／39／+11
04 札 幌 54／33／15／09／09／46／46／+00
05 FC東京 50／33／14／08／11／37／31／+06
06 浦 和 48／33／13／09／11／48／37／+11
07 清 水 48／33／14／06／13／52／44／+08
08 Ｇ大阪 48／33／14／06／13／39／42／-03
09 Ｃ大阪 47／33／12／11／10／37／37／+00
10 仙 台 45／33／13／06／14／42／51／-09
11 神 戸 42／33／11／09／13／42／50／-08
12 横浜FM 41／33／12／05／16／55／54／+01
13 磐 田 41／33／10／11／12／34／46／-12
14 湘 南 40／33／10／10／13／36／41／-05
15 鳥 栖 40／33／10／10／13／29／34／-05
16 名古屋 40／33／12／04／17／50／57／-07
17 柏 36／33／11／03／19／43／52／-09
18 長 崎 29／33／08／05／20／35／55／-20
※（勝点／試合数／勝利／敗戦／引分／得点／失点／得失点差）
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