*** june typhoon tokyo ***

REBECCA @Billboard Live TOKYO




 今を生きるライヴバンドの英気と活力に満ちた、躍動の80分。

 左からベースの高橋教之、キーボードの土橋安騎夫、ドラムの小田原豊、パーカッションの中島オバヲ、右端にギターの是永巧一が揃い、暗転のなかでおもむろにインストゥルメンタル曲「光と影の誘惑」を奏で始める。深く青めいた空間を一気に白色のライトが染めると、ブロンズのボンバー・ツインテールなヘアスタイル、黒のキャミソールレオタードにシースルーロングカーディガン姿のNOKKOが颯爽と登場。2015年の横浜アリーナ(→「REBECCA@横浜アリーナ」)やさいたまスーパーアリーナ(→「REBECCA@さいたまスーパーアリーナ」)での再結成ライヴや、2017年の日本武道館公演(→「REBECCA@日本武道館」)でも、決して懐かしさだけではない進行形のREBECCAを感じ取ってはいたが、活力みなぎる手練の演奏と予想だにしなかったNOKKOのコスチューム、そしてアリーナクラスにはなかったライヴハウス・スケールという距離感の近さも相まってか、序盤で早々と充足が満ちていったのは、自分だけではないはずだ。会場は東京ミッドタウンにあるBillboard Live TOKYO。ビルボードライブの15周年記念として企画された〈
Billboard Live 15th Anniversary Premium Live〉の一環として、REBECCAが夜の六本木に舞い降りた。

 「光と影の誘惑」が終わるまでもなくカウントアップされると、激しく跳ねるパーカッションとドラム、“ダ、ダ、ダ”というオーケストラルヒット、鼓動と高めるギターリフが波状という言葉がぴったりなほどの音の波がフロアに押し寄せる「Hot Spice」のイントロが鳴り響くなか、NOKKOいわく「目のやり場に困るかな」という大胆なコスチュームで登場し、“REBECCA”が集結。「もっと熱くなれ」というフレーズに促される「Hot Spice」から、余韻を嗜む暇もないほどの興奮の連鎖が、80分にわたって続いていく。



 2015年、2017年のアリーナ規模の単独公演とは異なり、ビルボードライブでの2部制の公演で、時間の制限から演奏曲数も限られているゆえ、人気曲や代表曲を中心に構成されるのは想定されるところではあったが、意外だったのは「76th Star」に続いて披露された「Naked Color」だろうか。REBECCAといえば一躍トップランナーへと導いた代表曲「フレンズ」などを収録したミリオンセラー・アルバム『REBECCA IV 〜Maybe Tomorrow〜』の評価が高く、もちろん全盛期を示す作品の一つなのだが、個人的には1位を獲得するもバンドの混迷をも窺わせた現時点での最後のオリジナル・アルバム『BLOND SAURUS』も特に気に入っている作風の一枚で、そのなかでもシングルとなった「Vanity Angel」や「Super Girl」ではなく、「Naked Color」を選曲してくれたのは、嬉しかった。NOKKOは、7年前に出来なかった曲で、当時の“NOKKOさん”に聞いてもまともな答えが返ってくるとは思わないが、悪い
サイクルにとりつかれてしまった時に「自分自身の信じることをすればいいんじゃない」と思って書いた曲だと語っていた。

 続く「Cotton Love」のイントロは、一瞬「HELLO TEENAGE」かと思ったのだが、違ったようだ。どちらにせよ、これがNOKKO✕土橋の黄金比サウンドなのだろう。もしかしたらそれを意図してアレンジしていたのかもしれないが。
 なお、この「Naked Color」と、オリジナルと一部歌詞を改編した2015年版を織り交ぜた「真夏の雨」では、NOKKOが右手にミラーボールを持って場内を煌めかせる演出も。ステージのメンバーたちを一心不乱に見つめるファンたちを照らしながら、ほんのりノスタルジーに浸る空間を創り上げていた。

 どこか独創的なセンスの表現をするNOKKOは、「LONELY BUTTERFLY」への導入のMCでもその“センス”を発揮。「〈
寿退社〉って言葉があったでしょ。あれって、実はなかなか差別的っていうか、仕事しなくていいって話でしょ! ということを思って書いた」曲だと紹介したが、どこまでが本当かどうかは解からない。「Naked Color」の紹介の際に「当時の“NOKKOさん”に聞いてもまともな答えが返ってくるとは思わないが」と述べていたが、表現はどうあれ、時を重ね、以前とは心情に変化を伴って旧知の盟友たちと集った今だからこそ語れる言葉なのだろう。



 オーディエンスに甘酸っぱい青春を容易く想起させるだろうビタースウィートな「フレンズ」を終えると、是永のエッジの利いたギターソロを経て、メンバー紹介を組み込んだ「MONOTONE BOY」へ。終始クールにボトムを鳴らす高橋、オリジナルをベースにしながら「Naked Color」などではアフタービートに重心を寄せたアレンジを施すなどさりげなく“ニクい”アレンジを繰り出す土橋、巧みな安定感と熱度を高めるビートを叩き出す小田原、小田原と巧妙なコンビネーションを披露しながら、パッションをリズミカルなタップで描出する中島、潔いほどのキレとグルーヴでサウンドに加速度をつける是永、そして、スウィートに、セクシーに、時にちょっぴりナスティにとコロコロと表情を変えながらパワフルなヴォーカルを押し出すNOKKOが、“REBECCA”という音の生命体を形作る姿は、なにより勇ましく、美しいものだった。以前の仲間がステージに集って、素晴らしい記憶とともにある名曲群を演奏したというよりも、それぞれが酸いも甘いも噛み分けた大人になった今だから出せる音と、今のこのメンバーだから成立するバンド・サウンドが、フロアにオーディエンスの心に共鳴した瞬間だったといえよう。

 NOKKOがフェイクをこれでもかとかまし、“MONOTONE BOY~”の声だけが響くアウトロで一瞬静寂が差し込まれるも、すぐさまアグレッシヴなギターリフに突入してオーディエンスの感嘆を呼んだ「RASPBERRY DREAM」がクライマックスか。メンバー同士でにこやかにアイコンタクトをとり、微笑みながら音を繰り出すなど、センチメンタルとロマンティックを往来するあの印象的な鍵盤のコードがいざなうグルーヴに心地よく委ねるメンバーの姿が、揺らぐことのないREBECCAサウンドと充溢したステージを物語っていた。
 「平和を祈って」という言葉とともに「Maybe Tomorrow」で本編はラスト。アウトロの小田原の子守歌のようなドラムリフが打ち鳴り終えて、NOKKOが叫んだ「Peace World!」の言葉が響き渡るのも束の間にオーディエンスのクラップでかき消されていく光景に、音楽の力を見せつけられた感じもした。

 鳴りやまないクラップを経て、メンバーが再登場。アンコールラストに選んだのは「
OLIVE」。2ndヴァースに入るやいなや、ステージ奥のカーテンが開いて、ビルボードライブ東京ならではの夜景をバックにした演奏に。当時和製マドンナ、シンディ・ローパーと呼ばれたダンスアクションを繰り出しながら歌うNOKKOを尻目に、オーディエンスに「後ろ凄いよ見て」とでも言わんばかりにガラス越しの夜景を指差す小田原と、それを見て微笑む中島の表情が目に焼き付いたまま、再び訪れるクラップの波が渦巻くなかでの大団円。ビルボードライブ15周年記念にふさわしい、そして今もなお色褪せることのないライヴ・サウンドが、東京の夜を彩っていた。


◇◇◇

<SET LIST>
01 INTRODUCTION~光と影の誘惑 (*IV)
02 Hot Spice (*IV)
03 MOON (*P)
04 76th Star (*IV)
05 Naked Color (*B)
06 Cotton Love (*B)
07 真夏の雨 (*P)
08 One More Kiss
09 LONELY BUTTERFLY (*T)
10 フレンズ (*IV)
11 Guitar solo~MONOTONE BOY(Including member introduction)
12 RASPBERRY DREAM
13 Maybe Tomorrow (*IV)
≪ENCORE≫
14 OLIVE (*P)

(*IV): song from album “REBECCA IV 〜Maybe Tomorrow〜”
(*T): song from album “TIME”
(*P): song from album “Poison”
(*B): song from album “BLOND SAURUS”


<MEMBER>
NOKKO(vo)
土橋安騎夫(key)
高橋教之(b)
小田原豊(ds)
中島オバヲ(perc)
是永巧一(g)

◇◇◇

【REBECCAに関する記事】
2010/09/19 レベッカとの再会
2015/04/21 REBECCA 20年ぶりに再結成!!
2015/08/13 REBECCA@横浜アリーナ
2015/11/29 REBECCA@さいたまスーパーアリーナ
2017/09/01 REBECCA@日本武道館
2022/07/14 REBECCA @Billboard Live TOKYO(本記事)


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