*** june typhoon tokyo ***

REBECCA@横浜アリーナ


 REBECCA、20年ぶり。今のライヴ・バンドとして魅せた120分強。

ずっとひとりぼっちだと思っていた。
いつも宿題を抱えていて、いつも締切に追われていた。
REBECCAの活動を中途半端に終えてしまったという気持ちがあった。
REBECCAはずっと、触れてはいけないパンドラの箱だったけど
時が経ち、心に余裕ができてきて、
このパンドラの箱を開く勇気が湧いてきた。
そして勇気を出して開けてみたら、
パンドラの箱の中でREBECCAは、熟していた。

もう、ひとりじゃないと気付いた。
夢がしぼみ、情報が氾濫している今の時代にREBECCAを見直してみたい。
当時の曲を、今の自分たちで再現して、もう一度やってみたい

REBECCA





 80年代から90年代初期にかけて疾風のごとく駆け抜けた、紅一点ヴォーカリスト・NOKKOを擁するREBECCAが再結成ライヴを行なう……そのアナウンスがあったのが2015年4月。7月下旬の豊洲PITでのプレ・ライヴを経て、REBECCAが見事に復活した。
 91年に解散、95年に阪神・淡路大震災復興ライヴで一時再結成を果たしてから20年。(2000年にシングル「神様と仲なおり/HELLO TEENAGE」のリリースなどがあったものの)その95年から辿り着くべき途を歩み終えずにいた彼らが、奇しくもその復興ライヴが行なわれた横浜アリーナで再結成ライヴを開催。迷い彷徨っていた20年という時間を復活の舞台に相応しい横浜アリーナで繋ぎ合わせた、といったら大袈裟過ぎるだろうか。REBECCA 20年ぶりの再結成ライヴ“Yesterday, Today, Maybe Tomorrow”の2日目。

 ステージを見れば、上方からステージを覆う白いカーテンウォール。そこにREBECCAを象徴するあの大きく“R”が配されたロゴマークが映し出されているだけで感慨深くなるのは、実際にティーンエイジをREBECCAの楽曲と共に過ごしたからだろうか。それでも、それだけで胸が一杯となることはなかった。ライヴを終えた時、単なる懐古の情で満たされてしまうのならば、寧ろ美しく懐かしい思い出へと“削られていった”当時の感触を掘り起こしてもらわなくても良かったという感情が脳内を支配しただろうことは、想像に難くなかったからだ。

 時というものは、本当に残酷で儚い。はち切れんばかりのパワーとエナジーを帯びながら怖いもの知らずで突き進もうとしていた当時の彼らは、思春期の少女の心情を吐き出して見せた詞世界と同様、若さゆえの大胆さとそれとは裏腹な不安や苦悩を、実際に彼らも感じていた時期とシンクロしていたからこその説得力があった。“リアルタイム”ゆえの共感というヤツだ。
 だが、彼らも歳を重ねた。当時、彼らに熱狂したファンも当然ながら同じように年を経たが、ファン心理とは残酷なもので、ファンは自身を直接見ることが出来ないことと過去となっていた彼らへの印象を瞬時に今にフラッシュバックさせてしまう。もう当時のREBECCAはいるはずはないのに、ステージへ上がる彼らに対して当時の熱量と質を求めてしまうのだ。
 実際、外見ではその年輪が窺えてしまう。だが、彼らの音楽人生において再結成ライヴを行なうという選択は懐古でもノスタルジーでもなく、ライヴバンドとして必然だったことが、幕開けの最初の楽曲「RASPBERRY DREAM」を肌身で感じて確信した。今の時代に降り立つライヴバンドとして、ノスタルジーに屈しないクオリティを存分に発揮していたのが、その証左だ。



 18時7分過ぎ。暗転し、カーテンウォールがヴァイオレットのライトで染め上げられる。それは4thアルバムを冠しながらも彼ら初のフル・アルバムとなった『REBECCA IV~Maybe Tomorrow』のジャケットの色にも、「MOON」などが収録された6作目『POISON』のそれにも感じていると、カーテンウォールが上がってやおら、是永巧一の高揚を呼ぶギター・リフから小田原豊のタイトなドラミング、高橋教之のしなやかなベース、そして土橋安騎夫のキャッチーな鍵盤が鳴る。同時に湧き起こる歓声がうごめくなか、ステージ後方中央のせり上がりから黒(外は群青か紫?)のフード・ガウンを被ったNOKKOが登場すると、その歓声のヴォルテージがさらに大きなうごめきを生み出す。95年からの時を繋いだのは、“今夜も月が見てるわ”から始まる「RASPBERRY DREAM」。そして、彼らの詞世界を象徴する言葉の一つでもある“月”を冠した「MOON」へ。その時点で、懐かしさは微塵もなかった。相当な準備をしてきたのだと推測するが、今にしっかりと音を鳴らせるライヴバンドとして、REBECCAは横浜アリーナに帰ってきたのだ。

 「当時はなかなか自分の中で歌い切れなかった曲を聴いてください」と言って披露したのが「ONE MORE KISS」。サビのNOKKOのハイトーン・ヴォーカルは、それまでの迷いや葛藤を払拭するかのように伸びやか。大人になり、その大人の自身と向き合い、当時書いたリリック“輝きはせつなくて永遠に幻”の思いを受け止めながら歌い上げるNOKKOに、REBECCAという触れてはいけないパンドラの箱を開けて気づいた思いと決意が滲んでいるような感じもした。

 「CHEAP HIPPIES」からはさらにテンションが上昇。ステージを囲むように配されたウォーキングレーンを周り、ステージ後方の観客たちにもメッセージを送り続ける。「Hot Spice」から幕を明け、再びそれで締めるメドレーの頃には、本当にノスタルジーは微塵もなかった。無論、ファン個々の想い出が浮かび上がり、感極まる人たちも少なからずいただろうが、再結成のステージという意味においては、それは皆無。時が移り、21世紀もディケイドを越えて、益々混沌とした2015年のシーンに、色褪せるどころか進行形のバンド・サウンドを次々に繰り出していく。

 「終戦の曲とか思われることもあるんですが、そんな意味で作ったんじゃないんですけど」の言葉で始まった「真夏の雨」は、英語詞の部分を日本語詞に書き直したヴァージョンで披露。サビの“Ah Beaten in the warm rain/It makes me feel like I'm in your love/Ah 真夏の雨は/It makes me feel like I'm in your love”がどのように生まれ変わったのかを確かめようと、聴き入るオーディエンスの光景が印象的だった。



 そして、小田原豊の幻惑的なドラムソロからインスト曲の「TIME」へ。時の永遠性と無常観を描いたような、REBECCAが他のバンドとは異なるオリジナリティが見て取れるムードに包まれていったかと思うと、それすらを打ち破るかのように、最初に登場したせり上がりからスレンダーな外国人(?)女性二人のダンサーを引き連れて、NOKKOが登場。『WILD&HONEY』のジャケットのようなヴィヴィッドなピンクのドレスと耳上に羽を飾った“エンジェル”ライクな衣装にチェンジして目を惹きつけると、演奏されたのはなんとEDMスタイルの「76th Star」。踊るNOKKOのテクノポップ的なエフェクト・ヴォーカルとレイザービームがフロアを貫く光景は、Perfume以降のライヴに見られるそれのよう。これには多少驚いたが、今の時流のEDMアレンジにも馴染む楽曲の質とダンサーを従えながら天真爛漫に歌い踊るNOKKOの姿に、新たな可能性をも感じた。
 「(It's just a) Smile」ではNOKKOのガーリーでキュートな部分も最大限にフォーカス。彼女の持つ少女性をフロアの隅々にまで満たした、微笑ましい空間も創り上げた。

 終盤は「OLIVE」から。“こわいものなしね”“不安だらけね”とOLIVEへ問いかけ、“やみくもに生きてるわけじゃないのだけど、答えが見えない”と葛藤を綴った詞世界は、当時のREBECCAやNOKKOを示唆するようで、解散へのストーリーと重ね合わせて思うところもあった楽曲だが、時間と自身と人との繋がりとを見つめ直し、決意の元で演じる今となっては、すんなりと受け入れることが出来た。だが、思えば、これまでに勝手に価値付けていた個人の楽曲への思い入れだとか感傷だとかの隙を与えないバンドの完成度を今更ながら実感。密度の濃いバンド・サウンドとNOKKOの現在進行形の圧巻のパフォーマンスは、まさに天衣無縫といったところだ。

 「プライベイト・ヒロイン」までを歌い上げ一度幕を下ろすも、興奮冷めやらぬ声と拍手が響くなかで、ロゴマークが描かれた白のTシャツ姿に着替えたメンバーが登場。代表曲「フレンズ」でファンたちの覚めない夢を引き延ばすと、ラストはこの再結成ライヴのタイトルにも冠した「Maybe Tomorrow」を。観客が灯す白色のケミカルライトが左右に揺れる美しい光景のなかで、表現力を増した歌唱で“今日ここに来られなかった人たちにも届くように”情感込めて歌い上げた。その胸懐は、久しぶりで懐かしかった、やり終えてホッとしたというよりも、半端なままで置き去りにしてきてしまった、どこか後ろ髪をひかれるようなモヤモヤとしていた思いが吹っ切れそうだという感情の方が大きかったのではないか。アリーナ、スタンド四方のファンへ丁寧に感謝の礼をしながらメンバーがステージをあとにするなかで、最後にもう一度ステージへ駆け戻り、手を振って応えたNOKKOの表情に、そんな思いを感じ取っていた。

 会場を出る人の波を掻き分けながら帰途に着く途中、不思議なことにしんみりとした心情がなかったのは、やはり思春期によく聴いた懐かしいバンドのライヴではなくて、時代を超越したライヴバンドとして訴求出来たからではないか。

 豊洲PITでのプレ・ライヴ、横浜アリーナ2デイズ。まだまだ演奏していない楽曲がたくさんある。夢の続きは11月29日のさいたまスーパーアリーナ公演で。いや、“夢の続き”ではなく、“現(うつつ)”のREBECCAの再体験だ。是非とも足を運びたい。



◇◇◇
 
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 RASPBERRY DREAM
02 MOON
03 LONELY BUTTERFLY
04 Cotton Time
05 ONE MORE KISS
06 CHEAP HIPPIES
07 ~MEDLEY~
Hot Spice
ガールズ ブラボー!
BOSS IS ALWAYS BOSSING
ラブ イズ Cash
蜃気楼
Hot Spice
08 真夏の雨(Japanese Lyrics Ver.)
09 Drums Solo ~ TIME
10 76th Star(Electric Voicals Effect Ver.)
11 LITTLE DARLING
12 (It's just a) Smile
13 OLIVE
14 WHEN A WOMAN LOVES A MAN(女が男を愛する時)
15 MONOTONE BOY(including Members Introduction)
16 プライベイト・ヒロイン
≪ENCORE≫
17 フレンズ
18 Maybe Tomorrow

<MEMBER>
REBECCA are:
NOKKO(vo)
土橋安騎夫/Akio Dobashi(key)
高橋教之/Noriyuki Takahashi(b)
小田原豊/Yutaka Odawara(ds)

是永巧一/Koichi Korenaga(g)
中島オバヲ/Obawo Nakajima(per)

Female Dancers

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