*** june typhoon tokyo ***

FC東京×川崎@味スタ【YBCルヴァンカップ】

 屈辱的な敗戦で、今季のルヴァンカップが終了。

 先日の1stレグで2失点のビハインドとなったFC東京。3点差以上の勝利が不可欠という厳しい状況ながらホームでの巻き返しに臨んだ2ndレグだったが、チームとしての成熟度や期待感はおろか、不甲斐なさばかりを露呈してホーム味スタでなすすべなく“陥落”した。

 立ち上がりはゴールを奪わなければいけないFC東京がハイプレスを仕掛けていく。それゆえ川崎のカウンターを幾度か食らう場面もあったが、前田、大久保、米本が積極的に前線、中盤でボールを奪いに走る。しかし、なかなかシュートシーンには繋がらない。一方、川崎は1stレグで2点先制している余裕もあり、失点するリスクを負わないプレーを重視したため、序盤は互いに決定機を生み出せない展開に。

 だが、28分。梶山のパスミスから一気に川崎が仕掛けると中村憲剛が阿部に絶妙なスルーパス。これを阿部がGK林の左肩上をすり抜けるシュートを逆サイドネットに突き刺して、川崎が先制。FC東京にとって(アウェイゴールにより)3点では勝ち越せない点差をつけられる窮地に追い込まれると、選手の脳裏を諦観が支配したのか、2分後にも小林悠からのワンツーパスで難なく抜け出した阿部に決められ、試合を完全に決した。その10分後にはエウシーニョが決め、前半で3失点。さらに、FC東京は後半も2失点と川崎のゴールショーをアシストし、ルヴァンカップを惨敗で終えることになった。

 この試合では、FC東京が抱える多くの課題を露呈した。まず、攻撃においてはペナルティエリアに入らないとシュートを打ってはいけないという暗黙の了解でもあるのかと思うくらいにシュートまで手間をかける。不用意なパス交換は相手を完全に崩してシュートを打つというよりも、自分が決めてやるという自信の欠如にしか見えない。もし、充分なゴールへの視野が開いたところでシュートを打つのが確実というシチュエーションに拘っていて、そういうシュート練習をしているとしたら、それは練習のための練習でしかなく、実戦でほとんど足しにならないことを繰り返していることになる。相手がいる以上、自分たちにとって理想の場面などは試合中に一度あるかないくらいだ。ほとんどが相手の厳しいマークや数的不利な状況のなかでどうやってゴールに結びつけるかということが試されるのだ。パス交換でエリア内へ侵入しようとするも最終的にはシュートを打てずにカウンターを食らうことの繰り返しは、観戦しているサポーターはもちろん、選手自身たちの士気や疲労度にも関わってくる。ゴールへ近づいてもシュートを打てずに終わる場面が多発するなか、エリア外からミドルを放った徳永のシュートが相手ディフェンダーに当たってコーナーキックを獲得した場面が相手にとってはヒヤリとさせられたのだろうと考えると、非常に皮肉なものだ。

 攻撃も中央進出を果たしておきながら、結局は後ろへ戻してからサイドへ振るというワンパターン。確かに太田の精度の高いFKがことごとく決まっているならそれも武器になろうが、今季の太田は課題の守備のみならず、長所のFKも錆びつく始末で、全体的なパフォーマンスが劣化が激しく、この2ndレグは小川がスタメン起用されたと要因の一つになったといえる。
 それでもサイドに拘り続ける意図は何なのか。何事もバランスとタイミングは不可欠な訳だが、FC東京は攻撃も一辺倒で偏重が過ぎる。そして次なるアイディアがほとんどない。中央からのミドルを放ちながら、それを伏線にしてサイドを活かすとか、その逆を取るなど、攻め方によってはヴァリエーションも多彩になるのだが、それが全く見られない。これはいざピッチに立ってから容易に出来るものではないので、練習時に明確なコンセプトを持って攻撃の構築をしているのかどうか、甚だ疑問だ。

 とはいえ、終盤には投入されたピーター・ウタカと大久保、永井などは攻撃での可能性は見せた。もちろん川崎がギアを落として守備的になったこともあるが、65分にウタカの前へのパスが永井へ通ってGKと1対1となった決定的な場面は、永井が体勢を崩して右足が空振り、72分には中央からウタカがドリブルでエリアへ進出し、左の永井、右の大久保へパスを送れば決定的という場面もウタカがボックスに入ったところで川崎DFに止められてチャンスを逸してしまった。それでも、その流れが結実したのがアディショナルタイム。橋本から大久保、小川、永井と素早く細かいパスの受け渡しからボックス線上左側からの永井がファーサイドへ浮き球クロスを送ると、これに大久保が合わせてようやく1点を挙げることに成功。このゴールまでには前線に5人以上が攻め上がり、細かくも素早いタッチでシンプルにゴールへと繋げた、連動性を駆使したプレーだといえる。個の能力と連係がマッチした、今後も突き詰めていきたい攻撃だったと思う。

 次に失点の場面。梶山のミスパスの可能性は十分に予測出来た。ある意味予想範囲内の出来事だ。ベンチは38分にその梶山を下げて、永井を投入するプランを実行。その際、梶山はビハインドにも関わらず、ゆっくりと歩いてピッチを出ようとしたため、FC東京サポーターからはブーイングを食らう。その後、ベンチでの握手を拒否し、ペットボトルを蹴り、ロッカーへ直行したようだ。結果的に劣勢をさらに増加させたプレーをしてしまった自身への怒りもあったかもしれないが、試合がまだ前半を終えていない場面で取るべき行動ではない。ましてや若い時から東京の“10番”を背負ってきた男だ。チームへの悪影響は計り知れない。

 しかしながら、戦犯として梶山一人をあげつらうのは違う。梶山は緩い横パスやバックパスが多く、リスキーなタイプであり、直接失点に繋がるプレーを生みやすいのは確かで、失点出来ないというこの試合でもミスをしてしまった。とはいえ、脚の状態が万全ではなく90分持つかどうか分からない梶山をアンカーで起用するという選択をしたのは監督・コーチの首脳陣だ。梶山を据えたそのフォーメーションや構成で成功例があったならまだしも、1stレグも同様な布陣で精彩を欠き、敗戦しているシステムだ。梶山の左右の広大なスペースを埋めるための周囲との連係も効果を発揮しないなかで、今の梶山にそのパフォーマンスを期待するのはいささか酷だ。
 その布陣に見切りをつけたベンチは、梶山との交代に永井を選択。米本と橋本をボランチにする策をとったが、これがかえって中盤に大きなスペースを生み出し、川崎が自由にプレーする橋渡しとなってしまった。まだ梶山はスピード感はなくともボールを左右前後に散らそうとしていたが、橋本はこれまでにボランチとして起用された試合ではボールへの寄せへのスピードはあってもワンテンポ遅かったり、中途半端なポジションをとりがちだったが、この日も同様なパフォーマンスに終始。丸山、吉本、徳永との距離も開いて、DF陣の仕事が増大するばかりに。
 その後、ボール奪取に奮闘していた米本、前線で身体を張っていた前田を下げると、チームとしてボールを持てる時間や相手からボールを奪うこともままならなくなってしまった。これは現況を的確に判断出来ていないベンチワークのミスといっていいだろう。

 そして、この日のゴール裏の指揮ぶりは最悪だった。前半に勝負が決してしまうと、川崎のゴールに拍手を送る愚行。さらに選手たちを叱咤するどころか、この期に及んで“勝つのは俺たちだー”と場違いな新チャントを延々と繰り返す体たらく。そのチャントも求心力はなく、最後はほぼ中央にいるリーダー陣周辺の自己満足に終始。試合終了後は挨拶に来る選手たちへブーイングすら起こさず、常にゴール裏座席を不法に陣取るローリングストーンズをパクったベロマークの幕を早々と撤収して帰り始める始末。苦しい時こそ支えになるのがサポーターだと思うが、それとはかけ離れた行動ばかりを起こしていた。

 振り返れば、以前にも同様の光景があった。延々と同じチャントを繰り返し(それは応援するというよりひたすら仕方なしにやっているという体だった)、次第に応援を拒否。「ガーロ辞めろ」と声を挙げ、さらには「原トーキョー」だの「ササコール」だの関係ないチャントを繰り出した2006年だ。「ガーロでいいのか」と横断幕を出し続け、結果ガーロが解任されると、ガーロを辞めさせたのは俺たちの力だと言わんばかりに、まるで自分たちが正義のような態度を誇示していたあの2006年。その当時に雰囲気に酷似しているのと同時に、それから反省もなく全く成長していないということだ。それだけではない、相手のゴールへ拍手したり、太鼓隊が試合中に諦めてゴール裏を去っていった場面は幾度も目撃している。苦しくとも最後まで選手たちやチーム、スタジアムに集い、共に応援するファンたちを鼓舞するために粉骨砕身するのがゴール裏を指揮するものの役目ではないのか。それが全う出来ないのであれば、その程度のリーダーなど不要だ。現に、2006年はゴール裏中心部が応援拒否したものの、指揮などなくとも自然発生的に応援が発生していたし(それに対してばつが悪くなったのか、後から太鼓を叩きはじめるといった姿勢もせこい)、ピッチ上で懸命に奮闘する姿があれば、ファンは自然と声を挙げ、手を鳴らす。それが真のサポートするという意味ではないのか。

 結局、自分たちに都合の悪いことには目を逸らし(「ガーロ辞めろ」以降、ガーロ以上の悪い状況になった監督がいたにも関わらず、「辞めろ」コールや横断幕でのアピールなどは皆無)、自分たちのスタイルに従わない者に対しては“闘っていない”という根拠もない理由で強要するだけ。新チャント自体に罪はないが、“勝つのは俺たちだ”と歌う“勝つ”とは誰に向けて言っているのか。残念ながら、応援し続けている“俺たち”が勝てばいいとも聞こえてしまうのは、あまりにも皮肉だ。

 1stレグでビハインドを負ったとはいえ、今季はリーグで川崎に3対0で勝利している事実もある。前半に1点を返せば、ホームスタジアムの雰囲気も手伝って、川崎に大きなプレッシャーを掛けることも出来たはずだ。だが、この日はそういった可能性もあるにも関わらず、ほぼ満席の川崎ビジター席に対して、FC東京はゴール裏すら満杯に出来ない1万2千人強。チームとともにゴール裏への求心力が劇的に低下しているのは間違いない。FC東京というチーム、クラブの、そのものの意義が問われた敗戦といっても過言ではないが、それに対してクラブやチーム、サポーターはどうするべきなのか。今季の勝敗は別にして、長く首都・東京に誇れるクラブとしてどう立ち直るべきなのかを真剣に考える時ではないか。

 失点直後に項垂れて連続失点を食らっている意識やメンタリティーは払拭しなければならない。それはクラブの運営も同じこと。この敗戦から這いつくばってでも何かを掴み、上昇への一歩を踏み出さなければ、クラブとしての存在意義や価値は皆無だ。

◇◇◇

【Jリーグ YBCルヴァンカップ 準々決勝 第2戦】
2017年09月03日(日)19:04 試合開始 味の素スタジアム
入場者数 12,602人
天候 晴 / 気温 24.1℃ / 湿度 77%
主審 荒木友輔 / 副審 唐紙学志、平間亮 / 4審 佐藤貴之 / 追加副審 池内明彦、榎本一慶

 FC東京 1(0-3 / 1-2)5 川 崎

≪得点≫
(東): 大久保嘉人(90+1分)
(川): 阿部浩之(28分)、阿部浩之(30分)、エウシーニョ(40分)、阿部浩之(54分)、エウシーニョ(56分)

◇◇◇

【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 22 徳永悠平
DF 04 吉本一謙
DF 05 丸山祐市
MF 10 梶山陽平  → 永井謙佑(38分)
MF 26 柳 貴博[U-21]
MF 37 橋本拳人
MF 07 米本拓司  → ユ・インス(57分)
MF 25 小川諒也[U-21]
FW 13 大久保嘉人
FW 20 前田遼一  → ピーター・ウタカ(55分)

≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 36 山田将之
MF 21 ユ・インス
MF 38 東 慶悟
MF 06 太田宏介
FW 15 永井謙佑
FW 09 ピーター・ウタカ

≪監督≫
篠田善之

◇◇◇



























































◇◇◇

【2017 JリーグYBCルヴァンカップ FC東京 日程】
≪グループステージ Aグループ≫
第01節 03/15(水)19:00〇FC東京 6-0 仙 台(H・味スタ
第02節 04/12(水)    休 み
第03節 04/26(水)19:00✕FC東京 1-3 磐 田(A・ヤマハ
第04節 05/03(水)15:00〇FC東京 1-0 札 幌(H・味スタ
第05節 05/10(水)19:00〇FC東京 4-3 大 宮(H・味スタ
第06節 05/24(水)19:00〇FC東京 1-0  柏 (A・ 柏 
第07節 05/31(水)19:00✕FC東京 1-2 清 水(A・アイスタ

■ 順位表(5/31終了現在)
01 仙 台 13/6/4/1/1/10/10/+0
02 FC東京 12/6/4/0/2/14/08/+6
03 札 幌 10/6/3/1/2/07/05/+2
04 磐 田 09/6/3/0/3/10/10/+0
05 大 宮 08/6/2/2/2/11/08/+3
06  柏  05/6/1/2/3/04/06/-2
07 清 水 03/6/1/0/5/05/14/-9
※(勝点/試合数/勝/分/負/得点/失点/得失点)

≪プレーオフステージ≫
第01戦 06/28(水)19:00〇FC東京 1-0 広 島(A・Eスタ
第02戦 07/26(水)19:30〇FC東京 1-0 広 島(H・味スタ
≪ノックアウトステージ≫
準々決勝 第01戦 08/30(水)19:00✕FC東京 0-2 川 崎(A・等々力
準々決勝 第02戦 09/03(日)19:00✕FC東京 1-5 川 崎(H・味スタ
準決勝  第01戦 10/04(水) 敗 退
準決勝  第02戦 10/08(日) 敗 退
決 勝  埼スタ 11/04(土) 敗 退




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