
2011年に本国でリリースしたアルバムが、2013年にボーナス・トラック付きの日本盤で出されると、日本の好事家の間でもにわかに騒がれ始めた米アリゾナ州出身の女性ベーシスト、ニック・ウェストの来日公演〈Brooklyn Parlor presents“Good Music Parlor”Live at BlueNote Tokyo〉のブルーノート東京での2日目、2ndショウを観賞。
そのアルバム『ジャスト・イン・ザ・ニック・オブ・タイム』を耳にした当初は、一聴してプリンスの影響下と判る「フォビッドゥン・フルート」の印象も強烈だったが、「ドゥ・ホワット・ユー・ガッタ・ドゥ」「ブラック・ビューティ」「ビー・オーケイ」「フーズ・イン・ザ・ミラー」あたりのジャジィでネオソウルな感触は、ジル・スコットあたりを想起させていたから、謳い文句にもあった、同じく女性ベーシストとして脚光を浴びたエスペランザ・スポルティングに近い雰囲気を持つタイプなのかと思っていた。

「ブラック・ビューティ」を聴いて思ったのが、女性のバックヴォーカルがいたらもっとこの曲は映えるかもということ。(その後、キーボードとギターの男性陣がヴォーカルを執っていたが)その時は歌唱の音圧としてやや寂しい感じも。このあたりを考えると、彼女はどちらかというとヴォーカリストというよりやはりベーシストなんだろう。中盤に“ビッグ”な女性シンガー、マクサンがスペシャルゲストとして登場してのステージとなったが、メイン・ヴォーカルを歌うマクサンとそこへベースを鳴らしながら掛け合いヴォーカルで演じるニックという構図を見るにつけ、その妙なはまり具合に納得してしまった。
ファンキーなステージはマクサンの登場にとどまらず、観客からダンサーを募ってステージに上げての即興ダンスパーティへ。彼女が鳴らす心地よいベースの響きに、思いのまま身体を揺らす観客ダンサーたちという構図が、素晴らしいグルーヴを生み出していた。

また、プリンスとのセッションのなかで弾き方をアドヴァイスされたと話していた楽曲、スライ&ザ・ファミリーストーンの「サンキュー」のカヴァーを「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」のフレーズをまじえて披露すると、パーラメントの「ギヴ・アップ・ザ・ファンク」、そしてプリンスの「レッツ・ワーク」と、彼女のベーシストとしてのルーツを辿るような構成でフロアを熱くさせた。この時点ですでにフロアは多くのスタンディングの観客で埋め尽くされていた。
圧倒的に漆黒なベース、それとは対照的に時に小鳥のさえずりのようなキュートなヴォーカル。そのギャップがまた楽しくもある。フロアの盛り上げ方はもう一つ二つ成長が見込めそうだし、ポスト・エスペランザ路線よりももっとミネアポリス・ファンクなスタイルに振り切ってしまうのも面白いかもしれない。
今後を追ってみたくなるアーティストがまた一人登場してきた、そんな感慨に耽りながら、自らグルーヴを奏でるかのごとく夜のネオンを縫うようにして帰途したのだった。
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<SET LIST>
00 Intro
01 Wait A Minute(*)
02 Forbidden Fruit(*)
03 Black Beauty(*)
04 Eyes Closed(*)
05 Fallin'
06 I've Been Loving You Too Long(Special Guest with Maxyan)(Original by Otis Redding)
07 Gimme Shelter(Special Guest with Maxyan)(Original by Rolling Stones)
08 Thank You(Including in Phrase of“Dance To The Music”)(Original by Sly&The Family Stone)
09 Give Up The Funk(Original by Parliament)
10 Let's Work(Original by Prince)
11 Outro
≪ENCORE≫
12 Back in Black(Original by AC/DC)
(*):Song from Album『Just In The Nik Of Time』
<MEMBER>
Nik West(b,vo)
David Schulz(key)
Hubie Wang(g)
Brittany Maccarello(ds)
Maxayn Lewis(vo)
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Nik West LIVE Forbidden Fruit Rock Remix


