*** june typhoon tokyo ***

SOUL CAMP 2017


 R&Bとヒップホップへの“LOVE”を再確認した1日。

 “真っ昼間から いいキモチ。あの時の最高の音楽と最高の空気、ソウルフルな開放地区”をキャッチフレーズに行なわれるR&B/ヒップホップを中心とした都市型フェス〈MTV presents SOUL CAMP 2017〉が東京・豊洲PIT+MIFA Football Parkにて10月7日・8日の二日間にわたって開催。第3回となる今回は、7日にエリカ・バドゥ、8日にデ・ラ・ソウルをヘッドライナーに迎えたが、2日間通しチケットはソールドアウトの盛況ぶり。エリカ・バドゥのビルボードライブでの単独公演がかなり高額(4万超、カジュアルでも3万超)だったため、当フェスの初日にエリカ・バドゥを観たかったが、初日は既にノーネームの公演が決定済みだったため、仕方なく諦め、2日目に足を運んだ。一番の目当ては、こちらもビルボードライブでの単独公演を開催するフェイス・エヴァンス。

 当初は観賞予定だった14時~15時のブラック・シープが終わりかけたところで会場入り。入口のMIFA Football Parkへ行き、ひとまず〈DJ STAGE〉でのDJ MUROとDJ WATARAIのプレイを少しの間ばかり耳にした後、〈LIVE STAGE〉となっている豊洲PITへ。15:40からビッグ・ダディ・ケインとクール・G・ラップとの共演を前方のエリアで。



 やはり見た目から“ヒップホップラヴァー”然としている客層が多く、ヴォルテージへの点火も瞬時。ビッグ・ダディ・ケインとクール・G・ラップが交互にキラー・トラックを投下していく度にフロアの熱度が上昇。特に鋭いエッジの効いたマシンガンを打ち放つかの如く高速なフロウを畳み掛けていくビッグ・ダディ・ケインのパフォーマンスは目を見張るものがあった。一瞬首を横に振ってブレスをする以外、その屈強そうな肉体でフロウを繰り出すさまは、まるで狙った獲物を鋭い眼光で捉える野生動物かのよう。その一挙手一投足に魅了されたオーディエンスをあっという間にロックしていく熱気が凄まじかった。



 ただ、そのステージは20分くらいで離脱。というのも、16時から〈DJ STAGE〉に登場するノレッジが気になっていたから。ノレッジ(knxwledge)はケンドリック・ラマーをはじめ、ジョーイ・バッドアス、アール・スウェットシャツらをプロデュースし、LAビートシーンの次世代を担う“ネクスト・J・ディラ”“ネクスト・マッドリブ”などとして期待されるプロデューサー。アンダーソン・パックとのユニット、ノー・ウォーリーズでの活動でも知られている新鋭だ。その敏腕ぶりとセンスで多くのアーティストも虜にしている彼だが、風体はどことなく知的ながらもひ弱さはなく、非常にクレヴァーな印象。激しい抑揚のあるキャッチーなトラックで惹きつけることはないが、ジワリジワリと浸透していくような中毒性の高い選曲で、クールにDJプレイを続けていた。



 ノレッジも終わりまでは観られず、最大の目的である17:20からのフェイス・エヴァンスへ向けて移動。開始20分前には〈LIVE STAGE〉にてスタンバイ。90年代を代表するR&Bディーヴァの降臨に、胸躍らせていた。周囲には彼女の夫で暗殺されたビギー(ノトーリアスB.I.G.)の姿がプリントされたTシャツを着ている客も。

 バンドはのビルボードライブ公演に準じた構成か。同公演で列記されているパーカッション、サックス、トランペット、バックヴォーカル一人を除いた5名編成とすると、おそらくバンド・メンバーは、左からバックヴォーカルのジェイムス・ライト、キーボードのジャスティン・ブルックス、ギターのコンラッド・リーヴス、ドラムのジョン・ドリュー・シェアード二世(どうやら5人姉妹ゴスペル・グループ“ザ・クラーク・シスタ-ズ”の一人、カレン・クラーク・シェアードの息子らしい。個人的にはウォーリン・キャンベルのプロデュース曲「レット・ゴー」が日本でもヒットした“キキ”ことキエラ・キキ・シェアードの弟といった方が親近感は沸くか)、ベースのロナルド・“CJ”・アレキサンダーの5名。ファットで重心の低いビートを敷きながら、フェイス・エヴァンスがパワフルに歌い上げるというスタイルが多く、ゴスペル畑の身内を持つドリュー・シェアードを中心としたバンドということであれば、バンドとシンガーともに元来ゴスペル出身という素地を活かして共鳴するのは自然の理といえる。



 フェイス・エヴァンスは成熟度を増しても従来の“ヤンキー”気質、やさぐれ具合がチラホラと窺え、日本で言うところの女性が憧れる“ヤンママ”感が匂い立っていて、それを武器にしているところが“らしい”というか。「昔“〈バッドボーイ〉のファーストレディ”とか言って悪い時期あったでしょ、そんな感じの曲やるわ」などと言って「ユー・ゲッツ・ノー・ラヴ」を歌ったり、「メズマライズド」では持ち前のパワーで圧倒してソウルネスに染めていく。その一方でミディアム・スロー「スーン・アズ・アイ・ゲット・ホーム」でオーディエンスの耳目をパワフルな熱唱で釘付けにし、「アイ・ラヴ・ユー」で艶やかに愛を説くなどバラードでも才を発揮するなど、その表情の豊かさにいい意味での“下世話”感があって楽しい。ラストは曲中にファンやスタッフをステージに上げての「ラヴ・ライク・ディス」でエンディング。自身も機嫌よくパフォーマンス出来たのか、非常に充実した面持ちで約1時間のステージを終えたのではないか。



 トリはポス、トゥルーゴイ、メイスからなるニューヨーク出身のヒップホップ・トリオ、デ・ラ・ソウル。元々備えていたユーモアの資質とヴェテランの余裕もあって、オーディエンスを楽しませる方法を熟知。フロアを一体化させるコール&レスポンスでは、オーディエンスにレスポンスを求めておいて“シャラップ”と遮ったり、トラックのイントロを流して客がノリ始めたところで演奏を中止したり、大きなスクリームを煽るために“眠いのか”を連発したりと、ライヴならではのコミュニケーションを取りながら、ヒップホップをエンターテインメントとして昇華させる術は見事というしかない。曲の合間には名曲のフレーズを挟み込む遊びは言わずもがな。また、「アイ・アム・アイ・ビー」ではスマホ・携帯のライトを観客に照らさせて、フロアを夜景あるいは小宇宙を瞬時に生み出すなど、マイクとDJセットしかないなかでもさまざまな引き出しでデ・ラ・ソウル・ワールドへといざなっていく。



 後半はキラー・チューンのオンパレード。“サタデー!”のコールでハイテンションを生む「ア・ローラー・スケーティング・ジャム・ネームド・サタデーズ」から「ミー、マイセルフ・アンド・アイ」への流れでフロアを高気圧モードへ突入させた上に、ブラック・シープが登場し、グルーヴが次々とうねりを増してフロアに躍動が渦巻く。そして、“エンジン! エンジン!”“ナンバー9!”のコールでメーターが振り切れるほどの爆発力を持つ「ザ・チョイス・イズ・ユアーズ」へ。しかも、これらはスタートしてオーディエンスがいい気分になり始めた頃合いをみて演奏を一度止めるという“焦らしテクニック”も合わせ技で仕込んでくるから“厄介”。的確にオーディエンスの欲求の加速度と濃度を高める手練手管でガッチリとフロアをコントロールしていく。

 興奮冷めやらぬなか、アンコールを受けて登場した3人が披露したのは「リング・リング・リング(ハハ・ヘイ)」。コール&レスポンスやシンガロングが連なり、高鳴る鼓動が収まることないなかでラストまで駆け抜け、2日間の〈SOUL CAMP〉を締めくくるに相応しい刺激的な大団円となった。


◇◇◇

≪LIVE STAGE≫
【Black Sheep】

<MEMBER>
Dres
Mista Lawnge

【Big Daddy Kane / Kool G Rap】

【Faith Evans】
<SET LIST>
I Don't Need It
You Used To Love Me
All Night Long
Burnin' Up
Soon As I Get Home
Can't Believe
You Gets No Love
I Love You
Again
NYC
Mesmerized
Tears Of Joy
Love Like This

<MEMBER>
Faith Evans(vo)

James Wright(back vo)
Justin Brooks(key)
Conrad Reeves(g)
Ronald"CJ" Alexander(b)
John Drew Sheard II(ds)

【De La Soul】

<MEMBER>
Posdnous
Dave
Maseo








◇◇◇




















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