2020シーズンラストの頂上決戦は、FC東京の戴冠で幕。
コロナウィルスの影響により延期となったYBCルヴァンカップ決勝戦は、年を跨いでのシーズンラストマッチに。J1リーグ得点王のオルンガをはじめ、クリスティアーノ、江坂ら高い攻撃力を誇る柏レイソルは、主力が揃いほぼベストメンバーという布陣。対するFC東京は、ACLでの負傷が癒えないままのディエゴ・オリヴェイラをはじめ、高萩、田川も前日練習に顔を見せず。怪我でリハビリ中のGK林やアルトゥール・シルバも不在と、満身創痍のチーム状態のなか、ACLより採用した森重をアンカーに配した4-3-3の布陣で応戦。CBには渡辺とジョアン・オマリを、前線にはレアンドロ、永井、原を先発に起用。アダイウトンや紺野を後半からの切り札に置いた形で決勝戦に挑んだ。
シーズンではまずは守備を重視するFC東京だが、同じ守備でも永井やレアンドロがスプリントしてプレスを仕掛ける“前からの守備”でボールを奪いに行く。シュートへの意識も高く、序盤からレアンドロや中村帆高がゴールを狙っていく。
柏はサイドからのアーリークロスをオルンガに合わせるという形を多く見せ、6分にはヘディングで狙うも枠外。クリスティアーノを中心にアーリークロスを放り込むも、FC東京は渡辺、オマリを中心としてしっかりとオルンガの抑え込みに成功。そして、オルンガへのボールの出どころである江坂は森重を中心にマーク、最終ラインの古賀からの供給も前からのプレスで思うようにボールを出させず、セカンドボールを回収しているFC東京が主導権を握っていく。
すると、16分に試合が動く。柏陣内からの浮き球に自陣左サイドで競り勝った小川のボールをレアンドロが回収し、そのままドリブルで速攻開始。左サイドからヒシャルジソンをかわしてエリア内へカットインすると、大南も抜き去ってエリア中央から右脚でシュート。ゴール右隅に決めて、FC東京が先制に成功する。
その後もFC東京はレアンドロや永井らが幾度も前からプレスを仕掛けてボールを奪取してゴールを狙うも、決定的なシュートまでには持ち込めないでいると、次第に柏もボールを持つ時間が増えてくる。前半終了間際に柏が左CKを得ると、クリスティアーノはオルンガへ合わせようとするも混戦となり、ボールはクロスバーの真上へ。FC東京・GK波多野が対処し切れずに前に弾くと、瀬川が素早く反応して泥臭く押し込み、柏が同点に追いつく。
もったいない形で失点してしまったFC東京だが、後半も積極的に攻め込む姿勢を見せる。一方、柏も左サイドを起点にしながら、江坂がフリーランニングをしてパスを引き出そうと仕掛ける。59分には左CKからクリスティアーノがゴールへ向かうクロスではなくエリア手前中央の川口へ浮き球クロスを送るサインプレー。川口のシュートは僅かに枠上と惜しくもチャンスを活かせず。ただ、それ以外では執拗なマークにあって、オルンガにスムーズにボールが渡らないこともあり、展開力や推進力がなかなか生み出せない。
オルンガをはじめ、思うように攻撃が組み立てられずにイラつきを見せ始める柏を尻目に、次第に中盤を支配し始めるFC東京。66分にエリア手前中央でヒシャルジソンのファールを受けたレアンドロがFKのチャンス。直接ゴールを狙うも、枠右上角に当たって跳ね返り、得点にはならず。その後、東に代えてアダイウトン、原に代えて三田をピッチへ投入。推進力と馬力を活かして突進するアダイウトンの対応に柏がやや苦戦していると、74分、左サイドのハーフウェーラインあたりで三田、森重、小川らとパス交換しながら前線のターゲットを狙っていると、ジョアン・オマリがレアンドロへ浮き球を供給。これは大南が頭で防ごうとするも、中途半端なクリアとなったところを、すぐに反応した永井が頭でエリア内へバウンドパス。柏・DF古賀と競り合いながらアダイウトンがトーキックでシュートすると、ゴール右側のネットが揺れ、FC東京が勝ち越しに成功。
柏は大谷、江坂、瀬川を下げて、三原、呉屋、神谷をピッチに送り出すが、FC東京のディフェンスを崩すまでには至らず。80分以降は最終ラインからのロングボールというパワープレーでFC東京ゴール前へ攻め込もうとするが、やや精度も欠き、なかなか上手くボールを供給出来ないまま、時間を費やしていく。アディショナルタイムは6分と長めだったが、前半同様にボールの出どころへのプレスを怠らず、決定的なパスを供給させないFC東京が、柏のパワープレーを凌ぎ切り、タイムアップ。FC東京が2009年以来11年ぶり、2004年と合わせて三度目のルヴァンカップ(2004年、2009年当時はナビスコカップ名義)の頂に辿り着いた。
柏は予選の5戦全勝を含めて勢いがつく勝ち方でルヴァンカップ決勝までの道のりを進んできたが、序盤から攻守ともにややバタつきが見られるなど、試合にスムーズに入れなかったか。FC東京はタフな中盤の競り合いのなかで、セカンドボールの多くを獲れたことでリズムを生み出し、相手の隙を突いてスピードと個人技でゴールへ迫り、しっかりとゴールを先に奪い切ったことが、勝利を大きく手繰り寄せた要因でもあったように感じた。
MVPは先制ゴールを決めたレアンドロが受賞。2020年は19連戦を含むタイトな日程やACLでのタフな戦い、主力選手の中途移籍なども影響し、決して満足がいく結果を得られなかったFC東京だが、シーズンラストに長谷川健太体制初タイトルをもたらしたことは、非常に大きな経験と財産になったといえる。出場選手はもちろん、思うように試合に出られず、内心は悔しさもある選手たちも、タイトルを戴冠したチームの一員としての経験は、これからの自信や刺激にもなるはずだ。
FC東京のファン・サポーターにとっては思うように声を出せない“声なき歓喜”となったが、優勝で最後を締めるという何物にも代えがたい光景を目に出来たことで、チームとともに成長を実感したのではないだろうか。ルヴァンカップ決勝という最終決戦は、“俺たちの国立で勝つ”を有言実行させて、文字通りの有終の美でのエンディング。歓喜、感動、感謝……さまざまな思いが過ぎるなか、ようやく長い2020シーズンも幕を閉じた。
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【JリーグYBCルヴァンカップ 決勝】
2021年01月04日(月)14:41試合開始 国立競技場
入場者数 24,219人
天候 晴 / 気温 11.4℃ / 湿度 36%
主審 福島孝一郎 / 副審 唐紙学志、武部陽介 / 4審 東城 穣
柏 1(1-1 / 0-1)2 FC東京
≪得点≫
(柏): 瀬川祐輔(45分)
(東): レアンドロ(16分)、アダイウトン(74分)
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【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 13 波多野豪
DF 37 中村帆高
DF 04 渡辺 剛
DF 32 ジョアン・オマリ
DF 06 小川諒也
MF 10 東 慶悟 → アダイウトン(67分)
MF 03 森重真人
MF 31 安部柊斗
FW 24 原 大智 → 三田啓貴(67分)
FW 11 永井謙佑 → 内田宅哉(90分)
FW 20 レアンドロ
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 05 丹羽大輝
MF 28 内田宅哉
MF 44 品田愛斗
MF 07 三田啓貴
FW 15 アダイウトン
FW 38 紺野和也
≪監督≫
長谷川健太
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【2020 JリーグYBCルヴァンカップ FC東京 試合日程】
準々決 09月02日(水)19:03〇FC東京 3-0 名古屋(H・味スタ)
準決勝 10月07日(水)19:00〇FC東京 2-0 川 崎(A・等々力)
決 勝 11月07日(土)14:41〇FC東京 2-1 柏 (国 立)
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