近年、駒沢開催の試合は、新潟や清水といったオレンジをチームカラーとするチームと戦うことが何故か多い。今季の駒沢もオレンジがカラーの愛媛FCを迎えての戦いとなった。
試合前は愛媛の人気マスコット、オ~レ君、たま姫ちゃん、伊予柑太と熱烈愛媛サポーターの一平くんと東京ドロンパが、東京ゴール裏で“寸劇”を披露。“東京にも『愛』がある。in駒沢”ということで、愛媛県物産展特設テントではポンジュースなど愛媛産商品に多くの人が群がっていた。自分も愛媛蜜柑飲むゼリーを購入して、試合へ臨んだ。
ただ、楽しいのはここまでだった。
東京は、今野が代表戦のため欠場。代わりにジェイド・ノースが初先発。嬉しい話題としては、石川直宏がベンチ入り。スピードスターがようやく戻ってきた。前節の京都戦がフロックでないためにも、この愛媛戦は内容、結果共に一定の評価が得られるものでなくてはならなかった。しかしながら、京都戦で魅せた東京のパフォーマンスは、こういう言い方をしてはなんだが、相手が京都だからこその結果だったのかもしれない。
愛媛は東京よりもやや上位に位置し、ほぼ同じくらいの順位同士の戦いとなった。当初、愛媛はバックラインが低く、サイドバックが積極的に上がるも前線までボールが運べないため、それほど脅威ではなかった。パスミスも多く、個という部分では別段手こずることはないように思えた。
だが、それ以上に、東京のサッカーが稚拙だった。“ボールを持てる”と思える分、無駄に足元での変化をつけようとして、相手からのプレッシャーを受け、引っかかり、カウンターを与えたり、攻撃のチャンスを摘んだりすることが多く見られた。時には、その個の力で交わせるプレイも見せたが、リスクということを考えると、前線でならまだしも最終ラインに近い位置やボランチあたりでそれをやられる冷や冷やな場面も多かった。圧倒的な点数差がついているならそれも解からなくはないが……。
パスを出すタイミング、パススピード、判断力、全てにおいて遅い。比較的自由にボールを持てるのに早々とプレッシャーを受け、出しどころやタイミングを失い、苦し紛れのパスを出す。それが相手ボールとなる。ディフェンスが高い位置でそれをやられると、あっという間にピンチとなる。中へ、狭いところへという足元でのプレイが多くなり、視野が狭くなる。受けてもゴールではなく、自陣へ向きがちなプレイが多くなってくる。サイドチェンジなどの大きな展開も、有効なものは数えるほどしかなかった。
そして、やはり前への推進力が極端に少ない。羽生のようなフリーランニングをする選手がいない。石川が入ってからは、石川の特色である前へのスピードが発揮された場面も出てきたが、シュートまでは行かず。ちぐはぐな場面も少なくなかった。
東京の改善すべき問題。それは、J2の戦いをしてしまっているということだ。それはどういうことかといえば、J2に合わせたサッカーをしてしまっているということだ。本来ならば、カテゴリーはJ2でも自分たちの特徴が存分に発揮出来るようなサッカーをしなければならないのだ。もちろん、J2の“戦い方”はきっちりと知っておかなければならない。多くが引いてくる戦法で対峙すると思われる相手に対してどのように勝点を増やしていくか、というのは、J2ならではの“戦い方”を熟知していないと、そう易々とは勝たせてもらえないだろう。
しかし、戦いでは自らがJ2レヴェルに落としてパフォーマンスする必要は全くない。確固とした約束事のもとに、自分たちのチームカラーや選手たちの特徴を最大限に活かした質の高い攻撃をどんどんと続けるべきなのだ。そういう意味で、愛媛に対して結果ではなく内容として質の高いプレイが出来たかといえば、全くノーだった。
気の緩みではないだろうが、“軽い”と思われるプレイが多すぎる。特に、ディフェンス時のミスは命取りになりかねない。
また、田邉の素晴らしいゴールが決まった後、いつものように、勢いのまま突き放すことはなく、次第に試合の流れが相手へといってしまった。そのなかで、これも見事なループシュートだったが、愛媛に同点弾を許すこととなる。東京にとって、1点差などまだまだセーフティ・リードでもなんでもない。貪欲に次の得点を狙いにいくことが必要なのだ。攻撃は最大の防御。それを充実させてから、守り切る、すかすなどの、戦い方をすればいいのだ。
上位陣が思うように勝点を伸ばせないなど、混戦のJ2リーグ。東京は9位ながら、首位の千葉との勝点差が6と接近している。それを考えれば、まだまだと思うかもしれないが、逆に言えば、上位~下位までがそれだけ拮抗しているということ。勝ちを計算できる相手がそうそういないということなのだ。そうなると、この勝点6差というのは、リーグ序盤ながらも、追いつけそうでなかなか追いつけない数字とも考えられる。
これから夏へ向けて消耗度が激しい試合がどんどん増えていくなかで、勝点3をいかに連続して獲得していくか。そのためには、ゴールへの過程をもっとシンプルに考える必要がある。早い判断のパスや相手のいないスペースへの走り出しで、展開をスムースに。ゴールへの導線へは過度な脚色はいらないのだ。そういう根本的な自分たちの揺るがない攻撃の生命線を持っていてはじめて、ヴァリエーションの豊かなゴールへの過程も生まれることになるのだ。
戦わずして勝つ、ということがある。自分たち以上に相手が勝手にいろいろ思案しすぎて自滅、こちらの流れの向くままにことが運ぶということだ。今季の東京は、どの相手チームもおそらく、当初は“J1のポテンシャルを持った強豪”“J2ではその実力は抜きん出ている”と思ってくれていた(あえて、過去形にする)。そういうことも精神的な面で有利に働くのだが、全く活かせてないのが現状だ。相手に合わせて試合をしていれば、相手の術中にもハマりやすく、相手に圧倒的なメンタリティで泰然自若とすることも難しくなる。それで自ら焦りを生み、あたふたしてしまうサッカーは、本当に思うつぼ、なのだ。“ライオンは全力でウサギを狙う”“ライオンはどんな獲物でも全力で仕留める”ではないが、そういった気持ちを常に持っていないと、足元をざっくりとすくわれる可能性が大いにあるということを肝に銘じて、次節からは変貌した東京としてゴールを狙ってもらいたい。
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Jリーグディビジョン2 第15節
2011/06/05 駒沢陸上競技場
FC東京 1(1-0、0-1)1 愛媛
【得点】
(東): 田邉(17分)
(愛): 石井(63分)
観衆:13,105人
天気:曇、弱風
<メンバー>
≪FC東京≫
20 GK 権田修一
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
36 DF ジェイド ノース → 33 DF 椋原健太(70分)
14 DF 中村北斗
04 MF 高橋秀人
10 MF 梶山陽平
19 MF 大竹洋平 → 39 MF 谷澤達也(53分)
27 MF 田邉草民 → 64 MF 石川直宏(64分)
22 FW 羽生直剛
09 FW ロベルト セザー
01 GK 塩田仁史
26 DF 阿部巧
32 MF 上里一将
35 MF 下田光平
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愛媛のみなさん、ようこそ駒沢へ。

FC東京ゴール裏。

石川直宏が復帰!

“ユルネヴァ”中。

愛媛もタオマフを掲げる。

選手整列。

東京ゴール裏。スクリーンにはFC東京vs愛媛。

ハーフタイムで場内を周るドロンパ。

インラインスケートヴァージョンのドロンパが愛嬌を振り撒く。

後半キックオフ。

同点ゴールで盛り上がる愛媛ゴール裏。

試合終了。

ゴール裏へ挨拶する愛媛の選手たちとバックスタンドへ挨拶に向かう東京の選手たち。

バックスタンドへ挨拶する東京の選手たち。

ゴール裏への挨拶に向かう東京の選手たち。
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試合前の“寸劇”のまとめ。
それは……
何故かおでこにカエルのシールを貼ったドロンパが一輪車で登場
→ 一平くんが「オレも!」と挑戦
→ 上手く乗りこなせたかと思いきや……
→ 落車、転倒
→ 担架登場
→ 担架に乗った一平くん。だが、落とされる
→ ドロンパが担架に乗る
→ 一平くんが再度担架に。東京ゴール裏、愛媛ゴール裏から「もう一回!」コール
→ 一平くん、担架から落下
→ 「もうほっとこ」的に一平くんを残して退場しようとする
→ 一平くん、自ら担架を抱えて追いかけるように退場

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ここまでは楽しかったのに……。(苦笑)
【追記】
担架芸アップされてました。

