音楽を学ぶために親の反対を押し切って上京した主人公修文が住処に選んだのは、自殺者が出たマンションの一室。
その部屋は防音完備な上にピアノつき。
でも、そのピアノは鍵がかかっていてひくことができない。
そして、部屋から飛び降りて自殺した「カノン」の幽霊を見たなど、主人公と会ったことのない自殺者との関係がある人たちと不思議な縁を結びながら過ごす青春ストーリーです。
読んでいて面食らったのは、まず文章が、かたい!というか、夏目漱石とかその辺の時代の小説家が書いたようにかたい文章です。
これ、思いのほか読み辛いです。
ただ、これは作者が意図して、わざわざ明治文学を勉強してまで書いたようですので、意味があるようです。
そして、読むテンポが掴みづらかったです。
いつものペースで読むとイリュージョンでもしたのかというくらい、話があちこちとぶのでゆっくり、じっくり読みました。
ところどころ、わからない?とかいろいろあることはありますが、内容としては、東京で生活するリアリティ感や、カノンという死者の幻想感などがあって、不思議な気持ちにさせられた作品だなと個人的には思いました。
うまくは言えないのですが、人と人との距離感といいますか、結構深くつながっていたつもりが思い返してみたらそんなに相手のことを知らなかったっていうことってあるじゃないですか?
そういう関係のつながりもあれば、初対面なのに昔から知ってるみたいに相手を信頼することもあるし、そういう感じのコミュニティでの出来事を描いているのかな?と思いました。
そう思ってみると、結局、相手が何を思っているかはわからないものだし、少し仲良くなればわかった気になるし、その仲良くなった人達からの他人のイメージで情報を作るしとかおもいだしていけば、かなり奇妙なこの人間関係も意外と自分たちとそんなに変わっていないのかと思いました。
夢分け。
夢をあいてと分けることかもしれませんし、夢が別れるという意味かもしれない。
そんなことを思った12月の夜です。
※ブクログに掲載した感想を掲載しております。
今思い出しても、結構不思議なお話だったなと。
自殺したカノンをめぐる不思議な人間関係は今の私には難しかったかもしれない。
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