あの交差点にキミが現れるのは、いつも藍色の中だった。
夕方の終わり、夜の始まり。キミはやたら下を向いて歩いていた。
重たそうなカバン、縦に揺れる歩き方、疲れた横顔は、横断歩道を渡る青信号の時、独り占めできる唯一の瞬間。
「どうして一人で歩いていたの?」
友達と分かれて、一人で遠回りをするキミを、遠くから発見するのが好きで、いつも家の敷地にあるフェンスに寄りかかって、通りを眺めているふりをしてたの。
キミにプレゼントをする時は、いつも藍色の中だった。
バレンタインのチョコレートは、電話で時間を約束してキミの家まで歩いて行った。
夜に書いたラブレターは、グランド側の校舎の隅に並べられた、鞄の中にコソッと入れた。
「本当は待ち合わせをして一緒に帰りたかったな。」
キミと帰りが同じ時間になる時は、10メートル歩いては立ち止まって、またゆっくり歩いては振り返り。
この道を歩くのが、本当に好きだったの。
いつも空を眺めていたわ。
キミが現れやしないかって、キミがこの空の下に必ず居るってわかっていたから。
キミを探すみたいに、藍色の空を眺めていたわ。