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「言いだしかねて」があるのなら…。

2007-10-17 04:09:25 | Weblog
一ヶ月程前、南博(p)と一時間前後の対話をして話題がスタンダードに及んだ際、「僕はあんまり歌詞については考えないですね。ボーカリストと演る時はまた別ですけど」という発言を聞いて「なるほど、そうか…」と妙に腑に落ちた感触を得た。似たような発言は過去にも幾人かの音楽家から拝聴した記憶はあるものの、とかく歌詞の大意を鑑賞や曲解釈の糸口にしてしまいがちなじぶんはついぞそれを忘れて「旋律」に触れていたりする傾向があるので、南の言葉を改めて新鮮な想いで受け止めたのだろう。

ライヴが始まる直前、指を鍵盤に下ろしてポロンと数音試奏するだけでもその場の空気を変えてしまう南特有の「霊性」と、その正体については以前から言葉に変換できそうでそのじつ掴みかねてきたが、先の言葉は今後の採集作業に大いなるヒントを与えてくれそうだ。で、その日の南は「言葉と音楽の関係性」について、「ベートーヴェンとかはやはりドイツ語の音楽だと思う」と前置きし、「ドビュッシーやラヴェル、それとサティはやはりフランス語じゃないかな」「ビバップ特有のフレーズにしてもたぶん、当時の黒人たちはスラングを交えてああいうふうな喋り方をしていただと僕は思うんですよ」との見解を述べた。

ここに「あんまり歌詞については考えない」といふ南の、それでも歌詞の大意が感情表現として十分伝播してくる運指の鍵が隠されているのではないか、とじぶんの拙い耳が脳髄の路地で推測する。で、今宵の『JazzToday 2007@STB139』は南博ファンには必見・必聴のプログラム。一部は「研太くんがリーダーで活動するとしたら誰とやりたい?」といふ南の発案から「外山(明:ds)さんと水谷(浩章:b)!!」との津上の即答で結成されたBOZOのライヴ。津上作品を名うての達人4人で奏でるBOZOの特筆ものの現況に関しては少し前の本欄でも熱弁したとおりであるが、BOZO未体験ながらも興味津々の向きには今宵が初体験の絶好のチャンスと推薦しておこう。

といふのも二部は、芳垣安洋(ds)&鈴木正人(b)との三つ巴が神秘的な新生・南博Trio+弦楽四重奏の希少な豪華共演。南の霊性が水谷or鈴木のベース、外山or芳垣のドラムスで一石二鳥×2で堪能でき、しかも『Touches & Velvets』や『Elegy』で展開された中島ノブユキ編曲のwith ストリングスものが味わえて、年内発売予定の同Trio作『My Foolish Heart』の審美的な世界が生で先行体験できるであるから、今夜はいったい願いましては何石何鳥のお耳ハンティングとなるのだろう…募る思いを寄せている相手がいるならば、言い出しかねている言葉を駆使するよりも今宵の本ライヴに誘うべし!

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