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日本語教師的生活

日本語と日本語教育にまつわるいろいろ。

日本語教師の「お仕事」(「お」をつけるのは?)

2018-01-27 09:01:45 | 日記
2018年1回目のブログです。

昨年はこのブログへの厳しいご意見や、授業に対する学生からのクレームもあったりして
ちょっと落ち込んでました。
発信する限り、時には批判を受けることが避けられないという当然のことを学びましたし、
授業の方は、私としては学生の将来を思って取り入れた「教えない」スタイルでしたが、
かなりの反発があって、思いを伝えきれていなかったことを痛感しました。
2017年は本当に勉強になった年でした。
(ブログを更新できていないのに、読んでくださる方も毎週いらっしゃって感謝です)

そんなわけで落ち込んでいたんですけど、立ち直りは早いので大丈夫。
今年も何かしらちょっとでも日本語教師の皆さんのお役に立てる(おこがましい…)、
ヒントになる、または笑っていただけることを書いていけたらと思います。

昨年セミナーに参加して軽いショックを受けたことがありました。
それはワークショップで同じテーブルになった日本語教師の方お二人、まだ始めたばかり
だということでしたが、「日本語教師の仕事が辛くてしかたがない。楽しいと思えない。」
とおっしゃったんですね。
私はびっくりしました!
私、この仕事が「辛い」と思ったことが一度もありません。昨年の出来事の時も、落ち込ん
だけど、他に楽しいクラスもあるので、まあ、人生いろいろ、クラスもいろいろよねって
思ってましたし。(いわゆる「切り替え、切り替え!」)
そういえば駆け出しの頃、教室運営がうまくできなかったことがあったような気がしますが、
「辛い」と思うこともなく何とか切り抜けてきました。(今思うと学生さんには申し訳ない。
鈍感でした。でも鈍感力って、結構役に立ちますよ。外野にいろいろ言われても気が付かな]
い「力」)

そして大変だと思っているクラスでも、たまーに学生がご褒美をくれるのです。
例えばクラスの最後の日に「先生の授業が好きでした。」とか
「先生は、いつも一生懸命なので楽しかったです。」等々。
そういうご褒美があるからこそ続けてこられたんですね。
なので、せっかく日本語教師になった方々にも、そんな体験をしてほしいなあ。
確かに毎日の授業準備は大変だけど、それがクラスで花開いて、学生の「わかった!」という
顔を見たら、こちらも嬉しくなります。

「日本語教師が辛い」と言ったその方々に、「授業で学生と通じ合えた時、楽しくないです
か?」と聞いてみたのですが、「楽しいと感じることもあるけど辛い方が勝っている」という
お答え。

うーん、ほんと授業って楽しいのに。学生だけじゃなくて、教師の方も。
そう伝えたい。
こういうことを投げてみたら、どんなことが返ってくるだろう。
それが予想以上のこと多々あります。もちろん授業のデザインは教師がするのですが、クラス
という場での相互作用によってデザインされたものを越えることがあるのです。
(残念ながら、そうならない時ももちろんありますけど)

どうすればいいんだろ?
授業準備の大変さがそれを阻んでいるなら、お手伝いすることもあるような気がしております。
またITを活用したり、コーチングのスキルを活かすことでレッスンがスムーズにいくこともあ
ります。そんなことに取り組んでいる日本語教師の方もいらっしゃいます。
新人のうちは、いろんな方の手を借りてでも、授業をこなしていけばいいんじゃないかしらん。
そのためにも日本語教師の連携は必要だなーと思います。

テーマもう一つ。
Eラーニングで日本語を学んでいる人からの質問に答えるという仕事もしているんですが、先日、
初学者の方からの質問で「お」はどの言葉につけますか。というのがありました。
それで、恥ずかしながらどう答えるべきか、悩んでしまいました。
初級を教える時、丁寧に言いたい時に「お」をつけます。また敬語の一部として、相手に関する
ことには「お名前」のように「お」をつけますよ。程度にしか説明していませんでした。
どの言葉につけるかルールがあるかと聞かれると、初級の学習者にパッと答えられるような準備
がありませんでした。
それでちょっと自分なりに整理してみます。

①尊敬語として
相手に関するものにつけて尊敬の意味を表す。つまり自分にはつけない。
「お名前」「お国」「お住まい」「お荷物」など

②謙譲語として
相手に渡すもの、相手に向かう行為の言葉につける。
「お電話」「お知らせ」「お願い」「お祝い」など

ここまでは、まあわかりやすいのです。あと動作にも、尊敬語で「お~になる」とか謙譲語で
「お~する」「お~いたす」にも「お」をつけますね。

さてやっかいなのが、美化語と言われる「お」です。「お酒」とか「お金」とかの。
これは相手への尊敬や、謙譲ということに関わりなく、上品に言い表そうとする時に使うものです。
相手のmoneyであっても、自分のmoneyであっても「お金」という。ここが「お名前」等と違うとこ
ろです。
「金はいつお支払いしましょうか」なんて言うと、すごみがでちゃいますよね?

上品に言い表したいということなので、女性が使うことが多いのですが、これが…。
個人差や地域差もあって、なかなかルール化できそうもありません(涙)
たとえば「お大根」とは言うけど「おにんじん」とは言わない。(言う人いますか?)
「おそうめん」はOKだけど、「おひやむぎ」は言わない。(これも、言う人いる?)
とりあえず、今思いつくルールを挙げてみます。

1 外来語にはつけない。
  おジュース、おビールはNGです。
(ああ、ショップ店員さんで「おリボン」とか「おトイレ」とか言う人いますかね)

2 女性が使うことが多いので、日常生活に関するものにつくことが多い。
  お風呂、お水、おそば、お茶、おすし、おはし、おちゃわん、お正月等

これは個人差がありますよね~。日本語教師は女性が多いので、どうしても「お~」の形で
教えやすい。外国人はよく「SUSHI」「SAKE」のように言いますが、私は使いません。
男性の先生方はどうなんでしょう?
しかし、「お台所」とは言っても、「おまな板」とか「おざる」とか「お包丁」とかは言わ
ない気がする~。

3 日常的な語であれば漢語にも「お」がつく。(漢語には「ご」がつくというルールですが)
  お掃除、お料理、お洗濯、お勉強、お裁縫

4 複合語にはつけない
  「おもち」はOK、「おきなこもち」はNG。

5 「お」がついた形が普通になっているものは、取ると不自然。
  おしゃれ、お好み焼き、おすすめ、おせじ、おしゃべり、お気に入り、お年玉

6 女房詞からきているもの。「お」は取れない。
  おひや、おでん、おなか

7 幼児語
  おてて、おめめ、おやま、おそら、おひさま、おつきさま

8 「お」の有無で意味が変わるもの
  「おかわり」と「かわり」、「おまけ」と「まけ」、「おふくろ」と「ふくろ」

9 特別な意味を持たせたもの
  「おねつ」(夢中になること。ただし保育園用語では「発熱」のこと。
  「お迎え」(亡くなること。ただし保育園とは限らないが、単に迎えに来る意味も。)
例文「ケンちゃん、おねつです。お迎えお願いします」

10 「お」だけでなく「さん」もつける
  おいなりさん、おまめさん、おいもさん(他にもあったら教えてください)

収集つかなくなったので、この辺でやめておきます。
もちろん、このほかに「ご」をつけるものもあって、その区別も難しいんですけど。

学習者にはおおまかなルールを教えた上で、その都度示すしかないんですかね。
皆さんは、どうされていますか?

日本語教師の「お仕事」は、まだまだ奥が深い。今年もまた精進、精進!
(女性誌って、「お」付けがちですよね。)