日本語教師的生活

日本語と日本語教育にまつわるいろいろ。

きっかけ

2016-10-16 16:39:50 | 日記
ブログ始めました。


気づくと日本語教師になってから25年以上もたっていました。これまでに教えた学生の国籍を
数えてみると60か国以上。我ながらよく続いていると思うけど、この辺でこれまでやってきた
こと、考えたこと、驚いたことなんかをまとめてみようかと思い立ちました。
(「ぶろぐといふものを私もしてみむとてするなり」という気持ちです)

できたら1回ごとに使える例文を載せたい(それが目標)

大学を卒業して流通系の会社で働いていた時には、自分が他人様にものを教えるなんて考えても
みませんでした。でも、今は案外教えることが好きなのかなと思う。あとどれぐらい仕事ができるのか、
わからないけれど、日本語を学ぶ人、日本語教師になりたい人、まだ経験の浅い日本語教師の方のお役に立てたら
うれしいなあと思っています。


私が日本語教師になろうと思ったきっかけ。
海外で仕事をしてみたいという気持ちがあって、すごーく甘い考えで日本語教師ならできるんじゃないかと思ったのかな。
忘れたけど。(これがすごく甘い考えだということは、後から思い知りますので)
「日本語を教える」ということが意識として芽生えたのは、ある少女との出会いがきっかけ
でした。彼女はバリ島のビーチで、物売りをしていた14歳の女の子で、でもガイドになるために夜は日本語のクラスに
通っていると言って、メモをたくさん書いたザラ紙の教科書を見せてくれました。その子に挨拶やひらがなを教えてあげると、
すぐに覚えるのが嬉しくて、バリ島滞在中、毎日ビーチで日本語を教えました。砂浜がホワイトボードの代わりです。
その時に、言葉を教えることによって生まれるコミュニケーションが楽しいって感じたんだと思います。


で、テーマ「きっかけ」
「日本に興味を持ったきっかけは何ですか」とか、「何がきっかけで、日本語の勉強を始めましたか」とかは、
学習者によくする質問ですが、これが案外難しい。
辞書で見てみると、「物事を始めるはずみとなるもの。機会や動機や手がかり」とあります。
うーん、この説明で外国人は理解できるかな~?「機会」「動機」「手がかり」、全部違う
意味だし。舞台での進行上の合図なんて意味もあるけど、それはとりあえず除外。

それで、じゃあ、私たちが一番よく使う「きっかけ」ってどんな使い方だろうって考えます。
「子どもの頃、プラネタリウムに行ったのがきっかけで、宇宙に興味を持ちました」(ある宇宙飛行士)
「姉のレッスンについていったのがきっかけで、バレエを始めました」(有名バレエダンサー)
「彼の勤める歯医者さんに治療に行ったのがきっかけで、彼と付き合い始めました」(私の実際の学生の話)
「クラスで隣の席になったのがきっかけで、彼女と仲良くなりました」とか、そんな使い方。
まず宇宙飛行士とか、ダンサーとか、歯医者さんと結婚しているとかの現在の状況があって
その状況の発端となったことを言います。ただ、それは今の状況になることを初めから目的としたものではなくて、
偶然に近いことがポイントなのかなと。

なので例えば「オーディションを受けたのがきっかけで、ジャニーズに入りました」は??
「原宿でスカウトされたのがきっかけで、ジャニーズに入りました」ならOK。「お見合いがきっかけで結婚しました」もNG。
でも「お二人が知り合ったきっかけは、何だったんですか」「実はお見合いなんですよ」はアリだから、難しいですよね。
(「実は」と言っているのは、相手が予想するきっかけではありませんよ、という気持ちの表れとは思うが)

学習者は単に「動機」という意味で、文を作ってしまうことが多いので、なんだかもやもやした例文になってしまうんですね。

まだまだ難しい「きっかけ」の教え方でした。


私がこのブログを始めたきっかけは、フリーランスになったことです。
バリ島の少女に日本語を教えたのがきっかけで、教える楽しさに目覚めました。